世界で一番有名な探偵、シャーロック・ホームズ。彼の友人であり相棒であり記録係でもあるジョン・H・ワトスンの、お気に入りであるという「マリガトーニースープ」を購入できることを知った。
かのワトスンくんと味を共有することができるだなんて、えらい時代である。急ぎ入手し味わってみたところ、レトルトでありながらレストランで出てきても、何ら違和感のない美味しさ。
こんなに美味しいならば自分でも作れるようになりたいなと、ハドスン夫人気分で試してみたので、その結果をご覧いただきたい。
・料理本を買うと付いてくる
件(くだん)のスープは『シャーロック・ホームズ家の料理読本 復刻版』を購入する際に “有償特典付き” を選択すると、付いてくるというもの。単体での販売は行っていない。
過去に出版された書籍で既に在庫がなく手に入りにくい名作を、株式会社書泉と出版社、著者と協力して重版復刊する企画「書泉と、10冊」の一環とのこと。
故に、書泉グランデ(東京都千代田区神田神保町)では店頭販売があるようだが、地方暮らしの身としてはネットで購入するのが早かろうとポチっとしてみた。送料別で2530円だ。
シャーロックホームズシリーズにはちょこちょこ飲食シーンが出てくる。その多くが、彼らの住むベーカー街221Bの大家でもあるハドスン夫人が作ってくれるもの。
『シャーロック・ホームズ家の料理読本』も、夫人が引退後に彼らの好物のレシピを思い出とともに綴ったというていの内容になっている。
そこにマリガトーニ―スープのレシピも記されているので、後ほどそれを参考にスープを作るとして、まずは特典として同封されていたレトルトパウチを開けてみよう。
「ワトスンくんのお気に入りマリガトーニ―スープ~カレー味の羊肉スープ~」は、その字面から大体どのようなスープであるかが窺えるが、検索すると南インド料理発祥のスープであることが判明。
日本で言うスープカレーのようなもの、だろうか。湯せんして開封すると、ぶわっとスパイシーな香りが飛び出してきた。スプーンですくうと大きな肉の塊と玉ねぎなど、少しの野菜が入っていることがわかる。
口に入れると思いのほか馴染み深い系のカレー味。日本カレーよりは、ややクローブとクミンが効いているだろう。とは言えスープだけであれば、多くの人が好む味であると思う。
ただ羊肉を使っているので、臭みなどは全くなかったが、クセはある。しかしそのクセの部分がとても良くて、エキゾチックさを醸(かも)し出していて美味しい。
マリガトーニーははじめて食べたが、このスープのポイントは恐らくこの肉なのだろうと感じた。牛でも鳥でも豚でもなく、羊であるところが大事なのではないだろうか。
・羊肉とカレー粉さえあれば
そんな訳で羊肉さえあれば自分でもできそうな気がしたので、作ってみることにする。レトルトパウチに記載してある原材料と、料理本から察するにソテーオニオンとカレー粉があればなんとかなりそうだ。
羊肉の臭みですべてを台無しにすることだけは避けたかったので、ちょっと良い肉を取り寄せて、いざ実践である。
料理本を見ると特定の会社のカレー粉やカレーペーストが挙げられていたが、そこまでそろえることは難しかったので、身の回りにあるもので記憶にある味を頼りに作っていく。
まずは羊肉を下茹でして、アクを取る。しっかりとアクが出なくなるまで、取り切るのが良いだろう。
次に玉ねぎをよく炒め、しんなりして来たところですり下ろしたニンニクを投入。塩こしょうをして、クローブなどのスパイスを適当に加える。
香りが立ってきたらカレー粉をパラパラとして、水を入れる。沸騰したところでひと口大に切った羊肉をドボんだ。リンゴピューレもあれば良かったのだが、生憎(あいにく)ちょうど良いものがなかったので、今回はパス。
ふつふつと沸き立ってきたところで、ほんの少しレモン汁を垂らす。味見をしながら塩やほんの少しのコンソメを加えたりして、ひたすら煮込んで完成だ。
やはりカレーを作る工程とほぼ変わりがなく、しかし香りは先に食べたマリガトーニーそのもの。急ぎ食べてみたところ、味も結構近しいものになっていた。
羊肉からしっかり旨味が出ているので、ほんのり特徴のあるカレースープに仕上がっている。自分で作るとどうしても肉が多めになりスープ感が薄れてはいるが、味は良い。
うまく下処理をした羊肉とカレー粉さえあれば、本場の味そのものかどうかわからないが、ワトスンくんのレトルトパウチに近づけることは判明した。満足だ。
『シャーロック・ホームズ家の料理読本 復刻版』にはこのほかにも、ホームズやワトスンゆかりの味が多数載っている。しばらくはそれらを順番に作って楽しむことにしたい。
参考リンク:【有償特典付き】新装版 シャーロック・ホームズ家の料理読本 マリガトーニースープ(カレー味付けの羊のスープ)」付き、楽天市場
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.