ネパールの国民食「ダルバート」──日本で言うところの “定食” のような存在で、日本人の多くが毎日のようにご飯と味噌汁を食べているのと同様にネパール人はダルバートを常食している。


「ダルバート」はダル(ひき割り豆のスープ)とバート(米飯)というワードの組み合わせ。これにカレーやスパイスで味や香りづけをした野菜などのおかず(タルカリ)やピクルスのような漬物(アチャール)がついてくる。栄養バランスに優れ、おなかも満たされる逸品だ。

・“ネパール料理不毛の地” に一筋の光明「カトマンズ」

今回訪れたのは京王線笹塚駅から徒歩7~8分ほどの「アジアンダイニング&バー カトマンズ」。

何ともストレートなネーミング。ネパールの首都・カトマンズに「東京」という店名の日本料理店があるような感じだろう。店頭にはネパール国旗が堂々とはためいている。


ランチはダルバート推し。

もちろんダルバート以外の単品メニュー、酒の肴も充実している。

マスターは超フレンドリーで “一聞いたら十返ってくる” タイプ。カトマンズ出身で品川区西小山のネパール料理店「バルピパル」で働いたのち、2024年4月に独立して開業したという。


笹塚にはインド料理店はあったものの “ネパール料理不毛の地” だった。そこにオープンしたのが「カトマンズ」だ。


当連載の1発目に紹介した阿佐ヶ谷「マティナ・ダイニング」のオーナーは地元の先輩だとか。ネパールでもやっぱり先輩後輩関係って大事なようだ。当然か。


ランチメニューをチェックしていく。この中でダルバートと呼ばれるのは「ダルバットセット(980円)」。


デザートがついた「お子様セット(650円)」なんてメニューもラインナップ。住宅街にある店舗だけにファミリー層も大切にしているようだ。



・ダルバートにつくカレーは日替わり

というわけでダルバットセットのカレー「辛口」でオーダー。カレーは日替わりとのことで何が出てくるのかあえて聞かずに楽しみに待ちたい。


ネパールのビール「ネパールアイス(650円)」もオーダー。多くのネパール料理店で取り扱いがある鉄板ビールで、飲み口はキリンクラシックラガーを彷彿とさせるコクと苦みが堪能できる。

酒のあてとして供される塩気の効いたパパド(豆から作られた煎餅のようなもの)が嬉しい。



・泡立つ「カプチーノ系ダルスープ」

ダルバートが到着。ライスがてんこ盛りだ。

内容は左から青菜炒め、日替わりのキーマカレー、野菜のおかず、ダルスープ、ジャガイモやキュウリを使用した漬物、ライスというラインナップ。


ダルスープの表面は泡立っていてカプチーノのよう。「博多一双」の「豚骨カプチーノ」を思わせるヴィジュアル。


日替わりのキーマカレーは鶏ひき肉たっぷり。見た目は完全にボロネーゼ(ミートソース)で、小中学校のときに楽しみにしていた給食が頭をよぎる。ソフト麵で食べたなぁ……。


カプチーノ系ダルスープでのどを潤していく。

大切りのショウガが入っていてスッキリとしたのどごし。そこに豆の甘さが追いかけてくる。スパイス感はそれほど強くなく、優しい味わいだ。


ビールについてきたパパドを砕いてライスにふりかけ、ダルスープをかけて「ネパール式ねこまんま」を楽しむ。



・日替わりキーマカレー=「ネパール式ボロネーゼ」

キーマカレーはどうだろうか。

あぁ……これは完全にボロネーゼ


もちろんスパイスが効いていて辛みもあるので真正面からのボロネーゼではないが、「ネパール式ボロネーゼ」と言っても過言ではないだろう。パスタに絡めて粉チーズとタバスコを振ったら絶対に美味いやつだが、米にも当然ながらめちゃくちゃ合う。


野菜のおかずはカブ、ズッキーニ、カリフラワー、ジャガイモ、ナスとバラエティ豊か。

紫ナスと白ナスを併用するというこだわりようだ。

辛みはほとんどなく、ラタトゥイユのよう。野菜たっぷりで満足度が高い。ボロネーゼのようなキーマカレーといい、ここは洋食店か?


これらをライスに重ねていく。ショウガが効いたダルスープ、ボロネーゼのようなキーマカレー、野菜たっぷりのおかず、青菜炒め、ジャガイモなどの漬物。

ライスに合わないわけがないだろう。ボロネーゼとナスって相性最高だし。子どもから大人まで楽しめるワンパク系ダルバートだ。



・ネパールハイボールでダルバートを食べ進めていく

ビールを飲み干したところで「ネパールお酒」のラインナップから「ネパールハイボール(550円)」をオーダー。

ネパールのウィスキーを炭酸水で割ったハイボール。ドライな飲み口でするりと入っていく。あらゆる料理に合うはずだ。


ライスとダルスープはおかわりOK。

ということでダルスープをおかわり。やっぱりカプチーノ系だ。

マスターに「豆から作った汁物がつくダルバートと日本食って似てますよね」と言うと「そうそう!」と完全同意してくれた。ネパール人もそう思ってくれていたんだ。


時にはダルスープをそれだけですすってダルバートを胃袋へ放り込んでいく。あらためてネパール式ボロネーゼが美味いなぁ。


一気に完食。ライスとおかわりダルスープ、ビールにハイボールで腹パンだ……。

もちろんカレーは日替わりなのでキーマカレーが必ずあるわけではないが、キーマカレーの日にぶつかったら嬉しい。


セットのラッシーが昂(たかぶ)った気持ちを落ち着かせてくれる。

・今回訪問した店舗の情報

店名 アジアンダイニング&バー カトマンズ
住所 東京都渋谷区笹塚3-13-15
営業時間 11:00〜15:00(ランチ)、17:00~22:30(ディナー)
定休日 水曜日

執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24

▼ランチタイムもそうだが、ディナータイムには酒好きの地元客でにぎわうという。羊のホルモンと干した米を炒めた「ブータンチウラ(700円)」は酒に絶対合うだろうなぁ……。タイチャーハンやガパオライスといったタイ料理もラインナップしている。