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アラフォー世代なら良く知っているはずだ。その昔、バンドブームがあったということを。私(佐藤)が高校生の頃、今から20数年前はTBS系で放送されていた『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』が一世を風靡しており、いわゆる「イカ天世代」のバンドが続々とデビューしていたのである。

・20歳の時に作った曲を公開

当時ギターやベースを購入して、必死に練習していた人はかなりいると思う。その楽器はまだ手元にあるだろうか? そして、その時録音したテープやCDは、すでに処分したのだろうか? 私は最近20歳頃に制作した楽曲を発見した。YouTubeにアップして、20年の長き眠りから覚ましてみたいと思う。

・バンドはモテた

あの頃に、楽器を始めた人は相当数いたと思う。まさにブームと呼ぶにふさわしく、田舎のバンドも超人気モノとなり、「バンドを組んでいる = モテる」という驚異の公式が平気で成り立っていた。はっきり言って、演奏の上手い下手は関係なかったと記憶している。

・2~3年で飽きる

ブームとは言っても、アツかった期間はせいぜい2~3年で、大ブレイクしたバンドさえシーンから消え去り、楽器を手にしていたキッズたちはその楽器を傍らに置く。気がづけば、肌身離さなかった楽器は押入れの奥に追いやられる始末。さらにはハードオフに売り払うというのが順当な流れではないだろうか。

・解体業に従事していた頃

私も楽器を売ったり買ったりを繰り返しながら、今も一応ギターとベースを所有している。しかしこの数年弾いていない。もうFコードを押さえるのも難しくなってしまっている。そんな私が20歳の時に作ったうちの1曲が『セメント工場』である。この曲は当時働いていた解体業者で、本当にセメント工場の施設の一部を解体した経験に基づいた内容だ。

・セメントまみれ

工場のコンベアのひとつを解体するという仕事だったのだが、これがかなりキツかった。来る日も来る日もセメントまみれになりながら、施設の解体を行う。防塵マスクをしているとはいえ、埃っぽさはハンパではない。髪の毛はセメントまみれになると、バキバキになってしまって「パサつく」という表現では生ぬるいほど酷い状態だった。

・TASCAMのMTR

ちなみに曲の方は、当時主流だったTASCAM社のマルチトラックレコーダーで録音している。4チャンネル録音し、ピンポン録音で無理やり8チャンネルにする、あのタイプだ。アナログすぎて音の劣化が尋常ではなかった。きっと今の若い世代には、何を言っているのかわからないと思う……。昔は曲を作るのも大変だったのだよ。

そんな訳で、私の曲を世に送り出すと共に、弔いたいと思う。思い出よ、サヨウナラ……。

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼佐藤が20歳の頃に作った曲「セメント工場」