非英語圏ヒップホップ愛好家の間で、突出したシーンを形成していると評価の高いドイツ。エレクトロなバックトラックの上に硬質な滑舌のドイツ語が重なると、とてもスリリングに聴こえるのである。
そんなドイツのヒップホップシーンには、恩師である「Kool Savas」などとビーフ合戦(中傷合戦)を繰り広げて、シーン随一のヒール役として10年以上君臨してきたトルコ系ラッパー「Eko Fresh」がいる。そのEkoは、日本人にとって大変興味深いビデオクリップを発表していた。でも、ちょっと勘違いしているような……。
・1000小節を一挙に歌う曲に、日本の言葉
Ekoの曲「1000 Bars Die Meisterprüfung」は、1000小節を一挙にラップするという作品。この曲に、日本にまつわる言葉をただひたすら列挙していく部分がある。トルコ系ラッパーが抱いている「日本イメージ」が垣間見られてとても興味深い。日本のパートはこの曲の9分6秒からスタートする。さて、出てくる言葉を洗い出してみた。
・「1000 Bars Die Meisterprüfung」に登場する言葉
「タケシ」「ヤマハ」「寿司バー」「香港」「カンフー」「ホンダ」「三菱」「TomTom」「ヒュンダイ」「川崎」「上海」「Nippon」「少林寺」「サムライ」「カラオケ」「Nikon」「マツダ」「シャン・ツン」「鉄拳3」「空手」「ジョン・ウー」「ジャッキー・チェン」「ジェット・リー」「センセイ」「横浜」「カシオ」「ファーウェイ」「アタリ」「スバル」「サイゴン」「ヒロシマ」「富士」「サヨナラ」「芸者」「タマゴッチ」「ミカド」「トヨタ」「日産」「東芝」「東京」(「1000 Bars Die Meisterprüfung」より引用)
・日本に関する言葉じゃない?
ある程度はわかるのだが、部分的にアレ? と思う箇所がある。たとえば「TomTom」だ。これは調べるとオランダ製のカーナビである事が判明した。また「Nippon」と「Mikado」はドイツで売っているお菓子のこと。「シャン・ツン」はゲームのキャラクター。香港や上海、サイゴンに至っては外国の都市である。
カウントしてみたら、出現するキーワード40個の内、実際に日本に関連するものが28個。中国が9個、韓国とオランダ・アメリカ・ベトナムがそれぞれ1ずつだった。
・他国のイメージもあやしい
ちなみにこのビデオクリップは日本の後にアラブ → フランス → トルコ → ドイツへと続く。フランスではこれまた「クロワッサン」とか「オムレツ」など失笑してしまうほどのフランスイメージが連呼されている。トルコになると、流石に祖国だけあって、日本人にはよく分からないドメスティックなものも多いのだった。
Eko Freshには数ある国々の中で日本を取り上げてくれて、「ありがとう」と感謝の言葉を伝えたい。