本日9月12日は『とっとり県民の日』。倉吉市出身の父と境港市出身の母に鳥取県内で育てられた私(亀沢)は純度100%の鳥取者(とっとりもの)であり、「鳥取県の魅力」を語る資格を十二分に有していると考えられる。

とはいえ19歳で上京し、現在も東京で楽しく暮らしている身の上のため、「なら鳥取へ帰れば?」と言われると返答に困ってしまうこともまた事実……。

そんなワケなので、今日はなにも「鳥取に移住しろ」とは言わない。「鳥取に旅行してみよっかな?」と皆さんが心を動かすような、ジャブ程度の鳥取の魅力をお伝えしたいと思う次第だ。そこんとこヨロシク。

【初級編・観光客のあなたへ】


・日本で一番人少ない

もう20年以上前の話になるが、フォークデュオ『ゆず』のラジオで「全国各県の歌を作る」というコーナーがあった。そのときの鳥取県の歌が「日本で一番人少ない ときどき島根と間違われる」という出だしだったことを、今でも鮮明に覚えている。

そう。あまり知られていないが、鳥取県の人口は50万人強と日本最小を誇る。つまり鳥取県民は日本一希少な人種であり、そんなレアキャラたる私を読者はもっと崇め奉りたまえよ……という話は一旦おいといて、とにかく日本一人が少ない県ってシンプルに見てみたくないですか? 


・食べ物がうまくて安い

食べ物がうまい地方はいくらでもあるが、鳥取のうまいもんの安さはなかなかのレベルな気がする。以前、北陸地方で海鮮の店を訪れたところ、魚のラインナップが鳥取と完全に同じで驚いた。が、正直「同じ魚でも鳥取のほうが安いな」と思った。

北陸や九州にブランド力で劣るのか、はたまた運送費の関係か、獲れる魚は同じでも鳥取産のほうがモノが安い場合が多い。あと肉や果物もうまい。ただ飲食店は少なめなので、観光客の方、悩んだら一旦以前の記事でご紹介した回転寿司屋『北海道』へ行ってください。


・海も山もある

鳥取県は横に細長い形をしており、北は全部海、南は全部山。そのため県内どの地点からスタートしても短時間で海にも山にも行ける。海岸線とほぼ並行に続く国道9号線を走ると、わざわざ県外からサーフィンをしに来る人、聖地巡りのコスプレイヤー、釣りをするおじさんなどを見ることができ趣深い。

山に関しては中国地方最高峰の大山(標高1729)があり、夏は登山客、冬はスキーヤーで賑わううえに景色がガチ桃源郷。なお「鳥取って暑いの? 寒いの?」と訊かれることがよくあるが、答えは「夏暑くて冬寒い」だ。メリハリがあって最高だろ?


・バーベキュー、花火、喫煙に寛容

とにかく土地が余っている鳥取県内では、どこの家庭も庭先で頻繁にバーベキューや花火をする。もちろんダメなエリア(道路の真ん中とか)はあるが、バーベキュー行為に県民が慣れ切っているため、少なくとも苦情を言ってくる人はほぼいないハズ。



【中級編・鳥取県民に聞いてみた】


・車があれば無敵

さて。鳥取がこれほど魅力的であるにも関わらずイマイチ観光客が少ない理由……それはひとえに「新幹線が通っていない」からである。この問題について、鳥取県中部在住の友人N(30代男性)に話を聞いてみた。


友人N「学生の頃は都会へ行くのに苦労したけど、今は『車があれば無敵』と思っている。関西、岡山、島根の3方向どこでも2時間くらいで行けるのが素晴らしい。最近は月に2回くらい日帰りで大阪へ買い物に行っている。

ポイントはここ数年でバイパスがどんどん開通して、時間も高速代もかなり節約できるようになったこと。佐用(兵庫)までバイパスで行って、そこから高速に乗れば片道2500円くらいで神戸まで行ける。

昔はこんな田舎に生まれたことを呪ったりもしたけれど……今は車があるし、ネットもあるし、家賃がかからなくて飯も空気もうまくて、鳥取って最高だな〜っていうマインドで生きている。新幹線がないこと以外はメリットしかない、マジで」


そう。かつては普通の田舎道しかなかった鳥取県内は近年、山陰自動車道がほぼ全線開通し、県民の移動速度が飛躍的に上昇した。そして驚くべきことに、この山陰自動車道とかいうやつ……なんと鳥取県内は全て無料なのである!!! 高速無銭乗り放題の件を差し引くと「レンタカー代くらい払ってもいっか」って気になりません?


