知らない番号からの着信ってちょっと怖い。なんだこの番号? 先日、そんな着信があった。心当たりがなくとも、仕事柄知らない番号からかかってくることも多いので出てみたところ相手はこう名乗る。「P(会社名)のニシダ(仮名)です」と。なんだそれ? 会社名も相手の名前も聞いたことがない。
話を聞いてみると不動産の営業だった。「興味ないです」と答えたところ、「システムを知ってもらうためにかけている」と食い下がる彼。いや、不動産より、私(中澤)の番号をゲットしたシステムの方が気になるんですけど! そこでニシダさんにインタビューしてみた。
・インタビュー
目的を隠しても回りくどくなるだけなので直球で聞いてみよう。この番号、どうやって知ったんですか?
ニシダさん「営業の名簿を見てかけさせていただいております」
──ふむ。どうやら、名簿なるものが存在するらしい。しかし、当然ながら私はそんな名簿に個人情報を提供した記憶がない。その名簿ってどうやって手に入れたんですか?
ニシダさん「名簿会社から購入しました」
──めちゃくちゃ正直だ。ニシダ良いヤツじゃん。別に嫌な感じもないし、2000万円くらい貯まったらニシダさんからマンションを買うのもいいだろう。
それはさて置き、名簿会社というものが存在して、勝手に私の個人情報を売り捌いていることがサラッと判明した。購入している本人が言うんだからこれは確実だろう。もちろん、電話番号を売っていいよと言った覚えもない。
・名簿会社の名前を聞いてみる
ニシダさんの会社は不動産という形あるものを扱っているが名簿会社って何やねん。人の電話番号売るだけで食っていけるものなのか? っていうか、私のものを売って利益を挙げてるんだからマージンくれても良くない?
なんか楽そうだし就職したいわ。そこでニシダさんに、私の情報を購入した名簿会社の名前を聞いてみたところ……
ニシダさん「すみません。弊社では開示しない対応を取らせていただいております」
──との答え。「開示しない」って、売られてるの私の個人情報なんですけど。それ、個人情報保護法的に大丈夫なの? なんかニシダさんが一気にグレーな存在に思えてきたため、弁護士に相談してみることにした。
・違法じゃないのか?
話を伺ったのは、平野総合法律事務所の弁護士・古川亮さん。こういった個人情報の売買って法律的には問題ないんでしょうか?
古川亮さん「個人情報(名簿)の売買自体が直ちに違法というわけではありません。ご自身の個人情報が、中澤様→業者A→業者Bとわたって、今回、業者Bから電話がかかってきたとしましょう。ご自身が業者Aに個人情報を提供した際、
①不動産や投資商品の勧誘といった利用目的に同意しており、②業者Aから第三者に提供することに同意していれば、業者AB間の情報の提供は違法ではありません。
なお、②については、『第三者に提供する場合がありますが、中澤様の求めがある場合には業者Aにおいて名簿からの削除や第三者への提供を停止します。』といった条項がある場合、第三者提供があるのかないのか分からない形で、結果的に同意してしまっているケースもありますので注意が必要です。
いずれにしても、①②の同意がないにもかかわらず、第三者に提供されていた場合には違法ということになります」
・業者を教えてくれない場合
ふむふむ、不動産の勧誘とか同意した記憶は一切ありませんが、何かの登録で細かくびっしり書かれた条項の中に紛れてたら分かりませんね。って、これ、停止を求めようにも大体の場合、業者Aが分からないのでは? 法の目をかいくぐってる感じがしますね。
古川亮さん「電話をかけてきた業者が個人情報取扱事業者であれば(名簿を見て勧誘電話をかけてくるような業者は通常これに該当します)、どこから提供を受けたか記録する義務があります。
しかし、この記録について本人から開示請求があった場合、現在の個人情報保護法では開示義務までは規定されておらず、適切に対応すべきとされているのみです。
そのため、現時点では、電話をかけてきた業者に対して法的に開示を求めることは難しい状況で、結果として、適法な手続きで情報提供されているのかどうか確認すること自体が難しいケースもあります。
ちなみに、来年施行される改正個人情報保護法では、この記録についても開示義務が明記されており、業者の対応も変わってくるのではないかと思います。
いずれにしても、電話をかけてきた業者に対して、保有している中澤様の個人情報の内容や提供元の開示を請求したいということで問い合わせてみてはいかがでしょうか」
──とのこと。来年から法的にアウトになるらしいぞニシダさん。っていうか、現行法でも「適切に対応すべき」とされてるんだから、現状でもグレーだぞニシダさん。まあ、こういう受け答えって会社で決められてるんだろうけど。会社のルールが法スレスレな場合、サラリーマンは辛すぎる。
というわけで、ニシダさんのような人を助ける意味でも、名簿会社には勧誘の名簿から私の名前を消してもらいたい。繰り返すが、不動産投資の勧誘とかの利用目的に同意した覚えはこれっぽっちもないから。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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