ロケットニュース24

知っておきたい、放射線と身体の関係

2011年4月17日

放射線とは、大気や媒体を通して移動するエネルギーのこと。物質として不安定である放射性物質が壊れる(崩壊)時に生まれます。実は人間は、ごく普通に生きている中でも放射線を浴びています。

放射線は、宇宙に、空気中に、地球に、そして岩に存在し、人間を含めたあらゆる物質と反応できるだけのエネルギーを持っています。つまり放射線は、細胞にダメージを与えることができるのです。ここでは、様々なタイプの放射線について、そしてそれらが人間に及ぼす影響を説明します。

【電離放射線:アルファ、ベータ、ガンマ】
電離放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の3種類があり、原子や分子から電子を電離(イオン化)する高いエネルギーを持っています。これらの放射線は全て、細胞レベルで生物にダメージを与えます。

【アルファ線】
アルファ線は、ほんの数センチしか移動できなく、皮膚を通り抜けることはできません。ですが、傷口から入ったり、吸引または摂取してしまった場合には極めて有害で、ベータ線やガンマ線よりも深刻です。体内に入ると直ちに自分の持つ全てのエネルギーを周囲に放出します。

被ばく源
・ラジウム=岩、土、地下水源に存在。

・ラドン=低濃度だがほぼ全ての岩や土に存在。

・ウラン=全ての岩や土に存在。しばしば原子炉や武器に使用される。


身体への影響
・ラジウム=白内障、免疫系の低下、乳ガン、肝臓ガン、貧血、骨ガン

・ラドン=肺ガン、胃ガン

・ウラン=肺ガン、肝臓ガン、骨ガン、肝臓損傷

・共通=放射能中毒、吐き気、頭痛、下痢、死(極端な例)

身を守る
服を着ることによって皮膚を守ることができます。眼や傷口をカバーすることも大切です。

【ベータ線】
ベータ線は、高いエネルギーを持ち、高速で移動する電子または陽電子です。サイズは小さく、アルファ線よりも長い距離を移動できるので、より広範囲の細胞にダメージを与えます。

透過力
ある程度貫通性があります。ただし、貫通する間にエネルギーは失われるので、細胞へのダメージも少なくなります。水なら最大2センチまで、人間なら新しい皮膚細胞を作る基底層まで貫通します。

被ばく源
胎児、そして小さな子供は細胞分裂のスピードが速いため、ベータ放射線による細胞の突然変異(DNAなどが変化すること)を起こしやすくなります。

・ストロンチウム90=環境、食物連鎖上に広く存在。

・ヨウ素131=原子炉での事故によって環境に放出され、食物連鎖に入り込む。半減期は8日で、なくなるまでにそれほど時間はかからない。

身体への影響
・ヨウ素131=甲状腺ガン

・ストロンチウム90=白血病、骨ガン、骨付近の軟部組織のガン

身を守る
服には一定の保護効果があります。高密度の生地であればあるほど効果があります。

【ガンマ線】
電磁放射線です。電離放射線の中では最大のエネルギーを持つので、潜在的な有害性はより大きくなります。

透過力
アルファ線やベータ線よりも透過能力が高く、大気中を何メートルも移動できます。人間の身体の組織を何十センチも貫通でき、全ての臓器に被ばくのリスクがあります。

被ばく源
自然界に存在する放射性核種、主にカリウム40から放たれます。
・カリウム40=土壌、水、肉やその他の食品、ラジウム、人工の放射性核種

医学的用途
放射性画像、CTスキャン、ガンの放射線治療に広く使われる。

身体に及ぼす影響
細胞の遺伝物質を妨害して遺伝子変化を誘発させる、内臓器官の重度の損傷、子世代に生物学的損傷、死

身を守る
鉛エプロン、または数十センチのコンクリートの壁は、ガンマ線の防御壁の役割を果たします。

【放射線源(画像参照)】
ラドン=42%
建物、土壌=18%
宇宙=14%
医療=14%
食料、飲料水=11%
原子力産業=1%

【被ばく量と身体への影響】
被ばく量と発症するまでの時間(無治療の場合)

単位:1Sv=1,000mSv=1,000,000μSv

・吐き気=0.5Sv:数時間
・嘔吐=0.7Sv:数時間
・髪が抜ける=0.75Sv:2〜3週間
・出血=1Sv:2〜3週間
・腸粘膜の破壊=10Sv:2カ月以内
・中枢神経系の損傷=20Sv:1〜2週間
・意識喪失=20Sv:数分内
・死=10Sv:1-2週間、20Sv:数時間から数日

【確率的影響(長期)VS. 確定的影響(急性)】

確率的影響
低レベルの放射線を長い期間に渡って被ばくすると、確率的影響が起こります。確率的影響とは、被ばくによって起こる「可能性」がある身体への影響です。
・ガンの誘発=細胞あるいは分子レベルの損傷、細胞が制御不可能なスピードで増殖、原子や分子の結合を壊す、DNAの変化(突然変異)、被ばく量0.5Sv以上でガンとの関連性がある

確定的影響
チェルノブイルのように、高レベルの放射線を短期間で被ばくすると起きる影響です。
・ガンではない身体への影響(直ちに発症)=火傷、放射線病/放射線中毒、吐き気、衰弱、髪が抜ける、臓器機能低下、早期老化、死

【様々な放射線量の比較】
人間は、自然から様々な放射線を浴びていますが、特に影響はありません。しかし、長い期間で放射線が蓄積されると、ガンのような悪影響をもたらします。

0.01 mSv(=10μSv)の放射線を浴びると、平均寿命が約1.2分減ります。これは、「歩道を3回横断する」「タバコを3口吸う」ことと同等のリスクになります。

・ニューヨーク/ロサンゼルス間を飛行機で往復した際の宇宙線量=0.03mSv

・歯のレントゲン1回=0.04〜0.15mSv

・胸部のレントゲン1回=0.1mSv

・マンモグラム1回=0.7mSv
・1年間の体内のカリウムの自然放射線量=390μSv=0.00039Sv
・1日のバックグラウンド放射線量=10μSv=0.00001Sv
・1年間のバックグラウンド放射線量=約3.65 mSv=0.00365Sv
・治療しても死に至る放射線量=8Sv
・チェルノブイリ原子炉の爆発および溶融の数分後に、原子炉心の隣で10分間過ごした際の放射線量=50Sv
・福島原発から半径10km以内にいた場合の1時間あたりの放射線量=約110μSv

放射線から自分の身を守るには、まず相手の正体を理解することが大切です。もし何かが起きた時にはこのデータをぜひ参考にして、落ち着いた行動を心掛けましょう。

(記者:Kanako Otomo)

参照元:gizmocrazed.com(英文)

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