ロケットニュース24

【コラム】すごい昔「幸福の科学」の東京ドーム集会に潜入した時の話

2017年2月13日

dome

何を信じるも人の自由であるが、宗教団体『幸福の科学』への出家を理由に、いきなり芸能界の引退を表明した清水富美加さんが大きな話題となっている。

そんな清水さんは1994年の12月2日生まれの22歳であるが、今回お伝えしたいのは、彼女が生まれた16日後に、当時中学生だった私(羽鳥)が体験した話である。1994年12月18日の日曜日、幸福の科学が東京ドームで開催した超大規模な集会に、幸福の科学の信者でもない私が、実はたった1人で潜入していたのだ。

・突如プラチナチケットが舞い込んできた

1994年の冬のある日。私の母が、困った顔で1枚のハガキを眺めていた。よく見ると、それは幸福の科学の東京ドーム公演のチケット的なモノであった。なんでも価格はウン万円というプラチナチケット。どっから入手したのか母に聞いてみると、

「もらった」

のだという。詳しくは書かないことにするが、とにかく「もらった」のだという。「ぜひ行ってみて!」みたいな感じで知人から「送られてきた」のだという。

しかし、母は幸福の科学への興味はゼロ。特定の宗教もなし。どちらかといえば、純粋に “おもしろ団体” としてのウォッチング対象としてオウム真理教を好んでいた。その子供である私や姉もまた、自然とオウムウォッチャーになっていった

そんなふざけた我々に宗教イベントのチケットを投下してくる「送り主」もどうかと思うが、とにかく母は「行かない」の一点張り。しかし高価な券でもあるし、送り主から「どうだった?」と聞かれた時、行ってなかったら答えに詰まる。よって……

「よし、オレが行く!」

──と中3の私は受験勉強もせずに、ひとりで東京ドームへ行くことを決意したのだ。

・ドームへの道

1994年12月18日は、とてつもなく寒い日だった。いつもプロレスを觀るために歩く水道橋から後楽園ホール(東京ドーム)への道も、普段とは違うように感じる。

「同じ方向に歩く人は、ほとんどみんな幸福の科学の信者なんだな……」と思うと、なんだか興奮した。決してバカにしているわけではない。差別しているわけでもない。アントニオ猪木ひきいる新日本プロレスの信者である私が、ジャイアント馬場ひきいる全日本プロレスの会場に1人で乗り込んでしまった……みたいなドキドキ感だ。

・気がついたら満員御礼

気を落ち着かせて、着席した。グラウンドには豪華なステージが設置されており、プロレスで言うところのリングサイド席がズラーッと見える。私が座っているのは外野席(内野席?)の上の方。階段状になっている、プラスチック製のイスである。

最初こそ空席が目立っていたが、開演が近づくにつれ、続々と席がうまっていった。私の両サイドにも見知らぬ男性が着席し、前にも、後ろにも……と、気がついたら上下左右取り囲まれつつ東京ドーム満員御礼!! ちなみに、みな、礼儀正しく良い人だった。

あとで知ったことだが、この日の集会は東京ドームを本会場として、衛星生放送を使いつつ全国的に同時開催、のべ900万人が参加したらしく、この数字が正しければ、まちがいなく世界最大規模、史上最大の祭典ということになる。正しければ、だが。

・静から動へ

ほどなくして、ゆるやかなミュージカルが始まった。中国における仏法のお話らしく、歌ありダンスあり、中華街でよく見かける「何人かで棒を持ってクネクネする龍」みたいなのも出てきたが、超絶マジメな内容だったので詳しくは覚えていない。

劇が終わると、会場の空気がガラリと変わった。なんというか「期待感」がハンパない。「くるぞ、くるぞ……」的な空気をビンビンと感じるのだ。もしもこの時、長州力の入場テーマ曲『パワーホール』が流れたら会場総立ちの長州コール必至……くらいの期待感。いったい何が始まるのか。私の期待値もレッドゾーンを振り切った。

そしてついに……時は来た!!

会場暗転の後にスモークが焚かれ、神々しすぎる演出で登場したのは……超巨大な龍の頭に乗ったエル・カンターレこと大川隆法氏! 「ウオオオオオーっ!」と、会場のボルテージも最高潮。私の隣のおじさんは感極まって号泣しているではないか!!