・国宝ガラ空き問題

続いて、私と同じ東京在住の鳥取出身者にも意見を求めてみた。鳥取県中部出身・都内在住の友人J(30代女性)は「あんなに空いている国宝は他では見られない」と語る。

ウチの実家から頑張ればチャリで行けなくもないところに三徳山三佛寺投入堂という国宝があって、あまり興味のない私は数回チラ見した程度しかないが、国宝好きの友人Jは時おり訪れているらしい。言われてみれば、あれほどさりげない国宝もあまりない気がする。

鳥取には他にも『鳥取砂丘』『鬼太郎ロード』『コナンの街』などそれなりに有名な観光地が点在しているが、どこも驚くほど空いている。「人混みが苦手だけど旅行がしたい」というワガママさんにはうってつけと言えるだろう……ただし盆と正月は大量の元鳥取県民が帰省するから注意な。



・県民のポテンシャル大開放中

中部民の見解ばかり書き連ねてしまったので、西部民の意見も聞いてみよう。私の担当美容師のMさん(30代男性)は米子市出身。鳥取の県庁所在地は鳥取市だが、実は一番都会なのは米子市だ。


美容師M「そうですね……最近、鳥取出身の有名人がいきなり増えたじゃないですか? 昔は全然いなかったのに。これってつまり “鳥取県民のポテンシャルが実は元々高かった” ってことじゃないかと思うんですよ。鳥取みたいな田舎で生まれても全国区になれるルートが確立されつつあることは、大変喜ばしい変化だと感じます。

え? 米子人目線のオススメの見どころですか? う〜ん、やはり米子城ですかね。あそこから見える絶景は『昔の人がここに城を作っただけある』と思います。あと181号線で岡山方面へ向かう道のりが楽しい。それから島根が近いのも意外とポイント高いです。軽いノリで出雲大社行けます」

そう!!!!! どういうワケかここ10年くらいの間に鳥取出身の有名人が爆増し、県民一同理解が追いついていない状況なのだ。それと鳥取旅行と何の関係が? とお思いかもしれないが……もしかすると「鳥取には美人が多い」という可能性があるので、嫁探し中の方は豆知識として覚えておいて損はないかもしれない。



【上級編・住むのであれば】


さて冒頭でお伝えしたとおり、私は今のところ鳥取に住むつもりはない。理由は「自分のやりたい仕事が鳥取ではできない」「東京のライブに行きたい」の2つなのだが、もしその問題が解消されれば、将来的なUターンは無しではないと思っている。最近は縁もゆかりもない田舎に移住したい勢も増えていると聞くので、ここからは鳥取への移住を考えている方のためのPRを展開していこう。


・土地が安くて地震に強い

土地が余っているのはどこの田舎も同じだと思うが参考までに、鳥取県では普通に住める一戸建ての古民家が100万円くらいでゴロゴロ売っている。都会と比べると仕事が少ない・賃金が低いなどの問題はあるものの、最近は住む場所にとらわれない仕事が色々あるので、そのへんがクリアできさえすれば、家を持つハードルは死ぬほど低いといえる。

ちなみに2016年に「鳥取県中部地震」という最大震度6の大地震があり、たまたま鳥取にいて被災した私はガチで “死” を覚悟した。それほど大きな地震だったのだが……結果として、この震災による死者はゼロ。当事者として、これが都会だったら絶対ゼロじゃすまなかったと確信している。

地盤がどうとかそういう話は詳しくないので言及は控えるが、鳥取に住んで地震で命を失う可能性はかなり低い、と個人的には思う。



・県内でどうにか完結する

最近、滋賀県と岐阜県を訪れてみて感じたのは「滋賀は京都、岐阜は名古屋ありきで成り立っている」ということだった。「30分で京都(名古屋)へ行けるんだから、県内に足りないものがあっても別にいいよね?」というノリである。それは確かにそう。

その点、先に申し上げたとおり鳥取は一番近い都会(神戸)へ行くのに2時間かかる。さすがに軽いノリで往復4時間はキツいため、生きていくための最低限のものは、どうにか県内で全てまかなえる仕組みになっているのだ。多くを望まない人にとっては鳥取で全てが完結するといえる。


・知事が立派

あと、現鳥取県知事の平井さんはマジで立派な人だ。

以前とある集いで平井知事とお会いしたのだが、「写真をSNSに載せていいですか?」と尋ねたところ「どんどんやってください!」と笑顔で即答していただいた。“鳥取をPRするためなら何でもやる” という姿勢は県民の絶対的信頼を勝ち得ており、この知事がいる限り、少なくとも鳥取が消滅する心配はないと思う。

そういえば平井知事の前任の片山さんも非常に立派な知事だった。鳥取、知事に恵まれがち説。


・総理、出ちゃうかもしんない

ちなみに……今日は鳥取県民の日であると同時に自民総裁選の告示日でもある。「政治とプロ野球の話題は絶対に記事にするな」と親に強く言われて育ったため余計な発言は控えるが、ひとつだけ言えるとすれば次期総理の有力候補たる石破さんは鳥取県のご出身

鳥取の時代……来ちゃうかもしんない?


・おいでよ鳥取県

以上、鳥取の魅力を字数制限ギリギリまでお伝えさせていただいた。鳥取県民は若干引っ込み思案で自己肯定感が低い県民性とされている(それはそう)が、比較的いい人が多いのは間違いないのではないかと思う。あと、子供が東横キッズになる可能性は極めて低い

「何もない」といえば何もないかもしれない鳥取県。でも、そんな鳥取を「何もない」と言えちゃう人って、人生の素人だよなぁ……と個人的には思うぞ。ってことで、おいでよ鳥取県! そこに私はいませんが、心はいつも鳥取にあります。

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.