人生における最も盛大なパーティーの一つ、それが結婚式である。新たなスタートを切る2人の門出を直接見守れればいいが、どうしても参列できないこともあるだろう。そんなとき重宝するのが「電報」だ。
電話じゃ残らないし、メールでは味気ない。電報を利用することで記憶はともかく確実に記録には残り、しかも一種の “格式” が備わる優れものである。だがしかし……。もはや定番となっている「ぬいぐるみ付き電報」ほど、もらって困るものはないと思うのだ。
・「ぬいぐるみ付き電報」を3ついただいた
私(筆者)が結婚式をしたのは4年ほど前。多くの方にご列席いただいたが、諸事情でどうしても参列いただけない方もいた。その方たちから、ありがたいことに妻宛ての分も合わせ、6つほどの電報をいただいたのだが……。その中の3つまでが「ぬいぐるみつき電報」だったのだ。
結婚式を終え、衣装だなんだと大量の荷物をかかえ家に帰る。気が付くとびっくりするくらい家に物が増えていた。やがて落ち着きそれらを整理する際……「ぬいぐるみ付き電報」の処遇には本当に困った。電報とぬいぐるみは分離できるので、正確にいえば「ぬいぐるみの処遇」である。
断っておくが、私はぬいぐるみを好きでも嫌いでもない。妻も同じである。ぬいぐるみ好きの人は当然嬉しいだろう。なのでこの話は、あくまでぬいぐるみが好きでも嫌いでもない人間の意見として聞いていただきたい。
・しばらくは置いておくしかない
まず、第一段階では「飾る」という選択肢以外はない。わざわざ送っていただいたものだ、どこかに置かなければ失礼である。結局、『ミッキーとミニー』『キティちゃんとダニエルくん』『ミッフィーのカップル』の合計6体がテレビ台の片隅に居場所を見つけた。
第二段階は大掃除のシーズンである。普段の生活をしている中で、6体のぬいぐるみは決して邪魔ではない。邪魔ではないのだが……。家に帰り灯りをつけると、なぜかテレビ台から落ちていたり、部屋の掃除をするとき、ちょっとだけ邪魔だったりするのだ。ほんのちょっとではあるが。
それでも1回目の大掃除で捨てることはなかった。というか、捨てられなかった。そもそも、ぬいぐるみや人形の捨てづらさは一種独特なものがある。しかも、知人が私たち2人のために送ってくれた『ギフト』である。それをサッと処分できるほど、私のハートは強くない。
・捨てるに捨てられない
やがてきた3回目の大掃除のとき……。結論から言うと、6体のぬいぐるみとはこのときお別れした。3年間で部屋に物も増え、テレビ台の片隅といえども無駄にはできない。仕方ないのだが、徐々にホコリにまみれていく6体のぬいぐるみたち。「新婚の夫婦を見守る」という役目は果たしただろう、というジャッジだった。
「ぬいぐるみ付き電報」を送る側の気持ちもわかる。私も電報を送る機会が何度かあったが、紙だけの電報では味気ない気もするし、結婚式に花を添えたい気持ちもある。いやらしい話をすれば、価格的にもぬいぐるみ付き電報の方がハクが付く気もするのだ。
それでもあえて言おう、「電報はシンプルなもので十分である!」と。「2人を思うならぬいぐるみは不要である!」と……。“ぬいぐるみの性質・記念日という事実・わざわざ2人のためにという思い” この3つが重なった「ぬいぐるみ付き電報」は『捨てるに捨てられないもの』の代表、かわいい顔した究極の困らせ屋さんだと思うのだ。
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.