
年越しそば、おせち、お雑煮などなど……この年末年始、多くの人が新年を迎えるにあたってご馳走や正月料理に舌鼓を打ったはずだ。
それは当然ながら日本に限った話ではなく、世界各国に新年を祝う料理が存在する。ネパールも同様だ。というわけで今回はネパール(チベット)の正月料理を初体験してきた。
・事前予約制のチベット系ネパール料理店
今回訪れたのは東急電鉄大井町線荏原町駅から徒歩約3分の「マナンカフェ(Manang Cafe)」。同店は基本的に常時営業しているわけではなく、予約制(2名~)。ある程度のリクエストには対応してくれるという。
この日は日本でも指折りのエスニック料理有識者及び愛好家の方々にお声がけいただき、ネパールの正月料理を食べる会に参加させていただいた。主催者の方が正月料理をリクエストしてくれたのだ。みなさんも来店時には事前に電話で連絡することをオススメする。
なかなか渋い外観をしているが、中を覗いてみると食材店・雑貨店にしか見えない。これは初見では入りづらい。
中に入ってみても完全に食材店といった様相。
スパイス&ハーブ類や、ネパールのインスタントヌードル「ワイワイ」も山積みで陳列されている。
豆の種類や販売価格が書かれたホワイトボードには猫などの可愛らしいイラストが添えられている。
そして、食材及び雑貨販売エリアの少し奥にかけられた瀟洒な暖簾をくぐると飲食スペースが現れる。新大久保の「ソルティカージャガル」と同じような構造だ。
テーブルは2卓、大人8~10人ほどが着席できるこぢんまりとしたレストラン。
・ネパールの正月料理とは
常時営業ではないものの、飲食スペースにはグランドメニューが掲示されており、ダルバート(1050円)やモモ(ネパール風蒸し餃子 / 600円)などを提供していることがうかがい知れる。
店主はネパール北西部のマナン出身。北はチベットに接していることもあり、チベットを感じさせる写真や装飾があり、ネパール料理だけではなくチベット料理もリクエストすれば食べさせてくれる。チベット系ネパール料理店といったところだろう。
つまり、同店ではネパールとチベットが接するエリアの正月料理を提供してくれるということだろう。日本でも地方や各家庭でお雑煮の味が千差万別のように、ネパールも民族や地域によって食文化は大きく異なる。
というわけで、最初に供されたのはこちらの料理。右の柔らかめのそばがきのようなペーストはツァンパ(オオムギやハダカムギを脱穀して乾煎りした粉末)を練ってギュー(水牛の溶かしバター)を加えた「マルダ」なる逸品。
左の皿には甘辛く揚げ焼きしたような鶏肉、キュウリ・ダイコン・ニンジンのピクルス(アチャール)、ジャガイモをクミンシードなどで和えたおかずが並ぶ。
白い液体はドブロクのようなお酒「チャン」を温め、ギューで炒った薄焼き卵を入れたハレの日の飲み物。玉子酒といったところだろう。この日はチャンではなくマッコリを代用したというが、甘酒のような優しい味わいでバターの風味を感じる。
このお酒には1回以上はおかわりしないとよろしくない、という風習があるという。こういった現地の食文化を聞きながらの食事は満足度も高まる。
気になるマルダは緩いそばがき、粘度のない餅のような口当たり。たっぷりとギューを使用していてリッチな味わいで、日本人でも正月感を得られるような料理ではないか。
・パワフルな豚肉料理&不思議な味「バター茶」
次に提供されたのは豚肉のスパイス炒め。脂身の多い部位、赤身の多い部位などが混在していて様々な食感と味わいを楽しむことができる。万人受けする逸品だ。
次いで豚タンをシンプルに焼いたもの。見た目通りワイルドで野趣あふれる食べ味。辛めの唐辛子ペーストをつけて食べるとビールを飲む手が止まらない。
ボリューミーでややオイリーな食事の間に出してくれたのは「バター茶」。チベット文化圏で日常的に飲まれているお茶で、ネパール産の茶葉・ギュー・ミルク・塩で作る。
ミルクティーがしょっぱいというのは日本人的には違和感を抱いてしまうかもしれないが、チベット文化圏では欠かせない飲み物で、いざ口に含んでみるとお茶というよりもスープのような飲み口。
もちろん、お茶の香り、ギューやミルクの甘みも感じる。心が安心するドリンクといった印象だった。
バター茶を経て具が入っていない生地のみで作る花巻のような「Tモモ(※チベットモモだと思われる)」とマトンと野菜がたっぷり入ったスープがともに供される。このスープの名前を尋ねると「タルカリ」とのこと。つまり「おかず」だ。タルカリの適用範囲ってだいぶ広いようだ。
Tモモに添えられているのはキュウリやダイコンなどの漬物。浅漬けキムチのような味だった。
スープはマトン、ジャガイモ、ニンジン、インゲンなどなど具沢山。表面に浮いた油膜からも使用されているマトンの脂ののり具合がわかってもらえるのではないか。
スープをすするとマトンの香りとコクが口に広がり、肉を嚙みしめるとマトンのいい意味での臭みとうま味を感じる。味つけは塩ベースで優しい。
Tモモは太麺状にした生地を巻き上げて花巻のように成形して蒸し上げているようだ。
熱々のところをほどき、まずはそのまま口に含むと……ほのかな甘みを感じる。食感はしっかりコシがあってもっちりだ。
こいつをちぎってスープに投入してうどんやすいとんのようにして食べると美味しいに決まっている。お雑煮を彷彿とさせる見た目と味だ。今回提供された料理すべてが正月料理ではないようだが、いずれも食べると晴れやかな気分にさせてくれる。
筆者はここで腹パンになってしまい、Tモモ1つはテイクアウトすることにしたが、さらにダルバートで〆る鉄の胃袋を持つ方もいらっしゃった。
写真を撮らせてもらい、ダル(ひき割り豆)スープもありがたいことにおすそ分けいただく。ダルはニンニクが全面に出ていて、塩気は抑え目といった印象だった。
内容はしっかりと味がしみ込んでいることがうかがえる豚肉、キュウリとニンジンのスライス、青菜炒め、唐辛子とトマトのピクルス(アチャール)と、長粒種のみのライスはたっぷりで食べ応え十分だろう。
8人でこれだけの料理とお酒を堪能して1人4000円いかないぐらい(!?)。もちろん、メニューや仕入れによって価格は変動するだろうが、予約制だからこそリクエストもできる夢のようなチベット系ネパール料理店だった。ここに通い詰めれば、いまだ日本では知られていない当地のグルメや文化が体験できるはずだ。
・今回訪問した店舗の情報
店名 マナンカフェ(Manang Cafe)
住所 東京都品川区中延5-11-17 福世ビル1F
営業時間 事前予約制(2名~)
執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24
▼リクエストすると食材もいろいろと見せてくれる超フレンドリーな接客。筆者の大好きなギューは、ネパール製で何ともリッチでかぐわしい香りがした。
田中ケッチャム






















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