「この映画は2度始まる」のキャッチコピーで映画『カメラを止めるな!』が上映されたのは2018年のことである。低予算で制作され、都内わずか2館から始まったにも関わらず、面白さが口コミで広がって全国上映に至った。
その再来と言われる作品が、現在上映中であることをご存知だろうか? 『侍タイムスリッパー』も同じように、少人数で制作され都内1館から始まり、2024年9月13日より全国の劇場での上映がスタートしている。
実際に作品を見てみたら、これまた最高だったんだよ! 時代劇をテーマに笑いあり涙ありの痛快な人間ドラマだった!!
・監督の預金残高
この作品は「未来映画社」の劇場映画第3弾、自主制作による時代劇である。新型コロナの影響で資金集めに苦労したそうで、初号完成時に安田淳一監督の銀行預金は7000円程度しか残っていなかったのだとか。
制作スタッフも10名足らずと小規模だが、とても見応えのある作品に仕上がっている。
・あらすじ
物語の始まりは、幕末の京の夜、会津藩士高坂新左衛門は長州藩士の山形彦九郎を討つように密命を受ける。刀を抜いて対峙したその刹那、落雷を受けて新左衛門は意識を失った。
目覚めるとそこは現代の時代劇撮影所。ひょんなことから、「斬られ役」を務めることになり、次第に斬られ役として名を挙げていく……といった内容である。
・とくに印象に残った3点
今作の印象に残った点を挙げると、まず主人公新左衛門を演じた山口馬木也さんはハマり役だ。現代に飛ばされた田舎侍の新左衛門、その素朴な人柄を見事に演じている。ことあるごとに「かたじけない」と頭を下げる姿が自然で、新左衛門を好ましく感じさせるのは、山口さんだからなのではないだろうか。
そして殺陣(たて)も見ごたえがある。近年テレビで見ることが少なくなった時代劇。昔は毎週、いや毎日でもどこかしらの局でやっていたので、殺陣を日常的に目にできたはず。それが今では見る機会も少なくなった。
今作では、存分に殺陣を堪能できるぞ。新左衛門の稽古シーンでは、斬られ方のレクチャーを受けている場面あり、なるほど! と思わせられる。
コメディーでありながらも、緊張感の漂う場面ではまさしく固唾をのむ。それも朴訥(ぼくとつ)とした新左衛門のキャラゆえであり、画面越しにピンと張り詰めた空気を感じさせる。
「タイムスリップ」は割と月並みな題材ではあるけど、十分に見ごたえがあった。派手な演出はないものの、鑑賞後に「良いモノを観たな」と思うことができた。
感想はこれくらいにしておいた方が良さそうだ。これ以上書くと、余計なネタバレをしてしまいそうで……。
9月13日から全国各地の劇場で順次上映されているので、公式ページの劇場を確認していただきたい。きっと上映劇場は増えていくはず。カメ止めに匹敵するムーブメントになるのでは!? 気になる人はぜひチェックして頂きたい。
参考リンク:侍タイムスリッパー
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24