2013年2月10日は旧暦の1月1日。アジア圏では今でもこの旧正月の祝う地域が多い。中国では爆竹や花火で盛大に祝うのだが、ある地域では花火の代わりに液体鉄をぶっ放すパフォーマンスが行われるという。液体鉄の温度は1600度。危険極まりないショーだが、あまりにも美しいため、多くの人に愛されているそうだ。
中国・河北省で行われる液体鉄を放つ花火は「打樹花」と呼ばれている。職人は1600度の液体鉄を勺ですくい、板にのせて壁に向かって放つ。すると液体鉄が壁にぶつかり、花や木の葉のようにキラキラと輝きながら舞い散るのである。
美しいのは確かではある。しかし、なぜこんな危険なことをわざわざ行うのだろうか。
昔、花火は高級品で、金持ちだけに許される楽しみだった。しかし庶民だって年に一度くらい美しい花火でお祝いをしたいものだ。そんなとき村の鉄工職人が鉄の火花を見てふと思ったそうだ「これで花火はできないか」と。そして液体鉄を建物の壁に向かって撒いたところ、飛び散った液体鉄は見事に美しい花を咲かせた。
これを見た村人たちは「金持ちの花火に負けないくらい美しい!」と感激。この液体鉄花火を「打樹花」と名付け、その後「金持ちは花火を、庶民は打樹花を」という風習が生まれたのだそうだ。
打樹花の歴史はすでに300年とも600年とも言われ、省の文化遺産に指定されているそうだ。しかし、このパフォーマンスには命の危険が伴う上、高い術も必要だ。現在、この「打樹花」を披露できる職人は4~5名しかいないという。
それにしても「花火をやりたいから液体鉄を撒き散らしてみる」という発想は豪快すぎる。中国文化のいい意味での大雑把さを見るような気分である。