「来年の話をすると鬼が笑う」とは言うが、文具好きにとって9月〜10月は手帳のシーズンである。
文具店でも書店でも、たくさんの種類の手帳が販売されている。なかでも個性があふれるのが、書店で売っているプロデュース系手帳ではなかろうか。
プロデュース系手帳は、「願いを叶える手帳」とか「お金に愛される手帳」のような、テーマにそってインフルエンサーや専門家などが企画した手帳……とでもいえばいいだろうか。だいたいビジネス系・恋愛系・スピリチュアル系に大別されていて、読み物ページなどもあるのが特徴だ。
そんな中で、異色ともいえる阿佐ヶ谷姉妹プロデュースの手帳が発売されていたのである!
・「脱・ポジティブ」をうたう手帳
手帳を選ぶときって、1年の中でも一番気合が入るときのような気がする。テーマを掲げたプロデュース系手帳って
運気あげるで〜!
いい女になって愛されるで〜!
できるビジネスパーソンになったるで〜!
みたいな願望の圧が強めな感じがする。活用できたらきっと便利だとは思うのだが、私のようなしょぼくれ人間からすると、ちょっと眩しすぎる。
『阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳』(1980円)は、そんな圧が強めなプロデュース系手帳の本棚で、のほほん……と独自のオーラを放っていた。
テーマは「脱・ポジティブ」。とのことで、なんだかホッとする……。
公式サイトによると、今後の目標や意識の高い名言、ポジティブな言葉を書かなくたって別にいいし、ありのままの自分を楽しむヒントが隠されているらしい。
私はドラマにもなった『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』というエッセイが大好きで、それを読んで以来、阿佐ヶ谷姉妹のように年を取れたらいいなあ……なんてひそかに思っているクチである。これを使えば、阿佐ヶ谷姉妹みたいになれるかもしれない……。
・オーソドックスながらこだわりが
阿佐ヶ谷姉妹もふだんから手帳を使っているらしく、この『阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳』はふたりのこだわりが細かい所につまっているらしい。
・年間ページ
・マンスリーページ
左側に買い物メモなどが書ける欄がある
・週間ページ
左が日付、右が自由欄のレフトタイプで、阿佐ヶ谷姉妹の一言が散りばめられている
と、スケジュール管理のページはわりとオーソドックスで使い勝手が良さそう。そして、細かいこだわりが感じられるのがおまけページたちである。
・スケジュールシール
ゆるい手書きイラストがかわいい。病院、歯医者、美容院のシールがあるのがいいね。
・月替りの振り返りページ
こちらは阿佐ヶ谷姉妹のプチエッセイつき。
月の初めに好きなものベスト3を書く欄も。(好きなアウターベスト3って!)
・ほしいもの&やりたいことリスト
・贈り物リスト
お付き合いで贈り物したりするので意外と大事。プレゼントって探す時に限っていいものが見つからなかったりするから、メモっとくとよさそう。
・アドレスページ
・パーソナルデータのページ
生年月日などのほかに、「家具の寸法」を書き込む欄も…! 右側は西暦と元号、干支の一覧もある。
・表紙は差し替え可能
ちなみに、表紙の色はピンクじゃなくてエメラルドグリーンに変えることも可能。なんという心配り。
・記入例を見て脱力
で、この手帳をどんなふうに使えばいいのかという、阿佐ヶ谷姉妹なりの書き方例があるのだけど……。
月間ページこそ予定などが書かれているものの……
週間ページの方は、その日にあったちょっとした出来事をメモしている。
その内容は……
1月3日 箱根駅伝をずっと見る
1月4日 整骨院によれなかった
1月5日 かき揚げを食べすぎて胃がもたれる
1月8日 ミホさん、七草粥を食べずに寝る
な、なんてゆるいのだ……!
手帳を買うときはいつだって「最高の1年にするぞ」と思ってしまうんだけど、気合を入れれば入れるほど、続かなかったことをふと思い出す。
インスタグラムでかわいくデコった手帳の投稿なんかを見ると、私もつい手帳の中の記録をキラキラさせたくなってしまう。誰に見せるわけでもないのに、ついカッコつけたくなったりして。
だけど、このくらいでいいのかもしれない……。
・私ならどう書くか
思えばロケットニュース24編集部の日常はおもしろであふれている。手帳は12月スタートだけど、私がもし先週の一言を書くとしたら
10月3日 近所のフルーツ屋でシャインマスカットを1200円で購入
10月4日 壊れた給湯器の入れ替え。やっと家の風呂に入れる……。
10月5日 P.K.サンジュンとGO羽鳥が亡くなったアントニオ猪木の話で盛り上がっている。P.K.サンジュンいわく羽鳥さんは猪木のモノマネが下手らしい。
10月6日 ライターさんたちが会社に来てくれた。格付けチェックでニューオータニの1万1000円の高級モンブランを食べる
10月7日 寒すぎて今季初ストーブ
とかになるだろうか……。それに、意外と日々のどうでもいいことって、あとから見ると面白い。ふりかえると、実は幸せってしょうもないことの中にこそあるのかもしれない。
・なんでもない瞬間の面白さを大事に
女芸人ナンバーワンを決める2018年の「THE W」で阿佐ヶ谷姉妹が優勝したときに、なんとなく嬉しかったことを思い出す。
私自身、そのころ姉妹サイトのPouchで記事を書きながら、年を取ると「女のおもしろ」ってけっこう難しいんだよなあ、などと悩んでもいた時期でもあった。阿佐ヶ谷姉妹のネタを見て、自虐ではない、等身大の淑女としての笑いに未来が開けたような気がしたというか……。
あの彼女たちらしい面白さって、日常の中にヒントが隠されているのかもしれない。
というわけで、2023年は阿佐ヶ谷姉妹の手帳で「おおむね良好」な毎日をめざすのも悪くないかも。しょうもない日々がいとおしくなる、そんな手帳なのである。
参考リンク:永岡書店
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
▼ペンさしがついてるのもありがたいですね