いよいよ、もう間もなく映画『スター・ウォーズ / フォースの覚醒』が公開される。その瞬間を心待ちにしているファンは多いと思うが、中には「ざっくりとしかスター・ウォーズを知らない」という人もいることだろう。
以前の記事で「ダース・ベイダーだけ悪者扱いはおかしいんじゃないのか?」という質問があったので、今回は大のスター・ウォーズ好きである筆者が、その疑問にお答えしたい。結論からいうと、ダース・ベイダーは決して悪者扱いされているわけではないのだ。
・疑問のまとめ
疑問のポイントをまとめてみるとこうだ。
・正義や悪は、どちらサイドに立つかで変わる
・そもそもダークサイドに堕ちて何が悪いんだ
なるほど、確かに一理ある。だがスター・ウォーズは、いいとか悪いとか、そんな次元の話ではない。順を追って説明しよう。
・勧善懲悪のストーリーではない
これまで公開されたエピソード1~6までは、ダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)の生涯を通して、人間の強さや弱さ、愛や憎しみを描き出した大スペクタクルドラマである。言い方を変えれば「スター・ウォーズ = ダース・ベイダーの一生」なのだ。
1つめの疑問「正義や悪は、どちらサイドに立つかで変わる」だが、まさしくその通りだ。が、正義の心を持つアナキン・スカイウォーカーだった頃は、己の意志で行動していた彼だったが(自由すぎた点も多々あり)、ダークサイドに堕ちダース・ベイダーとなってからの彼は、ほぼ皇帝の操り人形であった。
どちらサイドに立つかで正義や悪は変わるが、全銀河で共存することを選んだ「共和国軍」と、己の欲望だけで全銀河をひれ伏さすことを選んだ「帝国軍」、平和主義と称される現代の思想により近いのはどちらだろうか? 己の意志で行動できる環境と、操り人形、尊いとされるのはどちらだろうか? 現代の価値感でいうならば、前者であることは言うまでもない。
・「ダース・ベイダー = か弱い人間」
2つめの疑問「そもそもダークサイドに堕ちて何が悪いんだ」であるが、アナキンがダークサイドに堕ちた瞬間、多くの人は怒り、悲しみ、そして彼を憐れんだ。「フォースにバランスをもたらす者」と予言されるほどの才能を秘めたアナキンであったが、その一方で、か弱くモロい人間らしい人間であることを、観客は知っていたからである。
だからダース・ベイダーになってからの悪行の数々にも、ファンの多くは怒りと同じくらい悲しみを覚えた。自分もまた、弱い人間であるからだ。つまりダース・ベイダーは単なる悪者ではなく弱い人間と表裏一体であり、ダークサイドに堕ちることが良い悪いの話ではない。ダークサイドに堕ちることは、何よりも悲しいことなのだ。
ちなみにダース・ベイダーはエピソード6の終盤で、正義の心を取り戻し、エピソード1で予言されたように「フォースにバランスをもたらす者」となった。一度堕ちた人間でも正しい道に戻れることを、ダース・ベイダーは、アナキン・スカイウォーカーは証明したのだ。
間もなく公開される『フォースの覚醒』も、ダース・ベイダーの生き様が色濃く反映されたストーリーになっているらしいから、勧善懲悪ではなく、人間の強さと弱さを描いた作品として観賞して欲しい。決してドンパチ派手なだけのSF映画ではないのだ。
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.