ロケットニュース24

【実録】先輩の家で鍋パーティーをしたら、具材が「熊の手」だった話 / 初めて体験する『最高級ジビエの味』とは

10分前

つい先日の話だ。編集部の先輩記者である中澤星児から「うちで鍋パーティーをしよう」と誘われた。なんでも、とんでもなく “いい肉” が手に入ったんだとか。

中澤とは長い付き合いだが、家に招待されるのは初めて。一体どんな鍋をごちそうしてくれるんだろう? ワクワクしながらお邪魔したところ、出てきた具材はまさかの熊の手だった。

・鍋パの経緯

ある日のこと。いつものように編集部に行くと、中澤が何やら申し訳なさそうな顔でこう言ってきた。


「すまんかった」


え? 何が? 割と本気で身に覚えがないが、中澤によれば、どうやらきっかけは私(あひるねこ)が昨年11月に書いた記事らしい。

内容をかなりざっくり説明すると、昨年行われた「伊豆 vs 房総の気温対決」という企画において、中澤の指示が面倒すぎて私がひどい目にあったというもの。

で、その記事を読んだ結果、中澤は……。


「マジですまんかった」


いやいや、あれはそういう記事であって、別に言うほど気にしてないですって! 純粋かよ!! こうしてお詫びを兼ねた鍋パーティーが開催されることになったのである。

・初の先輩宅

数日後、私は指定された渋谷駅に来ていた。ここから中澤宅までは徒歩で行けるらしい。すごい場所に住んでるな。


しばらく待っていると……


中澤アニキ、登場。


星児さん、わざわざ迎えに来てもらってありがとうございます。鍋の準備はすでに終わっているとのことで、さっそく中澤宅へ向かう我々。


渋谷も少し歩けばこんな静かな場所があるんですね。編集部の人間で中澤の家に入るのは、もしかすると私が初めてかもしれない。


部屋に入ってまず驚いたのが、物が全然ないこと。家具らしい家具がほぼ見当たらないのである。ふと床を見ると……。


ちょっと待って! テーブルそれ!? カゴやん! 洗濯物とか入れるカゴやん!! どうやって鍋するんですか!?


少し考えた結果、中澤が取り出したのは……。


スーツケース……!


今日はこれをテーブル代わりとする。さて、肝心の鍋だが、中澤曰く「鍋というより煮込みに近い」ものらしい。


果たして何の煮込み料理なのか? チキンか? ポークか? あるいはフィッシュか? それでは……鍋オーーーーープン!


え!?


ちょ、いや、え……!?


……え?


え?

・ガチでフリーズ

あまりの衝撃に言葉を失う私。ふと顔を上げると、なぜか中澤も言葉を失っている。アンタが作ったんだろ。


そう、まさかの熊の手である。中華料理における満漢全席の一つとしても知られる高級食材の、あの熊の手である。本物……だと……?


中澤によれば、このツキノワグマの熊の手は、千葉県君津市でジビエショップ兼レストランを運営している猟師の仲村さんから入手したものだという。



仲村さんは、環境省に認定を受けた有害鳥獣捕獲等事業者『株式会社TSJ』の代表取締役であり、取り扱っている食品・加工品などはすべて害獣駆除によるものなんだとか。


気になるお値段は8600円。さすがに高額だが、これでも安くしてくれたらしい。素人には難しい毛の処理なども仲村さんがやってくれたそうだ。ありがとうございます。


とはいえ、未知の食材であることに変わりはない。中までしっかり火を通すため、中澤は私が来る前日にまず3時間ほど煮込んでみたそうだ。

味付けは醤油、みりん、かつおぶしと生しょうが。さらに今朝は7時から煮込み始め、その結果、11時半くらいに指が取れたという。これは本当に料理の話なのか?


仲村さんも処理段階で圧力鍋を使って煮込んだとのことで、熊の手の調理がいかに時間と手間が掛かるかが分かる。

こうして完成したのが、いま我々の目の前にある皿というわけだ。こんな希少食材をスーツケースの上で食べるのか? という疑問もあるにはあるが、とりあえず……。


かんぱーーーーい!

・熊の手の食べ方

しかし、ここでいきなり難問にぶち当たる。熊の手ってどうやって食べればいいんだろう?

ネットで調べてみたところ、指の間にナイフを入れれば簡単に切り分けられるとのこと。言われた通り、恐る恐るナイフを入れてみると……。


うわァァァァアアアアアアア!!!


おいマジかーーーーーーー!!!!


本当に切れた。


つい先ほどまで “手そのもの” だったが、カットすることで肉料理っぽさが増す。雰囲気は豚足に近いかもしれない。それでは人生初の最高級ジビエをいただいてみましょうか。


ガブリ。

・熊の手の味

続いて私もガブリ。なるほど……まるでコラーゲンの塊のような食感で、かなりねっとりしている。そして同時に、なかなかの獣臭だ。


プロの中華料理シェフが作ればまた違うのかもしれないが、中澤と仲村さんが何時間煮込んでも消えることがない野生の香りに思わず驚愕。これは想像以上にワイルドな料理である。


牛豚鶏の中だと、圧倒的に豚肉に近い。特にもつ煮込みに近い気がする。中澤も同じことを思ったようで、「上野の『養老乃瀧』のもつ煮込みはこんな匂いがする」と言っていた。さすがに嘘だろ。


最初は匂いが気になったが、食べすすめるうちに慣れてくるのか、途中からあまり気にならないようになった。しかし、むき出しになった指の骨を見ると、自分が熊を食べていることを否が応でも意識する。


そうか……これが命をいただくということなのか。もちろんそれは牛にも豚にも鶏にも言えるのだが、やはり熊の手となると、そのリアリティは段違いだ。食材となってなお、迫りくるような存在感がある。



私と中澤は、終始圧倒されながら熊の手にかじりついていた。画像だけ見るとケンタッキーを食べているようにしか見えないが、間違いなく熊の手だ。


残さず完食。ごちそうさまでした。

・命に感謝

それにしても、まさかスーツケースをテーブル代わりに、熊の手の煮込みを食べることになるとは……。人生ってのは本当に数奇である。

星児さん、長時間の準備お疲れさまでした。思っていた鍋パーティーと別物すぎて今もまだクラクラしていますが、一生の記念になりました。どうもありがとうございます。


中澤宅を出て、再び人だらけの渋谷駅へ向かう。駅周辺に漂う渋谷特有のカオティックなエナジーと、熊の手まで食い尽くそうとする人間の底知れぬエナジーが、私の体内で獣の遠吠えのように共鳴していた。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼煮込む前の熊の手。あまりにも “手” すぎる。

▼ この記事はいかがでしたか? ご感想をお待ちしています
Take Our Survey

モバイルバージョンを終了