
ほとんどの人が気づいていないと思うのだが、全国的に店舗を展開する「串カツ田中」は他業種での店舗展開を積極的に行っている。関西を中心に店舗数を拡大する、イタリアンで食べ放題を提供する「PISOLA」も田中の仲間(株式会社ユニシアホールディングス)で、田中に次ぐ第2のブランドとして着々と成長している。
そのほかにもいくつかブランドを展開しているのだが、また新たなブランドを立ち上げた。それが「ザクッと とんかつ カツのジョー」である。東京・東大和市に2026年8月21日にオープンしたとのことで、さっそく行ってみたところ、自ら「揚げることを追求し続けた会社」と称しているだけあって、知恵と工夫の詰まったメニューを提供していることがわかった。
よく考えられたメニューに、思わずうなってしまった。う~む……。
・1店舗だけのブランドの意義
先に述べたように、田中はいくつもブランドを立ち上げているのだが、そのすべてが多店舗展開しているわけではない。たとえば、2025年4月に五反田にオープンした「厚切りとんかつ 厚とん」は1年以上を経た現在も五反田1店舗のまま。
和牛メンチカツの専門店「挽きたて和牛 ザ・メンチ」もまた埼玉・大宮に1店舗しかない(2026年8月31日時点)。すべてのブランドをPISOLAのように拡大する意図はないようだ。
だが、今回カツのジョーを訪ねたことによって、同社にはまた別の戦略があることを垣間見た。たとえ1店舗出店であったとしても、そのノウハウは必ず活かすという意志を感じる。
・ノウハウの蓄積
さて、お店は東大和市の新青梅街道沿いにある。最寄駅は西武鉄道拝島線の東大和市駅か、多摩湖線の武蔵大和駅になる。いずれも駅から徒歩約30分、バスならそれぞれ15分程度の距離。
私は武蔵大和駅から歩いてお店へと向かった。幸いこの日は曇りの予報で、空を見上げながら雨が降らないことを願いつつ、速足で店を目指した。
そうして無事に傘を開くことなくお店に到着~。「ジョー」と見ると、矢吹丈が脳裏に浮かぶのは私(佐藤)だけではないはず……(※『あしたのジョー』の主人公)。
さて、入店してメニューを見ると、ここには2大名物なるものがあるという。ひとつが「厚切りロースカツ定食」。
そしてもうひとつが「和牛ハンバーグカツ定食」。ハンバーグカツ? 要するにメンチカツだよね。
お気づきだろうか? 先に挙げた2店のことを。そう、厚とんとザ・メンチの看板メニューを合体させたのが、このお店なのである。多店舗展開せずに、それぞれのブランドで培ったノウハウを新店舗で活かす。これが、田中のもう1つの戦略ではないかと私は睨んでいる。
・1回でいろいろ楽しめる
ではさっそく注文しよう。厚切りとんかつについては厚とんを訪ねた際に体験済みなので、今回はメンチカツ……、いやハンバーグカツ定食(税込1980円)を頼むことにした。
それで注文時に卓上の美味しい食べ方とやらを確認したのだが、イマイチよくわからないところがある。「鉄板で焼く」とある。揚げ物だよね? 焼くってどういうことだろう。それも自分で焼くっていうことなのか?
提供された品々を見て、その理由がわかった。
膳と一緒に固形燃料で加熱する鉄板が出てきた。なるほど、これで半割にしたカツを焼くということらしい。
カツは2個付けかと思ったら3個だったので、ちょっと得した気分。ちなみにここはご飯とキャベツがおかわりし放題。卓上には漬物があって、これも食べ放題ということになっている。
早速半割にすると、揚げてあるからもちろん中には火が通っている。このまま行きたいところだが、鉄板に肉の面を下にして焼き、肉汁を閉じ込めるとのこと。
そのルールに従って20~30秒、ジューッ! と焼く。
それでまずは卓上の塩や柚子ポン酢、青唐醤(あおとうじゃん)などをつけて食べる。
別途大根おろしもついているのを見て、私は悟った! このやり方は、カンタンにハンバーグの味変ができる! と。
一般的なレストランなら、和風なら和風だけ、イタリアンならイタリアンだけしか味わうことができない。でもここは、半割ごとに調味料で味を変えることができるので、1回のオーダーでいろいろ楽しめる。
惜しむらくは、チーズとトマトソースがないこと。これらが追々味変の仲間入りをしてくれることを願う。
それにしても、なかなか上手なやり方だ。しかし、本領発揮はここから。
別添えの自家製デミグラスソースの出番である。先ほどまでと同じように半割にして鉄板で焼く。今回は紙のカバーを立てて鉄板を覆う。
そしてデミグラスソースを投下! 激しくソースが飛び跳ねるので、必要なら紙エプロンを着用する。
はたして、ソースが衣にしみ込んで、にわかに煮込みハンバーグの様相を呈する。
1つのメニューでここまで楽しませるとは。同じメニューを提供する、ザ・メンチのノウハウが完全に活かされている格好だ。
煮込みハンバーグ仕立てになることの利点は味だけじゃない。提供時に「最後にデミグラスソース」と伝えているのである。つまり、これを食べる段階になると、ある程度ハンバーグカツが冷え始めている。
ただ焼くだけでは焼いた面だけしか温かくならないのだが、ソースを投入することでハンバーグカツ全体が蒸し焼きになって、全体が温まる。
料理そのもののプレゼンテーションも高く、客自身がひと手間を加える楽しさ、それから美味しい温度での提供まで兼ね備えた優れた提供方法だろう。多ブランド展開の積み重ねが、新しい料理の価値を創出している。
なるほど、これは「揚げることを追求し続けた会社」のひとつの到達点と言っていいかもしれない。
カツのジョーはPISOLAのように多店舗展開するのだろうか? できれば、1店舗だけにならないことに期待したい。
・今回訪問した店舗の情報
店名 ザクッと とんかつ カツのジョー
住所 東京都東大和市奈良橋5丁目825-3
時間 11:00~22:00(L.O.21:30)
参考リンク:PRTIMES、株式会社ユニシアホールディングス
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24