『無名の偉人』とは、人ぞれぞれの経験や体験を聴くインタビューです。世の中、名のある人間ばかりが功績を残しているのではなく、誰もがそれぞれの誇りを持って生きている。その人知れず紡がれたささやかな物語を紐解く。それが、インタビュー『無名の偉人』です。
氏家福太郎氏は日本ミドル級4位のプロボクサー。去る6月20日の後楽園ホールで、タイのゴンゲール・シットサイトーン選手に5ラウンドTKO勝ちし、10月23日に同階級8位の古川明裕選手との試合を控えています。試合に臨む氏家選手の意気込みと、これからの展望についてインタビューしました。
1、現在の活動と、その活動を始められた経緯を教えて下さい。
ボクシングやっています。現在、ミドル級日本ランキング4位、戦績は21戦13勝(8KO)7敗1分です。ボクシングは高校生の時にダイエットのつもりで始めたのがきっかけです。高校の時に『スラムダンク』って漫画に憧れて、バスケ部に仮入部したんですけど、漫画と全然イメージが違って辞めちゃったんです。そうしたら11kg太って、このままではマズイと思い、タウンページで『ジム』を調べたら、『ボクシングジム』が見つかったんです。それですぐに電話して、その日のうちに入会しました。始めたきっかけは些細なものでしたが、今まで12年間、ボクシングをやめようと思ったことはないです。
2、なぜ、ボクシングを続けているんですか?
続けて来られたのは、2つ理由があります。1つはジムに入会した5日後に、家がジムのすぐ近所に引っ越しをしたんですよ。本当に偶然だったんですけど。うちが引っ越しすることは分かってたんですけど、どこに移るか僕自身ちゃんと把握していなかったんです。それから、ジムに入ったことを家族に話していなくて、引っ越し先に着いた時には本当にびっくりしました。近所に引っ越ししていなかったら、あっさりやめていたかも知れませんね。
もう1つの理由は、トレーナーとの出逢いです。始めた当初は熱心に練習していなかったんですよ。適当だったというか。それが2000年1月に、新しいトレーナーがジムに来て、その人のシャドウボクシング(相手がいることを想定して、鏡の前などで行うフォームチェックの練習)を見て、衝撃を受けました。僕がA級ライセンスを獲った時に、お願いしてそのトレーナーについて頂きました。ついて頂いている間は無敗でしたね。あのシャドウのインパクトが忘れられない。あれになりたくて、ボクシングを続けていますね。ボクサーとしての目標です。
3、ボクシングをやっていて、殴られるのを怖いと感じたことはないですか?
怖いです。怖さがないとボクシングは出来ないし、怖さがないと強くなれない。逆に怖さがあるから、トレーニングするんじゃないですかね。
ボクシングはパンチ力が強ければ勝てるというものではないし、動きが早かったら勝てるというものでもありません。競技内容がシンプルなので駆け引きが重要なんです。濃い駆け引きを試合中にずっとやっているようなものですね。心理戦です。
僕の目指すボクシングは、その濃い駆け引きをどう魅せるか。『魅せるボクシング』をしたいと思っています。ボクシングは派手さがないので、お客さんにもっと魅せられるものにしたいんです。せっかく来て頂いたんだから、楽しんでもらいたい。
4、試合をやって行く上で、大切にしていることはありますか?
そうですね。ボクシングは自分にとって『想い出作り』なんです。だから、記憶だけは飛ばさないようにしています。どんなにボコボコに殴られて担架で運ばれることになっても、記憶だけはなくしたくないですね。『想い出』ってインパクトじゃないですか。自分の時間の中に起きたインパクトのある出来事ですよね。そのインパクト=『想い出』をたくさん作ることが、『生きる』ってことなのかなって思ってます。だから、記憶をなくさないことを一番大切にしています。
試合を観に来てくれたお客さんにも、多くのインパクトを伝えたいですね。自分の試合を通して、「生きるってすごいな」とか「自分はチャレンジしてないな」とか、そういう何かの感情をインパクトとしてお伝えしたいです。
5、これからの夢や目標について教えて下さい
ボクサーとしての現役の期限は決めていません。プロボクサーの現役はライセンスの認められている37歳の誕生日までですけど、いつまで続けるとかは今のところ考えていないです。
将来の夢は大家族を持つことですね。血縁があろうとなかろうと、深い付き合いをしていける仲間と、家族のように過ごして行きたいです。可能ならどこかに土地を買って、街を作りたいと思います。いろいろなものを分かち合える家族と、深いつながりを持って過ごして行けたら素敵だなと思っています。
6.最後に次の試合の意気込みをお願いします
はい。次はボクシングの醍醐味である『倒し合い』を体現出来る一戦になると思います。テーマは『波状』。大きく緩やかに見える流れの中で、細かく激しく打ちつける波。そんなイメージをテーマにして、トレーニングをしています。是非ショーパフォーマンスのボクシングを、来場頂いた皆さんに会場で体感して頂きたいと思います。
気さくな人柄で明るく話す氏家氏。話をしていると、とてもボクサーとは思えないような穏やかな語り口でした。ところがジムへ行くと、闘志に燃えるファイターに豹変し、ジムには氏家氏の掛け声が一番大きく響いていました。10月23日の氏家氏の『魅せるボクシング』に期待しています。
<スケジュール>
10月23日(金) 後楽園ホール 『Raging Battle』 氏家福太郎 × 古川明裕 (6R)
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