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【コラム】予備知識ゼロで「2.5次元舞台」を観に行ってみたら衝撃を受けた

2022年6月18日

人気のアニメやゲームが生身の人間によって舞台化される「2.5次元舞台(2.5次元ミュージカル)」。近ごろのヒット作はアニメ化と2.5次元化がセットになっているような印象すらある。

斎藤工や中村倫也、志尊淳のように2.5次元舞台への出演からスターダムへと駆けあがった俳優もたくさんいるとか……。

とはいえ、アニメやゲームと縁遠い人間にとっては完全に未知の世界。そもそもアニメの実写化って賛否両論おこりがちなのに、なんで2.5次元舞台はそこまでファンを熱狂させるのか? ずっと気になっていたので、実際に観に行ってみた!


・2.5次元は完全なる初心者

参考までに私の情報を入れると……

・漫画は読むけど、最近のアニメやゲームには疎い
・通常の舞台は観に行ったことが何度かある
・2.5次元は大昔ネットで話題になった某ミュージカルの動画を見た程度

2.5次元に関しては、初心者中の初心者である。ファンの間では当たり前のことを書いてしまうかもしれないが、ご容赦いただければと思う。

今回観に行ったのは『舞台 薔薇王の葬列』という、15世紀イギリスの薔薇戦争をモチーフにしたダークファンタジー作品。原案はシェイクスピアの『ヘンリー六世』という作品。先入観ゼロで純粋に舞台を観るために、作品や演者に関する予備知識はほぼナシでいってみた。


・見る前の不安

ぶっちゃけて言うと、2.5次元舞台に関しては15年ほど前にニコニコ動画で話題になった某ミュージカルの印象が強かった。それは、まだ2.5次元の黎明期の作品ということもあってか、セリフまわしや滑舌の悪さで「空耳が多い」ことで有名になった動画であった。

それを見て実感したのは、2次元の世界は完璧なファンタジーゆえに、実写化に違和感があると人は現実に戻されて冷めてしまうということ。

ついでにいうと、私は音楽ライブなどでも、没頭できずに現実に引き戻され「スン……」となるときがある。どこか斜に構えていて、底意地の悪い性格なのだと自覚している。

そんなこんなで見る前は、2.5次元独特の世界観やお約束のようなものについていけなかったらどうしよう……と不安だった。


・2.5次元すげえ……

結論からいうと、私の心配ごとは完全に杞憂に終わった。最初の10分くらいは世界観を飲み込むのに必死になったが、途中休憩を挟む3時間ものステージを、予備知識ゼロでも私は最後までバッチリ楽しめたのだ!


1. 演者の顔とスタイルが良すぎる

「出演してるのはイケメンと美女たち、んなこと知っとるわい!」と言われそうだが、これが実際に見てみると想像以上なのだ。よく美男美女に「少女漫画から抜け出してきたような」という表現をするが、顔だけではなくスタイルも、本当にその言葉が似合う人ばかりなのである。フィルターアプリもかけずに、生身の人間が現実離れした美しさを保ってることに驚いた。

ちなみに、写真などで見るとちょっぴり過剰にも見えるメイクは舞台で観るとめっちゃ映える。


2. 演者のアクションが華麗すぎる

ただ美男美女でスタイルがいい……というだけではなく、恐ろしいほど動きが美しかったのである。今回は中世イギリスを舞台にした作品で、めちゃくちゃ動きづらそうな衣装なのに、アクションやダンスの動きは俊敏。殺陣のシーンが多かったのだが、その華麗さたるや、まるでアニメのよう……。そして息切れもしないので、相当トレーニングしているのではなかろうか。

マントをまとったキャラが多かったのだが、マントの扱い方すら美しかった。たぶん、私だったら大事なシーンで剣がマントに引っかかったり、アクションの途中で階段から落ちたりとか、無様な姿をさらしてしまうと思う。演者の運動神経のすさまじさと、自分の魅せ方にたまげた。


3. 舞台のおおげさなセリフ回しが漫画の世界と合っている

たとえば、実写化ドラマでは2次元のキャラを「現実の人間」として自然になるよう演技する。ところが漫画みたいな喋り方をする人なんて現実にはいないから、うまくいかないと不自然さが生まれる。

いっぽう、2.5次元舞台は「人間を2次元に近づけようとしている」という印象を持った。現実感のない漫画のセリフと舞台ならではの大げさなセリフ回しがものすごく相性がいいので、不自然さを感じづらい。この相性のよさには驚いた。


4. 音響や照明を駆使した世界観の演出

通常の舞台だと、ピンスポットが当たるとか暗転する程度で、そこまで大げさに照明を使うことはないと思う。2.5次元舞台では、2次元の世界を舞台上に作り出すために、多彩な照明演出があった。

戦禍や怒りのシーンでは真っ赤な照明が鋭いほどステージに当たったり、宿敵に刀を突き立てる瞬間に会場が真っ暗になったり、はたまた薔薇の花がはらはらと散ってきたり……。それが漫画的な表現とものすごくマッチしていて美しかった。


・現実とは思えぬ3時間だった

私がかつて動画で観たものとは比べ物にならないほど、すごい舞台になっていた。

アニメーションの世界を、舞台の上で忠実に再現しようとしている……といっても過言ではない。生で観るという迫力もあいまって、そこだけが本当に物語の中のようだった。もし自分の好きな作品が、こうして舞台化されたらそれはみんな夢中になると思う。

人に夢を見せるというのは、すごく難しいことだ。美しい夢の世界の裏にはきっと血の滲むような努力があるのだと思う。なにかにハマっている人はよく「尊い」という言葉を褒め言葉で使うが、私もたしかに夢の世界を作る人達の努力に「尊さ」を感じた。

よくよく考えてみたら、日本の舞台って独特だ。歌舞伎は男性が女性を演じているし、宝塚歌劇は女性が男性を演じている。どちらも「性別を越境」している。いま生み出されている2.5次元舞台は、2次元のキャラクターを3次元の人間が演じていて、今度は「次元を越境」しているのだから。

参考リンク:舞台 薔薇王の葬列
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.

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