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【笑いのひとコマ】第3回:狩野英孝「芸術映画のワンシーンみたいな映画だっ……のやつだったんですよ」

2010年11月25日

11月17日放送の『はねるのトびら』では、「エピソードNo.1グランプリ」という企画が行われていた。これは、ケンドーコバヤシ、小籔千豊など、フリートークで笑いを取ることを得意としている芸人たちが、しゃべりが苦手な芸人に手持ちのエピソードを教え込んで、彼らのトーク下手を克服させようとする、というもの。北陽の伊藤さおり、サバンナの八木真澄など、しゃべりのつたない芸人たちが次々に客前でフリートークを披露。失敗に次ぐ失敗の連続で、華々しく玉砕していった。

だが、そんな中でも1人だけ、格の違いを見せつけた芸人がいた。それが、狩野英孝だ。狩野は、ケンドーコバヤシに教わった「老人ホームに慰問営業」というエピソードをしゃべり始めた。練習の甲斐もあり、落ち着いた調子で話は進んで、最後の最後、オチの一言を発する瞬間に、奇跡が起こった。

「まさにまるでなんか、フランス芸術映画のワンシーンみたいな映画だっ……あのー、やつだったんですよ」

オチの台詞を派手に噛んでしまうという痛恨の大失態。彼の様子を別室で見守っていた芸人たちからは爆笑が起こり、トーク指導にあたったケンドーコバヤシは思わず床に崩れ落ちた。

芸人の待機スペースに戻ってきた狩野は、なぜか小走りでさっそうと登場。「なんであそこで噛んだのかわからない」と、他人事のように不思議そうな表情を浮かべていた。

プレッシャーがかかる状況で常に爆笑を取れるのは、本当に実力がある芸人か、笑いの神に愛された豪運の持ち主しかいない。狩野は、実弾飛び交うバラエティの戦場を丸腰で突き進む、恐るべき強運と鈍感力に恵まれた「奇跡の芸人」だ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田

イラスト:マミヤ狂四郎

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