日本のアニメーション作家・映画監督として活躍する宮崎駿さんが、大人気のタブレットパソコン『iPad』を非常に厳しい言葉で批判している。監督は自身の仕事において、「鉛筆と紙だけあればいい」と考えているようだ。その上で『iPad』について、「感心も感動もない。嫌悪感ならある」と酷評を浴びせている。
宮崎監督の『iPad』批判は、自身が所属するアニメーション制作会社『スタジオジブリ』が発行している小冊子、『熱風』に掲載されたもの。『熱風』の7月号には『iPad』の特集が組まれている。そのなかで監督はインタビューに応えて批判を繰り返しているのだ。
『iPad』片手に監督の話を聞くインタビュアーに監督は、「そのゲーム機のようなものと、妙な手つきでさすっている仕草は気色わるいだけで、ぼくには何の感心も感動もありません。嫌悪感ならあります」とバッサリ。これに対してインタビュアーは、インターネットに接続して資料を探したり、欲しい文献をすぐに取り寄せることができると切り返した。
すると、さらに追い討ちをかけるように、「あなたの人権を無視するようですが、あなたには調べられません(中略)。世界に対して、自分で出かけていって想像力を注ぎ込むことをしないで、上前だけをはねる道具としてiナントカを握りしめ、さすっているだけだからです」と、『iPad』とともにユーザーを全否定するような発言をしている。
また、「一刻も早くiナントカを手に入れて、全能感(ぜんのうかん)を手に入れたがっている人は、おそらく沢山いるでしょう」と、購入の動機にまで発言が及んでいる。
監督の過激な否定発言に対してインターネット上では、「バカにしないでくれる!? 知っているわよ。そのくらい!!」や「別にiPadを自慢げに人前で持つことを気持ち悪いというのは良いが、ここまでくると言い過ぎじゃないだろうか」、「こういうこと言う人がいないとだめよね。老人はこれでいい」、「中学校のときの授業中に、シャーペン使うな鉛筆使えって怒鳴ってた教師を思い出した。書けりゃどっちでも良いじゃん、と思いながら渋々鉛筆使ってた」……など、様々な意見が飛びかっている。
『iPad』を購入する人すべてが、『全能感』を味わうためだけに購入しているわけではないものの、「目的もなく新しいものを購入するな」という指摘も十分うなづける。ちなみに今年5月にアメリカのオバマ大統領も、ハンプトン大学の卒業式のスピーチでデジタル機器について否定的な発言をして話題となった。「iPodやiPadをはじめとするデジタル機器のせいで、人は考えなくなった」として、デジタル機器がもてはやされることを、歓迎していない様子である。
監督や大統領が指摘にするように、新しい機器を購入するときには目的や用途について今一度考えた方がよいだろう。しかし「購入者は皆一緒」という考えはいかがなものか?