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【コラム】食品偽装表示問題はなくならない! 今に始まったことではなくこれからもずっと続いて行くものだから

2013年11月2日

阪急阪神第一ホテルグループで食品の偽装表示問題が発覚したことをきっかけに、全国のホテルで同様の問題が続々と判明している。冷凍保存した魚を「鮮魚」としていたり、トビウオの卵を「マスの卵」と表示するなど、偽装(誤表記と弁明している)されたメニューの範囲は多岐にわたっている。

現場ではわからなかったのか? という意見もあるようなのだが、現場では良し悪しの判断をしようがない。また残念なことだが、このようなケースはどこにでもあるし、この先もなくならないだろう。そのことについても、ムール貝の例を挙げて伝えていきたいと思う。

・キッチンは決められたことをするだけ

ホテルのキッチンはメニューや材料について把握していても、それを決めることはない。総料理長を中心とした企画部がシーズンごとのメニューを決定している。そして仕入れに関しても、会社の決定にしたがっている。だから現場は言われたことをやるだけである。それが鮮魚であろうと、冷凍の魚であろうと、決まったルセット(レシピ)の通りに調理を行うだけだ。

・サービスも決められたことを言う

キッチンだけでなく、表でサービスを行う人間も偽装表示に関しては承知していたはずだ。なぜならテーブルまで料理を運んで、「こちらが○○産の鮮魚のムニエルです」などと気取ったことを言うのだから、メニューはすべて把握している。だが、それもまた決められた説明内容を言うにすぎない。ときにはリップサービスで気の利いたことまで言ってしまうこともある。

・間違ったことを教わったか、あえて違う呼び方をする

今回の問題について、阪急阪神ホテルズは「誤表記」と釈明しているのだが、それは絶対にありえないことだ。なぜなら、先にも述べたようにメニューを決めるのは総料理長を中心とした企画部の面々である。総料理長はこの道何十年のベテランであり、食材を見分けるプロである。もしも食材を勘違いして誤表記したというのであれば、そのレストランはこの先も味に保証がもてないということになる。

何千食、何万食と作ってきた料理人が、もしも食材を間違ったとするなら、それは間違ったことを教わったか、それともあえて違う呼び方(たとえば冷凍魚でも鮮魚という)をしているかしかない。実際、阪急阪神ホテルズの調理担当者は「小さいエビ」を「芝エビ」と呼ぶと認識していたそうだ。使用していたのはバナメイエビだった。

・ムール貝とパーナ貝

残念だが、これらの偽装表記はなくならない。なぜならそれが慣習であり、今に始まったことではないからだ。記者(私)も飲食業に従事した経験があるのだが、勤めたお店では、「ムール貝」と称して「パーナ貝」を提供していた。この呼び方はそのお店だけのものではなく、他の店でもそう呼ぶと聞いている。この二種は近い貝類ではあるが、同じものではないのだ。

また「地鶏」や「ハーブ鶏」と称して普通の鶏肉を出していたこともザラだ。とくにそのお店は小さかったので、原材料費を抑えながらより魅力的な料理を提供する必要があった。このような例はどこのお店でも存在するはずである。正直に商売をしていたら、原材料費がかさむか、魅力的なメニューのないレストランになってしまう。

・そもそも卸業者から

先の貝の話は、偽装を説明するうえで非常にわかりやすい例だ。卸業者では、パーナ貝を最初からムール貝として扱っていることもある。すると、ここの商品を扱うお店は全部がムール貝を偽装していることになってしまう。またここの商品に接した若い料理人は、後々もパーナ貝のことをムール貝と呼ぶことになるだろう。このような例もあるから、偽装はなくならないのである。

余談だが、その当時使用していたパーナ貝は、貝殻の部分を爪でひっかくと薄皮のようなものがはがれた。これは貝殻のうえから薄い殻が貼ってあり、簡単にははがれないようになっていた。そしてそれをムール貝として販売していたのである。

・ごまかしはいくらでもできる

記者は何も偽装を見過ごしたり、弁護するつもりはさらさらない。それよりもむしろ、飲食店やホテル厨房の事情についてお伝えしたかった。本当に残念なことだが、飲食では規模が大きくなればなるほど、ごまかしはいくらでもきくようになってしまう。多少のごまかしがつもり積もって、今回のような問題に発展したに違いないだろう。

そんな状況で、正直に商売をしているお店には頭が下がる。原価をかけて時間と手間を惜しまず、なおかつ良心的価格で料理を提供する。そんなレストランこそ、長らく続いてもらいたいものだ。だからこそ、偽装表示をただ非難するのではなく、正直なお店を応援したい。

執筆:ちょい津田さん(佐藤)

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