つい先日、群馬県の高崎駅周辺をブラついていたところ、ふと趣(おもむき)のある “蔵” が目にとまった。ビルやマンションの間から顔を覗かせる古風な佇まい。そこだけ大昔から時間が止まっているかのようだ。
どうやら中は喫茶店になっていて日本茶を楽しめる様子。蔵の中へ入る機会など滅多にあるものではない。試しにお茶をしながら見学してみるとしよう。
・タイムスリップ気分が味わえる座敷蔵
入店してまず現れたのは石畳の細い通路。年代物の木製家具がいたるところに置かれている。一気に100年くらい過去へタイムスリップしたような気分。
ひんやりとしていて無音に近い静けさが漂っている。
なんとも不思議な空間だ。お店の人に案内されて歩みを進めると……
重厚な扉がドーンと出現。観音開きの分厚い扉は近くで見ると迫力満点。これぞ蔵って感じだ。
扉の奥に見えるのが喫茶室とのこと。ここから入室するのかと思ったが、出入り口はまた別にあるらしい。
さらに通路を進み今度は座敷に上がっていく。
途中に日当たりのいい縁側があったりして気分は上々。
そして、もうひとつの観音扉を抜けると……
クラシックな喫茶室が目の前に広がった。和洋折衷のレトロな空間。まるで旅館の客室にいるかのようだ。
ここが外から見ていた蔵の内部か……外観も内装も風情があって実に素晴らしい。
・本格的なお茶体験
席に着いてメニューをチェック。……日本茶の種類が豊富。ひとつひとつに味の解説が添えてあるぞ。
日本茶に詳しくない筆者にとっては嬉しいポイント。
今回は『玉露(お菓子つき650円)』を注文。運ばれてきたお盆には器がたくさんのっていて賑やかである。
柿を模した和菓子は見た目がとても可愛らしい。食べるのがもったいないほどのクオリティだ。
ほんのりと甘くて心が和む……。舌に甘さが残っているところで玉露をいただくとしよう。
まろやかな口当たりで苦味・渋味は控えめ……飲みやすくて優しい印象を受ける。
上品な緑茶という味わいで非常においしい。
お茶はセルフサービスでおかわり自由とのこと。
別のテーブルに用意された茶道具を利用していくようだ。
茶釜や柄杓(ひしゃく)などがあって結構本格的。茶道家の気分が楽しめそうでワクワクする。
茶釜から熱々のお湯を汲み上げたら、「湯冷まし」という器へお湯を移す。
お湯を少し冷ますことによって、お茶がおいしくなるのだそうだ。
冷ましたお湯を急須に注いだあと、お茶を淹れればできあがり。2杯目以降も味は変わらず美味であった。
急須に残った茶葉は味噌ダレにつけて食べるらしい。いままで茶葉を口にしたことはなかったが、実際に頬張ってみたら意外と……イケる。
柔らかくなった茶葉はシャキシャキとした食感。あまじょっぱい味噌ダレとよく合う。苦味はほぼ感じられず、なかなか美味である。
お茶を飲んだあとに茶葉まで食べるとは驚きだったが、日本茶の魅力に触れることができていい経験になった。蔵の中は雰囲気が抜群にいいし、本格的なお茶を楽しめて大満足。
高崎駅に降り立った際は、蔵の喫茶店「棗(なつめ)」に足を運んでみてほしい。心地よい静けさの中で、温かい玉露を味わうひとときは格別だぞ。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名 棗
住所 群馬県高崎市宮元町223
時間 11:00〜17:00(変動あり)
休日 月曜日・火曜日・水曜日
参考リンク:Instagram @kuracafe_natsume
執筆:古沢崇道
Photo:RocketNews24.
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