みなさんはうどんを、どんなポイントで評価するだろう? 出汁は関係なく、あくまで素うどんの状態を、だ。なめらかな食感なのか、小麦の風味なのか? きっと多くの人は「コシの強さ」をうどんの美味しさの基準としているに違いない。
讃岐うどんに代表されるバシッとコシのあるうどんは最高にウマく、記者も「コシ命!」と考えていたのだが……。人生初の「伊勢うどん」は、その概念をひっくり返す奥深いうどんであった。
・地元民のオススメ
以前の記事で、日本三大うどんが5種類以上もあるとお伝えした。記者が日本うどん学会に問い合わせたところ、消費量的に伊勢うどんは三大には入ってこないらしい。ただ、伊勢うどんの名前自体は広まりつつあるし、今回の伊勢志摩サミットを機にさらに浸透していくことだろう。
それはさておき、三重県は伊勢市で伊勢うどんのお店を探していたのだが、さすがに地元名物だけあってお店の数もかなり多い。人生初の伊勢うどんだったので中途半端なお店には行きたくないと考えていると、バスの運転手さんに「ちとせに行きなさい」と教えてもらった。
運転手さんいわく「駅からも近いし老舗だからいいと思うよ」とのこと。……地元民の声に勝る情報はない! というわけで、宇治山田駅から程近い『ちとせ』に足を運ぶことにした。なお、蛇足だがすぐ近所には伝説のプロ野球選手「沢村栄治生誕の地」があったことも記述しておこう。
・伊勢うどんの老舗「ちとせ」
到着した『ちとせ』は、老舗の雰囲気ムンムンのたたずまいで、何も知らずに入るのはためらうほどの趣(おもむき)がある。店内でメニューを見てみると、伊勢うどんの他にはカツ丼や中華そばなどの定食も提供しているようだ。
記者はシンプルに伊勢うどんを注文。だが記者が間違えたのか、お店のおばちゃんが聞き間違えたのかわからないが、やってきたのは「冷やし伊勢うどん」。は、はじめての伊勢うどんが……とは思ったものの、隣のテーブルの地元民らしき人も冷やしを食べていたので、そのままいただくことにした。
うどんはかつて見てきたそれよりも明らかに太く、見ようによってはフヤけているようにも見える。トッピングは小口ネギだけで、ツユは1センチ向こうも見えないほどの真っ黒なたまり醤油ベースだ。
・コシはないがダルダルではない
食べてみると、コシがないように見えたうどんはフワフワ食感でありつつも、決してダルダルではない。確かにバシッとしたコシはないが、ソフトな口当たりのうどんもコレはコレで悪くない……というかちゃんとウマい。
真っ黒なツユもまろやかな甘さが際立っており、塩辛さはなかった。なるほど……これが伊勢うどんか。フワフワでモチモチのうどんもアリやな。同じうどんでもこんなに印象が違うとは……これはうどんの概念が変わったで。
結果として伊勢うどんは、これまで「コシ命」と考えてきた記者に新たなうどんの可能性を知らしめてくれた。おみやげ屋さんで購入するほど気に入ったから、機会があればぜひNOコシの伊勢うどんを食べてみよう。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名 ちとせ
住所 三重県伊勢市岩渕1-15-11
時間 昼10:00~14:00 / 夜16:00~18:00
休日 水曜日
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼とりあえずうどんが太い。
▼ツユはたまり醤油ベースで真っ黒。……だが甘くまろやかだ。
▼コレはコレでウマい! 機会があればぜひ食べてほしい。
▼おまけ。「沢村栄治生誕の記念碑」を見て、プロ野球ファン的にグッと来た。