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漆黒の夜の森がプロジェクションマッピングで幻想世界に! 阿寒湖畔を歩く「カムイルミナ」体験

2024年10月7日

都会で暮らしていると忘れがちな夜の闇。ましてや「夜の森を歩く」という経験をしたことがある人は少ないだろう。

子ども時代はフジと日テレしか民放がなかったくらい田舎育ちの筆者も、家の周りは住宅街だったので例外ではない。さらに山奥にあった祖母宅に行くと、裏山は恐怖の対象だった。

そんなエセ田舎育ちの筆者が自然体験型アクティビティ「阿寒湖の森ナイトウォーク KAMUY LUMINA(カムイルミナ)」に参加! 漆黒の森で見たものとは……


・夜の森を歩く「カムイルミナ」

会場は阿寒摩周国立公園内の阿寒湖。特別天然記念物「マリモ」のほか、高級リゾートホテルの並ぶ温泉地としても知られる。

会場には駐車場がないため、観光駐車場などに駐めて商店街を抜けていく。レジャーの多様化で全国的に “温泉街” は苦戦しているというが、暮れゆく街並は風情がある。


昼間は遊覧船などが発着する桟橋が受付場所。一度集合してから、スタッフの先導で順番に森に入っていく。受付周辺のライトアップがすでに美しい。

広大な北海道、人の気配のあるところまで森閑(しんかん)とした山道だったり、観光地の夜は早かったりするので、「こんな時間から本当にやってる?」と半信半疑だったが一気に不安が払拭された。


開催は日没後で、おとな当日券3500円。「○時○分に出発のグループ」のように振り分けられる。1周1.2kmの道のりとなり、途中にトイレはないので受付場所で済ませておこう。


時間がきたらアクティビティスタート! 入口でひとり1本ずつ「リズムスティック」を受け取る。ずっしりと重いので、最後まで持ち歩くが少し大変だったが、その価値あり!

この大きな杖、LEDライトやGPSやスピーカーが内蔵されており、足元を照らす照明の代わりにもなっている。すぐ耳元で響くナレーションや音楽にびっくり。

流れるのは阿寒湖在住のアイヌのみなさんの協力でレコーディングしたという伝統音楽。不思議と他メンバーのスティックの音は聞こえない。

周囲は街灯などもない森の遊歩道。リズムスティックがなければ、足元に障害物があっても気づかない。自分専用の音響&照明が気分を盛り上げる。

プロジェクションマッピングは、アイヌの伝承をもとにした物語仕立て。飢餓に襲われた人間界を救うため、フクロウのカムイがカケスをお使いに出す。

モニターもスクリーンもない森の中に、くっきりとアニメーションが表示されることに驚き。背後の本物の森と違和感なく融合し、現実との境界線がぼんやりと溶ける。


カケスを追いかけて、私たちも進む。ひとグループずつにスタッフがついて先導してくれるのだが、歩くペースはかなり速い。1周する頃にはそれなりの運動量になるだろう。


リズムスティックは、その名のとおりリズムを刻むのにも使う。ナレーションに合わせて、参加者全員で地面をノック! 物語に参加しているような一体感が生まれる。

「呪文を唱えましょう!」とか「○○の名前を呼びましょう!」といったハイテンションな演出ではないので、大人も参加しやすい。スティックは色を変えたり、リズムに合わせて光ったりと、めまぐるしく変化する。


遊歩道に沿って決まったルートをたどるほか、立ち止まって観賞する見どころが会場内に点在している。音、光、そしてスモークの幻想的な演出。暗い森と、鮮やかなプロジェクションマッピングが交互に訪れる。


すごかったのが、沸き立つ溶岩のような演出とともに本物の硫黄臭が漂っていたこと! そもそもここは「ボッケ遊歩道」と呼ばれる場所で、アイヌ語で「煮え立つ場所」「泥火山」を表す。昼間にはボコボコと泥が噴き出すボッケを観察できる。

見えているのは本物の水なのか、映像なのか。「どこまでが演出でどこからが実物!?」と脳が混乱するような感覚を味わえる。

このほかマリモからのメッセージや、妖精コロポックルの登場など、8か所のビューポイントを経て物語はエンディングへ。

所要約50分。結末を見届けてからリズムスティックを返却する。アイヌのユーカラ(叙事詩)「大飢饉から人々を救ったカケスの神の物語」を追体験できる趣向となっている。


・デジタル技術による新時代アトラクション

ビル1棟を丸ごと使ったり、城をライトアップしたりと、従来では考えられないような大規模投影を可能にしたプロジェクションマッピング。おまけに水でも炎でもリアルに表現できるので、舞台美術の世界を根本から変えたのではないかと思う。

カムイルミナでは、自然公園内に大がかりな機器を設置するのではなく、観客が手に持ったデバイスでさまざまな演出を実現。観光資源としては考えにくかっただろう夜の自然公園を、デジタル技術で見事にアトラクション化していた。

企画したのは世界中でルミナ・ナイトウォーク・シリーズを手がけるカナダのMOMENT FACTORY社。2022年にはクマゲラの繁殖行動が終わるまで開催が延期されたほど、周囲の環境に配慮した繊細なイベントになっている。

今シーズンの営業は11月9日(土)までなので、残りの期間に北海道を訪れたならぜひ!


参考リンク:カムイルミナ公式サイト
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.

©MOMENT FACTORY
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