人間は生きている間に、どれだけ美しい景色に出会うことができるのでしょうか。それが自然の造形であれ、人が構築でしたものであれ、ひとつでも多く美しいものを見てみたい、そう思うことが旅心をかきたてるのかもしれません。
2012年6月夏至、今年も世界でも有数の美しいお祭りの日がやってきました。「聖ヨハネ祭」、この日はポーランド西部の都市ポナズンで、無数のスカイランタンが夜空に浮かぶ上がります。私が見てきた言葉を失うような美しい景色について、お伝えしたいと思います。
スカイランタンについて簡単にご説明しましょう。ランタンには願いごとを書きます。きれいに浮かび上がると、その願いは叶うと言われています。したがって、ランタンを飛ばす人たちは、叶えたいと思う願いを携えて会場となるヴァルタ川沿いに集まってきます。
今年は「UEFA EURO 2012」が開催され、さらにギネスブックに挑戦している関係で例年よりも多くの人が現地を訪れていたようです。会場はスカイランタンだけでなく、多くの出店が軒を連ね、音楽の催しも行われていたのです。昨年、8000個のスカイランタンを空に放ったのですが、今年は5万個とも言われていました。正確な数字は定かではないのですが、とにかくギネス挑戦で会場は興奮に満ち溢れていました。
ところが前日からあいにく雨が降りで、開始直前まで少雨が続いていたのです。「もしかしたら、中止になるのでは?」そんな不安もよぎりましたが、いつしか雨は止みました。もしかしたら、会場の人々の願いが通じたのかもしれません。雨が上がると会場のボルテージは最高潮に。着火予定時刻の夜10時15分を待てずに、ランタンに火をともす人もちらほら。
私も待てずに火を着けることにしました。実はランタンに火をつけるのは意外と難しいのです。ランタンを組み立てて火を着けるのに、三人がかりで行わなければなりません。さらに火種に着火するまでに概ね5分程度かかります。連れ立った人たちと協力して、ようやく火がつきました。
すっかり着火に夢中になっていたのですが、ふと気がつくと、辺りが明るくなったように感じられました。空を見上げるとすでに無数のランタンが浮かび上がっているではありませんか。無粋な表現ですが、それは非常に「幻想的」。まるで自分がディズニー映画のワンシーンに登場しているような気さえします。また、ここにいる誰もがそれぞれの願いを携えて、同じ空を見上げていると思うと、胸を締め付けられるような深い感動を覚えました。
私の手を離れたランタンは、ふわりふわりと舞い上がり、暗闇をほんのわずかに照らしながら、その向こうに浮かぶオレンジ色の光に溶けていきました。ランタンに書いた願いがたとえ叶わなくても、今ここにいて、同じ気持ちで空を見上げている人たちと出会い、ともに美しい景色を創造できたことに感謝したい気持ちです。
もしも興味を持たれたのなら、いつかご自身の目で、スカイランタンを直に見て頂きたいと思います。会場の興奮と美しい景色は、おそらくあなたの人生の大切な宝物になることでしょう。
取材、写真:Photographer Koach
執筆:フードクイーン・佐藤
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