都心の和室に泊まろう! 和を感じられる昔ながらの旅館が「訳ありプラン」で超特価! という広告をネット上で発見した。どうやら東京都港区にある創業100年超えの老舗旅館の1室が、ある事情によって激安価格で泊まれるらしい。大人1名1泊6000円とのこと。
セレブな街として知られる東京都港区で1泊6000円。畳敷きの和室、男女別の大浴場付きで1泊素泊まり6000円って……そんなもんどう考えたって安い。安すぎて怖い。というわけで「訳ありの理由」を確認してから予約。どんな旅館だったのかというと……
・春日旅館
JR田町駅、もしくは三田線・浅草線の三田駅から徒歩7〜8分。大江戸線の赤羽橋駅なら、もうちょい近くて徒歩約5分。東京タワーが美しく見える桜田通り沿いに「春日旅館」という名の明治40年(1907年)から4代、110年以上続く旅館がある。今回の目的地だ。
高層ビルやマンションが立ち並ぶ通り沿いにひっそりと佇む春日旅館、到着したのは20時半過ぎ。表玄関は綺麗に改装されていて古さはそこまで感じなかった。玄関の戸を開けると……
きちんと並べられたビニールスリッパ、全国鉄道指定旅館の証、公衆電話と随所に懐かしさが漂っている。港区というより地方の旅館に来たかのような昭和風情。駅前の便利なビジネスホテルも良いが、たまにはこういう静かな旅館にも泊まりたい。なんだか安心感がある。
・訳ありプラン
チェックイン手続きを済ませた後に館内を案内してもらった。大浴場は1階、洗面所とトイレは共用、21時以降は裏玄関から出入りするらしい。それでは……ということで、いざ客室へ。今回泊まるのは入口横の階段を上がってスグの部屋である。
あらためて「訳あり」についての説明はなかったが、実はこの客室……
…………
鍵がないのだ。
・客室
プラン名は「訳ありプラン 都心の宿に泊まろう / お部屋に外鍵がないため超特価。貴重品はフロントに」である。くり返しになるが、大人1名1泊素泊まり6000円!
一応、内側からは鍵をかけることができるので部屋にいる間は安心。外出時や風呂、トイレなどを利用する際には気をつけなければならない。
「訳あり」といっても理由は様々。眺めの良くない部屋やチェックイン時間限定など、理由に納得できれば全く問題ナシ。貴重品の管理を自分でする代わりに安く泊まれるならお得だと思った。和室のシングルルーム(4.5畳)は清掃が行き届いていて気持ちが良い。
部屋には小さなテレビ、エアコンがあって、大・小タオルと歯ブラシ、浴衣も用意されていた。ただ、誰かが廊下や階段を歩けば足音が聞こえるような環境なので、テレビを利用するなら音量に注意が必要だろう。
せっかくだから館内を散歩してみる。建物が持つ歴史と風格はそのまま。歩くたびにギシギシと音を立てる廊下は今はもう珍しい。少し薄暗いので、もしかしたら子供は怖がってしまうかも。夜中に田舎のおばあちゃん家を探検しているような気分だ。
……思ったよりも広い。ぐるぐる歩き回って共用の洗面所とトイレの場所を確認。やはり隅々まで手入れが行き届いていて、館内は清潔感抜群。たしかに古いかもしれないが、ボロさは全然感じない。
・大浴場
探検を終えて大浴場へ。洗い場は6つ、浴槽は10人くらい入れる大きさ。タイミング良く貸切でのびのび浸かることができた。聞けば、館内にはもう1つ小さなお風呂があるらしい。どちらも利用は23時まで。朝はシャワーの利用が可能。
・旅館といえば硬い枕
さあ、あとはもう寝るだけ。枕も昔懐かしい硬いタイプだ。頭と首にガチッとフィットする感じが逆に新鮮。この硬さで枕投げをしたらケガ人が続出するだろう。そんなことを考えながら眠りについたのだった。
・チェックアウト
チェックアウトは10時。素泊まりだったのでシャワーを浴びて早めに出発。宿を出ると、目の前には東京タワー。朝早くから慶應生やビジネスマンが通りを行き来していた。やはり外は大都会だった。
そんなわけで都心の宿に安く泊まりたい方はもちろん、昔懐かしい旅館に泊まりたい方も春日旅館をチェックしてみてほしい。場所が場所なので「旅館の存在は知っていたけど泊まったことはない」って人も多いだろう。静かにゆったりと非日常の世界を満喫できるのでぜひ!
・今回ご紹介した施設の詳細データ
名称:春日旅館
住所:東京都港区芝3-43-18
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
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