
スマホひとつで、誰とでも一瞬でつながれる時代。
タイムリーにやりとりできて便利な一方で、そのスピード感ゆえに、逆に疲れてしまうこともある。
そんなある日、母と話していたときに「若いころ、文通してたよ」という話題になった。
文通……なんて甘美な響きだろう。なんだか急に、私もやってみたくなった。
とはいえ今の時代、個人情報のことを考えると、昔みたいに知らない人と気軽に住所を交換して文通するのは、なかなかハードルが高い。
そこで見つけたのが、「文通村」というサービスだった。
・令和向きの仕組みの村
文通村とは、個人情報を相手に伝えずに、全国の人と安心して手紙のやりとりができるコミュニティ。
手紙はいったん事務所を経由して、相手に届けられる仕組みになっている。
いくら仕組みがよくても、人が少なければ文通は始まらないよな~と思ったが、公式の案内によると、2024年には年間の手紙のやりとり総数が約13万通を超え、会員数も約2800名以上とのこと。
思ったより、かなり村がにぎわっているぞ。
ちなみに、昔はどうだったのかを母に聞いてみたところ、「雑誌の文通コーナーに、普通に住所とか名前とか載ってたよ」とのこと。
えっ、思いきり個人情報出してるじゃん
悪用とかされなかったんだろうか。時代は変わるもんだなぁ~。
・初回3か月トライアルは2310円
料金は、3か月コース・6か月コース・12か月コースがあり、長いコースほどお得。
一番お得なコースだと月825円で利用できるようだ。
ありがたいことにお試しコースも用意されていたので、今回は、初回3か月トライアル(2310円)を選択した。
これで私も、ついに文通村の村人である。
登録すると、自分専用の村内住所が与えられる。
これがまた、なんともかわいい。もちろんリアル住所ではなく、「さくらんぼ通り○○番地」みたいな名称となっているのだ。
もちろん、やりとりに使う名前も本名ではなく、自分で決めた村ネームでOK。この感じ、昔のmixiあたりを思い出して、妙にエモい。
・風船便という神システム
まずは簡単なプロフィールを登録する。
これを見て「この人と文通してみたいな」と思った相手が、手紙を送ってくれることもあるし、自分から送るときの参考にもなる。
しかも文通村には、「風船便」というシステムがある。これは、誰に届くかわからない手紙を送る仕組みで、新規入村者には優先的に届きやすいそうだ。
入村したばかりで、知り合いゼロの状態でも、ちゃんと交流が始まりやすい工夫がされているのはありがたい。
・即レス文化に染まった現代人
ということで、早速文通相手を探すことに。
まずは、年齢や性別、趣味などでキーワード検索し、気になる相手のプロフィールを見ていく。横で見ていた子どもたちも「書いてみたい!」と言い出したので、同じくらいの子どもがいそうな人にも目を向けてみることにした。
文通してみたい相手を見つけたあと、つい無意識に「友達申請」ボタンや「メッセージ送信」ボタンを探してしまう私。
……あ、そうだった。文通だった。
この時点で、すでに自分がいかに即レス文化に染まっているかを思い知らされる。
・何を書こうかな
相手は、普段の生活では関わることのない人たちだ。
そう思うと、リアルでは言えないようなことまで相談できそうな気がしてくる。(とはいえ、世間は意外と狭いので、もしかしたらリアルでつながっている相手という可能性はゼロではない)
結局、最初は簡単な自己紹介に加えて、最近ちょっと気になっていることやゆるい相談、相手への質問などを書いた。
せっかくなので、誰に届くかわからない風船便も書いてみた。書いた手紙は、文通村の事務所宛ての封筒にまとめて入れて送る。
冒頭でもお伝えしたが、そこから事務所が仕分けして、それぞれの相手へ届けてくれる仕組みだ。
・時差がむしろ良い
ちなみに、手紙はいつ送ってもいいのだが、月に2回、事務所到着の締め日と発送日が設定されている。
つまり、入村してすぐに手紙を送ったとしても、そこから相手に届いて、相手が返事を書いて、また事務所を経由して……となるので、返事が届くまでにはそれなりに時間がかかる。
結構タイムラグがあるなと思ったが、実際にやってみると、この待つ時間こそが醍醐味だった。
「そろそろ届くころかな」「今、誰かが私の手紙を読んでいるのかな」そんなふうに考えながら日々を過ごす感覚って、令和ではかなり貴重だ。
そして数日後。ポストをのぞくと……
届いているーーー!
なんだこのうれしさは。懸賞が当たったとか、誕生日プレゼントをもらったとか、そういうのとも少し違う。
誰かが、時間をかけて書いてくれたものが届く。その事実そのものに、胸がきゅっとなる。愛おしすぎて、なぜかすぐには開封できず、結局、その日は一晩、枕元に置いて寝た。
もはや恋文の扱いである
・気になる中身は……
開けてみると、中には風船便が3通入っていた。
まだ入村したばかりなので、私宛てのピンポイントな手紙ではないが、それでもものすごくうれしい。内容としては、簡単な自己紹介や、ちょっとした質問が書かれていることが多かった。
「この人はどんな暮らしをしているんだろう」「どういう気持ちでこの手紙を書いたんだろう」そんなことを想像しながら読む時間が、思いのほか豊かだった。
風船便をくれた方たち+村人検索で気になった人に、返事を書いてポストへ投函した。
入村してしばらくすると、風船便以外の手紙も届くようになった。風船便をきっかけにつながった相手と、そのまま文通が続いていくのも楽しい。
私が共通してよく書いていたのは、「人生の転機になった出来事はありますか?」みたいな質問だった。
すると返ってくるのが、予想以上に濃い。中には、かなりドラマチックな話や、壮絶な転機について書いてくれた人もいた。SNSのように短い言葉で流れていくのではなく、相手の直筆で書かれた言葉が届くことが感慨深い。「手紙って、こういう深さがあるんだな」と、改めて思った。
・子ども同士の手紙交換も発生
私と年齢が近かったり、子どもの年齢が同じだったりする人とのやりとりも楽しかった。せっかくなので、子ども同士でも手紙交換できるように、こちらからの手紙に子どもの手紙を同封してみたりもした。
一応、失礼なことを書いていないか、さらっと確認しようとしたところ、そこにはこう書かれていた。
……はい、気をつけます。
・令和時代の文通、アリです
というわけで、実際にやってみると、文通の楽しさや魅力は想像以上だった。
もちろん、相手との相性もあるし、やりとりはかなりスローペースだ。でも、そのぶん少しずつ誰かとつながっていく感覚や、返事を待つ時間、封筒を開けるときの高揚感、相手の人生の一部に触れる体験が、ものすごく新鮮だった。
お試しコースはまもなく終了しそうなのだが、かなり続ける気満々である。便利すぎる時代だからこそ、ちょっと不便で、ちょっと手間がかかる交流に、妙に心を動かされるのかもしれない。
令和時代に文通、かなりおすすめである。
参考リンク:文通村
執筆:夏野ふとん
Photo:RocketNews24.
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▼手紙が届いたときのうれしさは格別