2016年3月19日に実写映画が公開される『ちはやふる』。かるたにかける青春を描いた漫画が原作の本作は、上編の「上の句」、下編の「下の句」という二部構成である。私(中澤)はこの作品のアニメシリーズを見て、かるたと思えないその爽やかでみずみずしい世界観に何度も涙し、人にも薦めまくった。この作品は見ないと損だ。
リアルな高校生の青春がテーマであるこの作品は、きっと実写との相性も良いだろう。そこで今回は、『ちはやふる』を知らない人のためにその見どころや魅力をお伝えたい。これを読めば、映画がより面白くなること間違いなし! ちなみにネタバレはしないので安心してくれ。
・あらすじ
まずは、物語のあらすじをご紹介しよう。小学6年生の綾瀬千早(あやせ ちはや)は、転校生・綿谷新(わたや あらた)との出会いで競技かるたを知る。普段は大人しい新が真剣に札を払う姿に衝撃を受けた千早は、幼なじみの真島太一(ましま たいち)も巻き込んでかるたの魅力に引きこまれていく。
卒業後、別の道を歩むことになった3人。それから4年が経ち、高校生になった千早は、新が競技かるたから離れてしまったことを知るが、続けていれば再会できると信じ、太一と2人でかるた部を設立する。
・ガッチリした原作の力
2008年に第1巻が発刊された本作は瞬く間に話題となり、2009年には史上唯一100ポイント越えでマンガ大賞を受賞。2011年にアニメ化され、今回ついに実写映画化される。現在漫画は30巻まで出ているが、その勢いは衰えるどころかさらに加速している。
・マニアックなジャンルで支持される理由
競技かるたというマニアックな世界の話であるにもかかわらず、これだけ多くの人に支持されるのはなぜか? ハッキリ言うとこの作品は、かるたを全く知らなくても楽しめる。私はその秘密は “共感” ではないかと思う。個性豊かな面々は、ことあるごとに壁にぶつかり、時に補い合い、時に悔しさを1人で噛みしめながら物語は進んでいく。
見た目はイケメンだが、根は真面目な太一が抱えるコンプレックス──それは何かに真剣に取り組んでいる人間であれば、感じたことがあるだろう嫉妬に似た感情だ。また、勉強一筋で机にかじりつく様子から「つくえくん」と周囲に呼ばれている駒野勉(こまの つとむ)が吐き出す悔しさは、凡人についてまわる苦悩である。思わず自分に重ね合わせながら見てしまう。
そんな葛藤の中に射し込む光となるのが千早。ポジティブで悩みごとのなさそうな千早がみんなをグイグイ引っ張っていく様子に、見ているこちらも引っ張られる。そして、問題が丸く収まるたびに涙を流してしまうのだ。まるで自分の問題が解決したかのように。
・実写映画にあたっての見どころ
最後に個人的な見どころを書きたい。本映画の見どころは、動きの少ないかるたの一瞬の速さと躍動感をどう表現するかにあると思う。かるたの試合の緊張感と普段とのギャップが作品の魅力の一つでもあるからだ。
もしこれがハッキリ表現されていれば、恋愛要素も内面の葛藤も生きるのではないだろうか。今回映画化されるにあたり、原作者の末次由紀さんは以下のようにコメントしている。
“競技かるた”が表現できているか? という厳しい眼線にも十二分に応えられるものでした!(中略)細胞が振動しているかのような和文様からスタートする『ちはやふる』は、新鮮で鮮烈で青春の眩しさと暗さが詰まっていました。(映画「ちはやふる」HPより引用)
なお、映画『ちはやふる』HPのキャストを見ると、かるた界をけん引する現クイーン・若宮詩暢(わかみや しのぶ)も登場するようなので、詩暢と千早との関係や、太一と千早と新の関係がどう描かれているのかも気になるところだが……続きは劇場で確認しよう!
参照元:映画『ちはやふる』HP、YouTube
執筆:中澤星児