入学式や卒業式などの式典において、起立をしなかったり君が代を斉唱しない教職員のことを、ごく一部の間では通称「不起立教師」と呼んでいる。そんな不起立教師の今後の状況を左右する、注目すべき裁判が、本日1月16日、最高裁において3件も行われたことをご存知だろうか? 過去に不起立・不斉唱行動をしたことにより、停職や減給、戒告などの処分を受けた教職員たちが、その処分をめぐり起こしていた訴訟である。

結論から言うと、最高裁の出した判決は「戒告処分は裁量範囲内」といったもので、訴訟を起こした171人のうち、戒告処分を受けた168人に関しては請求を棄却。減給処分を受けた1人は、処分取り消しに。しかし、最も注目を集めていたのが、残り2人の不起立教師の裁判結果だ。

ここからは、過去に東京の不起立教師事情を徹底取材、『潜入!!プロ市民集会レポート』というタイトルで6回にわたりルポ漫画を描いたことのある漫画家のマミヤ狂四郎氏に分かりやすく解説してもらおう。

ちなみにマミヤ氏は、この日の裁判を『1.16(イッテンイチロク)最高裁不起立裁判トリプルヘッダー』と心のなかで勝手に名づけ、極寒のなか傍聴券を求めて最高裁前に長時間並んだものの、惜しくも抽選で外れるという不運な目にもあっている。とても寒かったそうだ。それはさておき、残り2人の不起立教師の裁判結果はどういったものだったのだろうか?
 
マミヤ「この2人の不起立教師は、東京の不起立問題をリードしてきた、いわば不起立界の超獣コンビです。うち1人は『不起立界のジャンヌ・ダルク』とも言われているほどの、圧倒的な存在感をほこる不起立界のスーパースター。プロレスに例えるならば、アントニオ猪木的な存在であり、キラー的な存在です。また、もう一人の教師は、これまたプロレスに例えるとジャイアント馬場的な存在。母性を感じる人です」
 
――なんでも2人とも、すでに定年退職している。また、今回の裁判は、このコンビが2006年の卒業式で起こした不起立に対する処分の取り消しを求めて起こしているものであるという。猪木は停職3カ月、馬場は停職1カ月の処分であった。この2006年の不起立処分のことを、不起立業界では「06年事件」と呼んでいるが、特に覚える必要はないという。
 
マミヤ「とにかくこのコンビは、いままで2人で戦ってきました。ドラゴンボールに例えるならば、ベジータとナッパです。猪木がベジータ、馬場がナッパです。ところがどっこい、今回の判決では……ベジータはアウト、ナッパはセーフ……だったのです。分かりやすく言うならば、ナッパも不起立はしたけど、それほどまでではなかった。だけどベジータは過去に行った不起立行動があまりにもガチすぎた、あまりにも強大すぎた……ということだと思います」
 
――なるほど! ということは、ナッパ的な先生が2006年に食らった停職1カ月処分は取り消しになったということですね?
 
マミヤ「そのようです。で、今回、このように、共闘していたタッグの処分が、それぞれ白黒ハッキリと逆の結果になってしまったことに関し、不起立軍団は『分断判決弾劾(ブンダンハンケツダンガイ)』!と怒りをあらわにしています。この判決が出た時、最高裁のまわりにいた人からも「ナメた判決出しやがって!」との声があがっていました」
 
――ほほう。
 
マミヤ「もう少し詳しく解説しますと、不起立行動によって都教委(東京都教育委員会)が下す処分にはレベルがあります。軽い方から「厳重注意(LV.1)」「訓告(LV.2)」「戒告(LV.3)」「減給(LV.4)」「停職(LV.5)」「ボーナス0(LV.6)」、そして「免職(レベルMAX=クビ)」なのですが、今回の判決では、レベル3である「戒告」の処分は撤回できんよ……という判決です。戒告処分は都教委の裁量権の範囲内だよ、ということです」
 
――その一方、レベル4の減給処分は撤回した、と。いきすぎた、と。
 
マミヤ「そんな感じですね。最高裁は、減給や停職の処分は、過去の処分歴などを考慮して慎重に判断する必要がある、と判断しました。その結果、ナッパ的な先生はセーフに。でもベジータ的な先生は、それを考慮しても処分撤回できんぞ、と。彼女は不起立行動だけではなく、卒業式における国旗掲揚の妨害や、ゼッケンを着用しての抗議活動もしたことがあるというのが、処分が重い理由のひとつになっています。破壊しすぎたわけです、卒業式という名の地球を」
 
――カリスマ的な存在感をほこるベジータ的な先生も、そして数年ごしに停職処分が撤回となったナッパ的な先生も、それぞれ数件の裁判を持っており、まだ戦いは終わってはいない。ベジータ的な先生は、裁判後の集会において「まだ裁判は3つある。今後はすべて、勝つ!」と声高らかに宣言していたという。
 
石原都知事ひきいる東京だけでなく、橋下市長ひきいる大阪でもバトルが生じている不起立問題。東京よりも厳しいとされる大阪府の「教育基本条例案」に対し、マミヤ氏は「今回の判決結果によって、さらなる火種が生じるでしょうな」とコメントしている。

写真・情報提供:マミヤ狂四郎

▼極寒のなか、不起立界のカリスマコンビの裁判の傍聴券を求める人は141人。
抽選の結果、48人が当選した。

▼過去にマミヤ氏が描いた漫画から抜粋
(『潜入!!プロ市民集会レポート』第四話:1ページ目より)

▼『潜入!!プロ市民集会レポート』第四話:2ページ目より

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