
現在、SNSでライブマナーについての議論が噴出している。発端となったのは、B’zのライブ体験談に関するSNS投稿。要約すると、後ろのおじさんが6曲目までフルで大熱唱していて、稲葉さんの声に集中できない状況だったから注意したところ「ライブは自由に楽しむものですよね笑」と返され、残念で悔しかったという内容だ。
多くの共感が寄せられる一方で、ファンが合唱しているアーティストのライブを引き合いに出す投稿も多い。そこでプロミュージシャンにどう思うか話を聞いてみた。
・ステージに立つ側の意見
話を聞いたのはギタリストのKさん。ギターレコーディングや作詞作曲、バックバンド等の依頼仕事をこなす一方で、自身のバンド活動も続けている実力派だ。
忌憚のない意見を聞くために、顔出し名前だしなしで話を伺ったところ、どうやらKさんもその話題は知っているらしい。ライブでの声出しってステージに立つ側からすると迷惑ですか?
Kさん「まず声出し自体がマナー違反ってことは絶対にない。むしろ、自分の曲を歌ってくれたりコールしてくれるのは基本嬉しいよ。なにせ、俺はずっとライブハウスが主戦場だから、そんなことやってくれる人がゼロの状態からスタートしてる。
普段ライブハウスに出演してるバンドはゼロのまま終わることも多いんだ。それを考えたら、歌ってくれるなんてミュージシャン冥利に尽きる。感謝でしかないよ。ただ……」
──ただ?
Kさん「その前提で、曲とか関係なく、流れを遮るような声は邪魔だなあと感じることもあるよ。例えば、静かな曲をやってる時に全然関係ない雑談を大声でされたり野次飛ばされたりしたらそりゃやりにくいじゃん? 普通に考えたらそういうのは嫌な人も多いんじゃない?
でも、マジで俺個人のマインドで言うと、野次もその行為自体に『やめろ』とかは思わないんだよね。ライブハウスのブッキングライブとかだったら、色んなジャンルの人がいるし聞き方も自由。
その中でどう持っていくかだと思ってるから。板の上に立つってそういう勝負で、これはライブハウス出身者全員になんとなく認識としてあるんじゃないかな」
──楽しみ方は自由派っていうことですか?
・ライブハウスのブッキングならね
Kさん「ライブハウスのブッキングならね。元々枠組みがカオスだから聞く側もカオスなのは当たり前だと思う。ただ、これがワンマンライブになるとまた気持ちも変わるんだよね」
──と言うと?
Kさん「ワンマンライブは、通常1アーティストしか出ないわけだから、そのアーティストを好きな人が観に来るはずじゃん? だからアーティスト側も自分だけの価値観を作ろうという意識が高い。一人一人にこの場にいる意味を提供したいから。
言い換えると、ファンも世界観の一部で一緒に世界を創り上げるみたいな場になる。だから、楽しみ方もアーティストのアイデンティティや表現したい世界観によるところが大きくなるんじゃないかな。アーティストもその理解がある前提で演出を考える節があると思うし」
──ブッキングとワンマンライブで意識が違うんですね。
Kさん「うん、俺は違う。元々、売れたいっていうんじゃなく、自分に共鳴してくれる仲間を探すために音楽作り始めたから。世界観を共有できる人が集まればいいし、逆に言うと、ワンマンライブにそれ以外の人は集まらなくていい。ワンマンライブってそういう秘密基地だと思ってる。
要するに、ライブマナーとして全てに共通するダメなことはないけど、一緒に場を創る上でのTPOは現実問題あると思う」
──TPOが一番難しいと思わなくもないですが。
・今回の問題の本質
Kさん「でも、俺は今回の問題の本質って、ライブマナーというよりTPOの話だと思うんだよね。例えば、ファンが大合唱してる海外ライブを引き合いに出す投稿とかもあるけど、全員が合唱してる中で大熱唱してるんだったら逆にTPO守ってるでしょ。
色んな意見が出てるのは場によって違うことを同列にして語るからだと思う。ブッキングとワンマンでも違うし、ライブハウスとスタジアムでも別物。その空間やライブ演出を無視して外から一律に、声出しとかファンの熱唱がNGとかを語るのは暴力的だよ」
──じゃあ、具体的な話、B’zのスタジアムライブで6曲目までフルで熱唱してたっていうのはTPO的にどう思いますか?
Kさん「まず、音楽創る側として意見を述べると、どんなものであってもその好きの熱意はストレートに嬉しい。ただ、同時に1ファンとして客層も踏まえて周囲のお客さんの気持ちになって考えると、まあナシってほどじゃないけどボール気味かなとは思う。それがアリになるのは頭から6曲全部『太陽のKomachi Angel』だった時だけ。
なにせ、スタジアムライブの空間って整然としてるしB’zのライブも完璧に流れをコントロールするショウって感じだし、俺がお客さんとして隣に立ってたとしたら正直ちょっと気まずいかも。共感性羞恥を覚えるというか、カルチャーが違う感じがする。
B’zくらいの規模になると、初めての人とかも多いと思うし、普通のワンマンよりオープンな場なんだと思う。だから、多分カルチャーの違う人もいて、その中にはライブハウスのブッキングライブの経験が常識の人もいれば、スタジアムの聞き方が常識の人もいる。
別にどっちも否定されるもんじゃないけど、カルチャーのノリってあるよなあって。好きな人が集まってるはずなのに、B’zくらいファンが多いと、みんなが楽しめるようにっていうのは難しいもんだなと思わされたな」
──とのこと。色んな話が出たけど、ワンマンライブは秘密基地の話とか、アーティストによりけりだからライブマナーとひとくくりに言えないという話は興味深かった。
ちなみに、そんなKさんは「良いライブになりさえすればどういう聞き方してもOK」派らしい。TPOと言うと窮屈に聞こえるけど、アーティストの世界観を受け取って一緒に場を創れるか。それが大事なのかもしれない。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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