『時効』とは犯行発生から一定期間を過ぎると、捜査を打ち切り公訴を断念すること。つまり、事実上、事件の罪が消滅することになる。

平成7年7月、東京都八王子市のスーパー「ナンペイ」に強盗が押し入った。当時アルバイトをしていた女子高生ら3人が射殺され、今年7月30日、犯人は逮捕されないまま、時効成立1年となった。そもそも時効とは何なのか、改めて考えたい。

刑法上の時効とは、確定した刑の執行を消滅させる刑の時効(刑法31条)と、一定期間公訴されなかった場合に以後処罰されなくなる『公訴時効』がある。一般的に刑事事件で使われる時効は後者、『公訴の時効』である。

日本における『時効』の起源は江戸時代。1742年、公事方御定書(くじかたおさだめがき)に、12カ月捕まらないと処罰できないという『旧悪制度』があった。明治になると、1880年に仏・ナポレオン法典を手本とした治罪法が制定され、殺人などの重罪に10年の時効『期満免除』が設けられた。1890年制定された刑事訴訟法でも10年の時効は引き継がれ、1908年の法改正で15年となり、1948年に制定された現在の刑事訴訟法もこれを踏襲している。重罰化された05年の法改正で他の刑罰強化に付随する形で25年に延長された。

※八王子スーパー強盗殺人事件は、法改正前の発生事件により、25年の時効期間を遡及されていない。

では、なぜ『時効』が存在するのか。諸説あるが概ね以下の通り

● 時の経過とともに被害者や遺族、社会の処罰感情が希薄になる

● 時の経過とともに証拠物が散逸し、処分されることで事実認定が困難になる。そのため適正な審理が困難になる可能性があるため

● 長期の捜査で捜査費用が多額となり、結果として納税者の負担になる

● 長期逃亡を一種の社会的制裁とみなす

現在はインターネットの普及により、過去の情報に触れ易くなって、情報の信頼性が維持されるようになって来ている。またDNA鑑定の科学的進歩により、証拠散逸の状態になりにくいと言える。

殺人事件などの重罪において、そもそも時効が存在すること自体、おかしいという意見もある。

遺族の処罰感情は本当に希薄になるのだろうか。逮捕されなくても、『社会的制裁』とみなすことが、果たして良いことなのだろうか。

まさに裁判員裁判も始まったばかり。法の在り方について、国民1人ひとりが意識を向ける時期かも知れない。

時効廃止論  「未解決」事件の被害者家族たち
毎日新聞社会部
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