『爪切り』は毎日使うものではない。だから普段は引き出しなど、“所定の場所” に保管されているものだ。そこに入っている他のものを使うために引き出しを開けたときには、確かにそこにあった。引き出しを開けると、いつもヤツはそこに居た。
なのに……! 「あ、爪が伸びてきたな。よし、切ろう。」というタイミングで引き出しを開けると、どういうわけか、ない! ない! どこにもない! 必要ないときにはいつもそこにあった、アイツが居ない……。必要なときに限って居ない。あれは一体なんなのか。
・必要な時は限られているアイツ
日常、『爪切り』は爪を切る以外にも使う事はあるが、だからといって毎日使う人はそういない。なので大抵は、各家庭の引き出しの中などの “所定の場所” に控えている。そこにはもちろん爪切り以外のものも収納されているので、爪切りに用はなくとも引き出しを開ければ視界に入る。
・不要な時こそ視界に入るアイツ
爪切りではないものを使う際には毎回と言っていいほど視界に入ってくる爪切り。頭の中では「爪切りは、あそこの引き出しにある。体温計とかと一緒にある。」と、もはや脳に刻まれている。そして、ついに爪切りが必要な時が来た……!
・いざ、というときにないアイツ
ついにキミの出番だ。さあ、爪切りカモン! そんな状況下で引き出しをオープン。するとどうしたことか……。爪切りがない。一緒に入れておいた体温計はあるのに、爪切りはない。爪切り、まさかの不在である。
なぜだ。要らない時こそあんなに視界に飛び込んできたくせに、なぜなのか……⁉︎ 自分からガンガンに「ここにいるよ」アピールをしていたくせに、なぜオマエは今ここにいないのか!
・どこをどう探しても出てこないアイツ
『Now or Never. 』──やるなら今しかない。「爪を切りたい」そう思った時にそれができないのは非常にストレスだ。もっと早くに切っておけばよかった。アイツが視界に入っているうちに手を伸ばせばよかった……!
そんな、言いようのない後悔に苛(さいな)まれる。一体アイツはどこに行ったのか……。半ばパニック状態で引き出しを漁る、ひっくり返す。しかし、アイツはどこにも見当たらない……。
・「おまえじゃなきゃダメ」なアイツ
ちなみに、爪切りは各家庭に2〜3個あったりする。しかし、それぞれに切れ味が違ったり、何かしら使い勝手が異なるので、「コレ!」というお気に入りのマイ爪切りでないと、事後の満足感が激減してしまう。
仕方なく代用品で済ませた後の爪の違和感たるや、ハンパない。なんとも言い難い残尿感のようなものを感じるのだ。それを避けるためにも、草の根分けてでも探し出したい……! おまえじゃなきゃ、ダメなんや……‼︎
・どうでもいい時にでてくるアイツ
しかし、結局見つからない。というか、なぜなくなるのかがそもそもわからない……。仕方がないので残尿感覚悟でその場にある爪切りで妥協する。そして、そんな騒動など記憶の片隅に消えかけたある日……全然関係ないタイミングで、まったく予想だにしなかった場所からコロリん。と姿を現わすのだ。
・おそらく次は体温計
なぜ、そこにあるのか。なぜ、今このタイミングでみつかったのか。全ては闇の中だ。ただ、せっかく見つかったこの爪切りを、もう二度となくさぬよう努める限り……。そうすると、次は「体温計が必要なときに爪切りしかない」という状況が訪れる。そういうものだ。
──これはきっと、妖怪のせいかもしれない。そうかもしれない。
執筆:DEBUNEKO
Photo:RocketNews24.