突然だが皆さんは岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』を観たことがあるだろうか。架空の近未来都市「円都(イェンタウン)」を舞台に移民を描いた作品で、日本語、中国語、英語ごちゃまぜの言語を使う登場人物はじめ、独自の世界観がある日本映画である。

1996年の作品なので2026年で30周年を迎えるようだ。感慨深い。初めて観た高校生の頃からあのどこか虚無的な雰囲気が突き刺さっている私(中澤)。先日、池袋西口北側を歩いていたところ、あるビルにそんなスワロウテイルみを感じた

・チャイナタウン裏路地の謎のビル

それは池袋西口北側の線路近くを歩いていた時のこと。この辺り一帯がチャイナタウン化していることはもはや知られた話だと思うが、ドン・キホーテ池袋駅西口店の裏手に差し掛かった時、中でも異彩を放つビルに出くわした。そのビルの名は……

日精ビル。まず、私が二度見した理由はビル自体のジャンルの不明さである。立ち止まってよく見ると、2階は階自体が水色に染められた上で金の看板に中国語とアラビア語が書かれていた。その多国籍感が影響を及ぼして、ビル自体が何のビルなのか分からないオーラを発している

スワロウテイルに心象風景が浸食されている私は、この「チャイナタウン裏路地にあるなんかよくわかんないビル」というだけでスワロウテイルみを感じたんだけど、さらにストリートに出てる看板はそこに日本語が追加され3カ国語が乱れ飛んでいる。もうスワロウテイルやん。

・隠された店

まあ、映画に出てくる建物はもっと九龍城砦みがあることはさて置き、この2階のお店がハラール中華店『アリヤ清真美食』だったことは以前の記事でお伝えした。ただ、よくストリートの看板を見ると路面店の1階と目立っている2階以外にもう1つランチの看板が出ていることに気づいた

なにやら、4階にもランチをやっている店があるらしい。しかも、ランチメニューの看板をよく見ると、最安980円の注文で副菜ビュッフェがついてくる食べ放題形式のようだ。そこでエレベーターで上ってみたところ……

ひっそりと『撒椒小酒館』という店があった。暗い入口前はもはやほとんど隠されているような雰囲気である。入店してみてオープンしてることにやっと確信が持てたレベル。

・ビュッフェのラインナップについて

店内は敷居などが中華のデザインで照明も中国提灯みたいなカバーがついているので、どことなくスワロウテイルのヤクザが中華料理食べるシーンを思い出した。いや、そんな治安悪い雰囲気ではないけど。

副菜ビュッフェは7品くらいで一番強いのが味付玉子だから、食べ放題のラインナップは正しく副菜という印象。どちらかと言うと、1品注文のメインメニューに良さを感じた。最安980円のメニューが充実しているのである

・充実のメイン

黒酢豚も良いし、海老と玉子炒めも良い。鶏肉とピーナッツの甘辛酢炒めとかも好きなんだよなあ。色々迷った挙句、ピーマンと細切りロースの香り炒めに決めた。要は、チンジャオロースなんだけど……

豚肉の量が多い。これだけ肉が入っていれば『カウボーイビバップ』のスパイク・スピーゲルも満足するに違いない。世代踏み絵なネタばかり言って申し訳ないけど、要は「肉が多い」ということを伝えたいだけなので軽く流していただけると幸いだ。ご飯おかわり自由ってのがまた最高だなジェットさんよお!

思わずデブのスパイクになってしまったが、そんな気分になるくらいにはコスパの良さを感じたということでご理解いただければと思う。考えるのではなく、感じるのだ。

・感じてみた

感じると言えば、実はこの店には食事以外にも感じ入る点があった。それは景色。裏路地だけど目の前がタイムズ駐車場という立地で駅も近いビルの4階なので、窓からの景色が……

池袋の都市の裏側みたいなのである。ここだけの絶景というわけではないし、狙った景色でもないんだろう。ただ、どこかがらんどうな雰囲気も漂う都市の裏側に20世紀末を感じたのだった。ミニシアター系映画に出てきそうな景色だったなあ。

そんなわけで、勝手なことを言い続ける食レポをしてしまったけど、こういう気分が日常を特別な瞬間にする香辛料にもなるんじゃないかと思う。中華だけにな。

・今回紹介した店舗の情報

店名 撒椒小酒館 池袋店
住所 東京都豊島区西池袋1-43-3 日精ビル4F
営業時間 11:00~20:00(ランチ11:00~15:00)
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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