「来年の話をすると鬼が笑う」とは言うが、文具好きにとって9月〜10月は手帳のシーズンである。
文具店でも書店でも、たくさんの種類の手帳が販売されている。なかでも個性があふれるのが、書店で売っているプロデュース系手帳ではなかろうか。
プロデュース系手帳は「願いを叶える手帳」とか「お金に愛される手帳」のような、テーマにそってインフルエンサーや専門家などが企画し、読み物ページもある手帳……とでもいえばいいだろうか。
去年は「阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳 」を紹介したが、今年も奥深い手帳の世界をのぞいてみたいと思う。
今回紹介するのは「白は200色あんねん」の名言でおなじみ、アンミカ氏がプロデュースする『ポジティブ手帳』(小学館)である。こちらは毎年完売するほど人気のある手帳らしいが……!
・アンミカのポジティブ手帳
ポジティブ手帳の正式名称は「365日、アン ミカ思考で幸運体質! ポジティブ手帳2024」 価格は1980円(税込)。
去年紹介した「阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳 」のテーマが脱・ポジティブだったのに対して、こちらは正面きってのポジティブである……!
しかしポジティブってのは、私のようにネクラな人間にとってはときに「強すぎる」ワードでもある。自分のネガティブさがポジティブの光によって際立つような気がしてしまうというか。羨ましい反面、前向きさが眩しいのだ。
ポジティブの権化のようなアンミカ氏が作った手帳ってことは、そこらじゅうにアンミカ氏の名言などが散りばめられた手帳なのかな? と思いつつ手に取った。
・いい意味で思ってたのと違う!
最初に書いてあったのは、この手帳を作った理由。
アンミカ氏は自分で手帳を手作りしていたそうで、そこにスケジュールなどの他に「季節ごとの健康法をメモしたり、周囲の方から頂いた良い言霊を書き留めたり、日々、目から良い気を取り入れるように心がけ」ていたという。
このまま、日々の心がけみたいな話が続くのかな……と思っていたのだが、次のページでいきなり「2024年の星回りの話」が始まったので驚いた。本格的な西洋占星術の話である。一瞬、別の手帳を買ったかと思うほどガチである。
ちなみに、私は以前占い系の編集プロダクションで働いていたことがあるのだが、読んでみて思ったのは「アンミカ、けっこう占いガチ勢だな」ということ。占いの知識がちゃんとある人の書き方なのだ。いったいこれはどういうことなのだ……?
・独特だった月間カレンダー
さらに、月間カレンダーを見ると六曜(大安、仏滅、友引、赤口、先勝、先負)や祝日の記載のほかに、
・天赦日、一粒万倍日、不成就日
・満月・新月(月食・日食)
・土用入りの日
までが記されているのだ。
日本の暦や二十四節気、月の満ち欠けなど、とにかく縁起に関するものはすべて網羅されている……と言っても過言ではない。
その中でふと気になったのが「万人注意日」という ⚠ のマークが記されている日である。
アンミカいわく、この日は「私が日頃から気にしている、特に気をつけて過ごす日」であり「9日に1度訪れる」らしい。
9日に1度ってけっこう頻度が高いのだが、なかには大安や一粒万倍日などの吉日と重なっている日もあり、ロジックがよくわからない。アンミカ独自の方法で導き出しているのだろうか。
アンミカは心の持ちようだけでポジティブなのだとばかり思っていたが、縁起とか星まわりとか運気に注意していることがかなり意外だった。
・親切なマダムのような週間ページ
そして、その意外性は週間ページを見てさらに深まる。
週間ページの構成は左側がスケジュールで右側がメモスペースになったレフトタイプ。
左上に、アンミカの今週のポジティブワードが書いてある。
「私たちは奇跡を毎日生きている。当たり前なんてない! 感謝やで」
これこれ、私の想像するアンミカのポジティブ手帳っぽさはコレである。思わず心の中で「キター!」と叫んでしまった。
そして、右側のメモページには「Today’s Good & Happy」という、今日の良かったことを書く欄と……、「二十四節気コラム」があるのだ!
「二十四節気コラム」は、たとえば「大寒」という1年でもっとも寒い時期は……
「冬の不養生は花粉症の要因にもなるので、冬野菜、豚肉、うなぎ、すっぽんなどを食し養生を。舌が紫色だと体が冷えているサイン。足湯で寝付きをよくし、ゆらゆら金魚運動で便秘を予防。」
といった季節に合わせた食生活や体調などのアドバイスが細かく書かれているのだ……。アラフォーになってから季節の変わり目になると体調を崩しやすい私はまじまじと読みこんでしまった。
占いやスピリチュアルだけかと思ったら、養生方法まで。情報量がすさまじい。会うと体調を心配してくれて、季節の果物などをおすそ分けしてくれる近所のおばちゃんみたいである。
アンミカ……一体何の人なんだっけ?
・2024年の目標や「7つの光の木」なるワークも
ちなみに、年の始まりには2024年の「今年やりたいこと、なりたい私」を10個書く欄があり……
半年後には、年のはじめに立てた目標がどのくらい達成できてるかの確認ページもある親切設計。だいたい年のはじめの目標、この時期になったら忘れている。
さらに悩んだときに自分の本音にアプローチするための「7つの光の木」なるページも用意されていた。
・占いも養生アドバイスも濃い
「ポジティブ手帳」とあっさり銘打っているが、全体として、アンミカが今年の目標を聞いてくれて、星の動きとか暦でいい日悪い日を教えてくれ、季節の変わり目に体調の心配もし、悩んだときの解決方法を教えてくれ、ポジティブになれるメッセージをくれるという、至れりつくせりの内容だった。
言うなれば占い師と親切なおばちゃんとコンサルタントが一体化したような手帳であったのだ。なるほど。
それにしてもアンミカのこの知識量は一体……? と思って、巻末のプロフィールを見てみたら「漢方養生指導士 中級」の資格のほか、めちゃくちゃいろんな資格を持っていて、子供の頃から占い好きだということがわかった。
アンミカ自身も幼少期は苦労していたという。これまで幸せになりたくて、占いを読んだり、資格を取ったりいろんな努力をしてきたんだろうな……と思わせる内容であった。意外なほどタレント色は薄め。
心身ともに健康になりたい人、運気を味方につけて目標達成したい人にはオススメの濃い一冊である。
参考リンク:小学館
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
▼巻末の2025年カレンダーにひっそりアンミカの誕生日が……!
▼ツボまで……
▼カレンダーに書かれた二十四節気や六曜、占星術の星の移動についての解説つき。便利だな。