その光景を見て、思わず中3の私は「エェーッ!」と声が出てしまった。決してバカにしているわけではない。差別しているわけではないのだが、今で言うところの小林幸子ばりの演出&すっごい衣装を着ている大川氏が登場しただけで、私の隣のオジサンはグジュグジュと鼻水を垂らしながら、全盛期の大仁田厚ばりに号泣しているのだ。

「こ、こいつァ大変なトコに来ちまったゼぇ……」。中3の私は、これから起こるであろう未知なる展開に、おっかなびっくり超ドキドキ。そして大川氏は、開口一番、いきなりキャッチーすぎる話題を口にした。なんでも、

「今の日本には2つの悪魔がいる。1つの悪魔はマスコミであり、もうひとつは……宗教であ〜るッ!!」

みたいな感じだ。悪魔の宗教ってことは……さてはオウム!? オウムくるかっ!? 団体対抗戦くるかーっ!? とオウムウォッチャーの私は正直ワクワクしていたのだが、まず大川氏は「なぜマスコミが悪魔なのか」についてを衝撃的すぎる展開と共に語り始めたのである。一体何がどう衝撃的だったのか? 続きは次ページ(その2)へGO!

Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.

んで、いきなり

いきなりのヘアヌード。まさかの話題、ヘアヌード。世界各国の900万人が固唾を呑んで見守る中、しょっぱなからシモネタをぶっこんでくるとは、マジで大川氏はハンパないな……と、中3ながら素直に思った。話の続きが気になってしょうがないのだ。

それはさておき、大川氏が言いたかったことを、私の言葉で解説しよう。

「まず、いろんな種類の地獄があるけれど、地獄界には「色情地獄」ってものがある。欲望のままに人生をおくったら、色情地獄におちる。マスコミどもは欲望まるだしのヘアヌードを使って、日本を色情地獄化しようと試みている。

羞恥心を失った人間は動物と同じ。そんな人間が死んだら畜生道か、色情地獄に行くことになる。それを止めたい……ッ!! ゆえに雑誌の編集者たちよ、地獄に落ちるのは、あなたひとりで十分だ。他人を道連れにしてはならんっ……!!」

──という感じだ。

この話を聞いた時、ヘアヌード満載のエロ本を買いまくっている私の父親は間違いなく地獄行き決定だな……と思うと同時に、それをコソコソと隠れて読みまくっている私もまた地獄行き間違いないな……と思ったが、ついついエロ本のことばかり考えてしまう血気盛んな中3の私は、ひどく興奮してしまった。もう完全に地獄行きだ。

それはどうでもいいとして、次なる話題は「いじめによる自殺者を英雄視するな」と「脳死による臓器移植はやめろ」であったが、話がマジメだったので割愛。そんなこんなでマスコミ批判が終わると、いよいよ「悪魔の宗教」についての話が始まった。

ここからは漫画でどうぞ。



──てな感じで、その後は「六大煩悩を身に体現しておきながら宗教的指導者を名乗るとは何事であるか。心の底から反省せよ!」と池田大作氏をディスったり、「邪教に加担する政治家は許すまじ!」と小沢一郎氏をディスったりと完全なる無双状態。

ちなみに、一番盛り上がったのは「創価学会を支持した候補者には1票たりとも入れてはならぬ!」みたいなスピーチのとき。この時は、まるでジャンボ鶴田の応援のごとく、「オオーーーーッ!」という掛け声とともに何万本もの拳がつきあがった。

最後に大川氏は、あらためて「邪教ゆるすまじ!」と声高らかに宣言し、仏陀の生まれ変わりである自分に帰依しなさい……と、熱狂のスピーチを締めくくったのであった。

・帰宅して

何を信じるも人の自由であるが、中3の私が想像していた以上に衝撃的すぎた1994年の幸福の科学ドーム公演。家に帰った私は、「どんな感じだった?」と興味津々で聞いてくる母に「すごかった。オウムの話も出てきたよ(笑)」と簡単に説明した。

ちなみにバリバリの思春期がゆえ、恥ずかしくて母に「ヘアヌード」の話はできなかった。なお、大川氏が名指しで邪教と批判したオウム真理教が地下鉄サリン事件を起こしたのは、この日から3カ月と2日後、1995年3月20日のことである。

Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.
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