ノーベル文学賞の受賞が内定して、すっかり時の人となっているボブ・ディラン。内定発表以来、「歌詞を読まないとボブ・ディランを聞く意味がない」とか、やたらと『詩人としてのボブ・ディラン』を語る人の声が増えた気がする。
確かに、今回のノーベル文学賞は歌詞が重要なウェイトを占めていることは間違いないが、個人的には「もっと凄いところがあるのでは?」と思う。そこでボブ・ディランの音楽的な凄さが誰でも1発でわかる動画をご紹介しよう。
・当時最強のシンガーが集合した曲
その動画とは、アフリカの飢餓と貧困層を救うために、マイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが共作で作詞・作曲したチャリティーソング『We Are the World』だ。85年当時、大勢で合唱する歌のレコーディングには、スティーヴィー・ワンダーやレイ・チャールズ、ビリー・ジョエルなど世界でもトップクラスのシンガーが集まった。
・みんなウマすぎて笑う
オールスターという言葉さえ陳腐に感じるほどのアーティストたちが歌い回すソロパートは、まさに豪華絢爛。誰もが伸びやかな歌唱とハイトーンで空気を震わせる。そのビブラートのゆらぎは頭の中に反響し、脳のてっぺんから抜けていくようだ。レベルが高すぎる。実力に差があるのかさえわからない。
……っていうか、聞いているうちに本当に誰が誰かわからなくなる。これ、音を聞いただけで全員当てられる人がいたら相当凄いと思う。みんな凄いがゆえに埋もれてしまっているというか。
・世界トップの実力派たちの中でのボブ・ディラン
そんな中でも、おそらく一発で聞き分けられるのが3分47秒から始まるボブ・ディランのソロ歌唱。のどを締めるしゃがれ切った声と、吐き捨てるような歌いまわしは、癖が凄すぎて飛び道具みたいに飛んでくる。たった13秒間なのに圧倒的な存在感だ。他が天使ならボブ・ディランは悪魔の声という感じ。
ソロ作品を聞き比べて「どちらの歌がウマいのか?」と聞かれたら、おそらく大体の人は他のシンガーを選ぶだろう。もちろん他のシンガーたちの歌のウマさは輝くような素晴らしい才能だ。だが、歌も音楽も自己表現の1つである以上、もっと自由でも良いのではないか。この動画を見る度、私(中澤)はそう思ってしまう。
・歌詞だけじゃない
なお、『We Are the World』のドキュメントを見ると、スティーヴィー・ワンダーがボブ・ディランに歌いまわしを教えるシーンがあるが、その様子にはリスペクトが見て取れる。
ボブ・ディランがミュージシャンとして本当に凄いのは、歌詞単品というより深い歌詞に説得力を持たせることのできる佇まいや表現法だと私は思う。そんな表現を意識しながら聞くと、聞きなれた曲でも少し違った風景が見えてくるかもしれないぞ。