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人生で初めて「朝マック」を食べたら、自分の中の「ランキング」が瞬時に崩れた

2023年11月15日

筆者は生まれてこの方、「朝マック」を食べたことがない。かれこれ30年以上に渡って未体験である。なかなか都合が合わなかったり、どうにも早起きが苦手だったり、なんだかパンの気分ではなかったりと、様々なのっぴきならない理由で機を逸し続けてきた。

そうなってくると、「ならばもう食べるまい」と妙な意地を張りだすのが人間の性である。が、最近になって、その意地を焦りが上回り始めてきた。己の中のマクドナルドに永遠に朝が来ないまま老境を迎えることを想像した時、言い知れぬ不安が心に湧いたのである。

一応断っておくと、マクドナルド自体は好きである。愛してさえいる。ただ「朝マック」に対して強情になっていただけである。どうせ大した味ではないと、「すっぱい朝マック」理論を展開したりもしていた。

似たようなことを以前にもやっていた気がするなと思い返したところ、数年前にトリュフを初実食した際の記事でも冒頭で「すっぱいトリュフ」じみたことを書いていた。幅広い食べ物をすっぱいと思い込む悪癖が自分にはあるらしい。色々な意味でこのままではまずい。

もはや外出する時間さえ惜しかったため、筆者はデリバリーで「朝マック」を注文することにした。とはいえ「朝マック」のメニューにも種類があり、自分のような稀代の「朝マック」不心得者には、何を選べばよいのか皆目見当もつかなかった。

途方に暮れかけたが、救いを求めて覗いた公式サイトに「エッグマックマフィンは朝マックの定番」と記されていたので、同メニューを注文することで何とか事なきを得た。おそらくこの国で最もマクドナルドの公式サイトに感謝した人間が筆者である。



ともあれ、いよいよもって初対面と相成った。見慣れたバンズではなくマフィンに挟まれた、ベーコン、チーズ、たまご。「朝マック」を良く知る者にとっては馴染み深い光景なのだろうが、30年以上昼と夜しか知らなかった者にしてみれば全くの新メニューにも等しい。

何なら今が11月ということもあって、やや遅れてやってきた月見バーガーの新作のようにも見える。しかし主にマフィンから放たれる違和感はすさまじく、明確に趣きは異なっている。

初めてマクドナルドの「朝の顔」を目の当たりにした動揺は想像以上だったが、その動揺は好奇と表裏をなしていた。そもそも「朝マック」が気になっていなかったわけではないどころか、膨れ上がった関心を覆い隠すように意地を張っていただけである。



一体どんな味なのか。その問いに対する答えもまた、想像以上だった。多くの人々に支持されていなければ「朝マック」という制度はここまで長続きしていないわけで、ゆえに美味しいことはわかっていたのだが、それにしても鮮烈だった。

誇張抜きに、とても美味しい。嘘偽りなく、一口食べた瞬間に、エッグマックマフィンが「序列」を軽々と突き崩していくのを感じた。序列というのはすなわち、筆者が思うマクドナルドのメニューランキングだ。

どのメニューが何位かについては余計な争いの火種になりかねないので言及を避けるが、あえてこれだけ書かせてもらうと、個人的には件(くだん)の月見バーガーよりこちらの方が好きだ。パティもなければソースもないにもかかわらず、何故ここまで美味しいのか。

いや、だからこそだろう。弾力に富んだマフィンと、歯触り良く焼き上がったベーコン、舌に絡むとろけたチーズ、みずみずしく柔らかなたまご。それらを絶妙な具合の塩味が貫いている。最低限の具材に最低限の味付けが掛け合わされ、最大限に味覚を喜ばせてくれる。

憎らしいくらいのシンプルさが、心を震わせてやまない。美味しさのあまり、もっと早く出会えばよかったという後悔も湧かない。30年以上の空白は、この出会いを濃く彩るための伏線だったのではないかとさえ思う。



これほど「朝マック」に興奮している自分に自分でも驚いているし、読者の方々も昨今においてこれほど「朝マック」に熱を上げている記事に驚いているかもしれない。もし筆者と同じく「朝マック」未体験の方がいたら、ぜひとも一歩を踏み出してみてほしい。

殻を破って浴びる「初めての朝」の陽光は、とてつもなくすがすがしかった。そして「朝マック」は、決してすっぱくなどなかった。優しく、温かな味がした。

参考リンク:マクドナルド公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

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