日本のポップカルチャーの発信地として、世界的に有名な場所、東京・原宿。若者が多すぎて、普段私(佐藤)のようなオッサンは近づくこともあまりない。その場にいるだけで浮きまくってしまうからだ。商業地というよりも、観光地のような色合いが強いこの街で、外国人観光客が喜びそうなモノを発見した。
おそらく日本人は恥ずかしくて使わないだろうが、外国人観光客の土産物としては、大喜びされるに違いないだろう代物である。それは、寿司の画像をあしらった折りたたみ傘、名付けて「寿司傘」である。軽量で持ち運びに便利なのだが、ちょっと使えない……。
・7つの寿司ネタ
傘にあしらわれているのは、本マグロ・うなぎ・サーモン・にぎり玉子・あじ・えび・いくらである。そしてデカデカと「いただきます」の文字。どう見ても外国人向けなのに、アルファベット表記がないところにメーカーのこだわりを感じる。
・お土産として渡すシーンを想像してしまう
さらに良く良く見てみると、「いただきます」の文字の横にソッとガリが添えてあるところがかなり心憎い。これぞ日本のわびさび。お心入れというヤツだろうか。このガリを見て粋と感じることができる外国人がいるとしたら、相当な日本通である。どういった人がこの傘を買っていくのだろうか? 私はこれがお土産として自国に持ち帰られたシーンを、想像してみる。
・寿司傘をめぐる物語(妄想)
寿司傘を買ったのは、海外を飛び回るやり手のビジネスマンだ。仕事が忙しい彼は、適齢期を迎えながら結婚していない。今はまだ仕事に没頭していたい時期なのである。
その彼が帰国して唯一の楽しみにしているのが、甥っ子に会うことである。3歳年上の姉の子ども(5歳)に会うことで、慌しい毎日からほんの少し解放され、同時に癒されてもいるのだ。
今回の日本出張で見つけた、極上のお土産が寿司傘だった。寿司傘をカバンに忍ばせて、姉宅に行くと、甥っ子は彼との再会を喜び、大興奮で足元にしがみつく。彼は内心思っていた、「俺もそろそろ考えないとな……」、そしてやや自嘲気味な笑いを口元に作ったのである。姉はその姿を見逃さなかったが何も言わなかった。
一通り抱擁が終わると、ダイニングのソファにかけて、甥っ子を膝の上に抱き、カバンに忍ばせたお土産を取り出そうとしたのである。その瞬間に甥っ子はお土産がもらえることを確信して、満面の笑みを浮かべた。しかしここでいつもの確認事項。彼は甥っ子に言う。
「パパママの言うことをちゃんと聞いていたかい? 遊びから帰ったら、きちんと手洗いとうがいをしているかい? ご飯を残さずに食べているかい?」
お決まりの内容だったが、甥っ子は一つひとつの質問に律儀に大きく頷いてみせた。その一通りの儀式のようなものを終えると、彼は十分に満足し、とっておきのお土産を甥っ子に披露するのであった。
「寿司傘だよ!」
甥っ子は大興奮である。「寿司」と聞いただけで、歓声を上げるくらいには、甥っ子の教育はできていた。傘に大きく描かれた寿司ネタを一つひとつ確かめるように指さして、嬉々としている。今回のお土産のチョイスも大成功だった、彼は内心そうつぶやきながら、ホッと胸をなでおろし、また甥っ子の笑顔に癒されるのであった……。
・ガリに気付くか
というドラマが、起きているのか起きていないのか知らないが、土産物としては高く評価されているに違いないだろう。私はこの傘を見ながら、ガリに気付く外国人がどれだけいるのか、気になって仕方がないのである。
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼軽量でコンパクトな寿司傘、1200円
▼これをさして歩くのはちょっと恥ずかしいけど、外国人観光客には大ウケしそう
▼「いただきます」の文字のすぐそばには……
▼ガリ
▼Yoshio氏も大絶賛