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【闇の大人たち】第12回:マレーシアのアキバ 瀕死のインビプラザ

2011年1月21日

クアラルンプール(KL)中心部を貫くKLモノレール・インビ駅周辺は、「マレーシアの秋葉原」と呼ばれる最重要な一帯である。そのインビ駅前にそびえる、くすんだクリーム色の古びたビルこそ、この国の元祖・電脳ビル。その名も「インビプラザ」なのであった!

90年代半ば。「海賊版ゲームがすごい」という噂だけをたよりに、土地勘のないKLをさまよい歩き、散々苦労してこのビルを探し当てた若き日の懐かしい思い出。あれから17年後の今、再開発で周りの風景が一変するなか、インビプラザは当時と変わらない姿で生き残っていた……が、内部は病巣に犯され、想像以上に深刻な状態だった――

建物に足を踏み入れ、まず目に入ったのはPCとまるで関係ない切手ショップ……。胸騒ぎを抑えながら、閑散とした迷路のような通路を突き進む。もちろん、PC関係のショップもあるにはあるが、とにかく空き店舗が多い。半数近くの店がシャッターを閉じ、山奥の冴えない商店街さながらの殺伐とした雰囲気が漂っている。

かつては主要テナントだったコピーゲーム屋は、今や影も形も見当たらない。かといって、摘発を受けたばかりでもないらしい。

2階の隅にはインド系の中古PCショップが集中。何かに例えるなら、リトル・インディア化しつつある秋葉原駅ガード下の魔境・ニュー秋葉原センター風と言えば、わかる人にはわかって頂けるかもしれない。

ほんの少し目が合おうものなら、通路の両側からそれぞれの店の店主たちが一斉に「ラップトップPC? デスクトップPC? ウニョニョニョニョ……」と、機械のように話しかけてきて非常に暑苦しい。

めぼしいものは何も見つからず、しいて挙げるなら、ガードマン詰所横のデッドスペースに打ち捨てられていたボロボロの棚、その棚にベタベタ貼られたコピー屋の遺品とおぼしき「PC SOFTWARE」、「MAC SOFTWARE」とプリントされたしわくちゃの紙。このビルで印象的だったものといえば、それくらいか?

過去の繁栄がうそのように、黄昏時を迎えたインビプラザ。地元民の話によれば、まともなショップは軒並み、裏手にできた巨大電脳ビル「スンガイワン・プラザ」「ローヤット・プラザ」に集中しているという。なんだ、最初からそっち行きゃよかった……。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼ビル内はシャッター商店街と化していた

▼営業中の店もどこか辛気臭い

▼違法ピーコソフト店の残骸

▼国敗れて山河あり、そんな言葉が頭をよぎった

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