ロケットニュース24

【再検証】昨年死別した、生きている化石「アルテミア」を全力の知恵と財力で育ててみる(孵化編)

2021年7月5日

昨年「子どもの頃に学研で育てたカブトエビって、最後どうなったんだろう?」という素朴な疑問から、アルテミアを飼育した。ブラインシュリンプとも呼ばれる小さな水生生物で、かつてブームになったシーモンキーの仲間だ。

結果は過去記事をご覧いただきたいが、筆者は反省した。もっとよく調べたら、もっとよく世話をしたら、長期生存したんじゃないか。

これはその続編である。大人の特権であるGoogle検索とネット通販と資金を惜しみなく投入した、全力の飼育記録だ。


・まずは情報収集

昨年のチャレンジ後インターネットで調べたところ、あるじゃないか、アレやコレや飼育の知恵が! 「こんなに愛好家が!」と思わずほっこりしたが違った。

観賞魚やクラゲの生き餌(いきえ)にするのだそう。生後すぐにエサになる運命のため、大人になるまで育てる例はやはり少なかった。

ちょっと切ないが、昔ペットのハムスターを喜ばせたい一心で、ミルワーム(ミミズみたいな幼虫)を生き餌として飼育していた筆者に人のことはいえない。

ネットの先人から得た知識のひとつ、孵化(ふか)器! 100円ショップのガラス瓶でも孵化は問題なかったのだが、専用の孵化器があるというのでさっそく購入した。塩水を作るのにも、昨年のように食塩を使うような愚行はせず、専用の人工海水のモトを入手したぞ。

孵化器とエアーポンプ(別売)を電源につなぐと適度な水流ができて、孵化を助けるという寸法だ。

昨年余った卵を投入し、24時間待つ。本当は卵も劣化するから、新調した方がいいらしいのだけれど、育て方以外はなるべく昨年と条件を揃えたいからな。

ポンプを起動させると、漂う潮の香り! 部屋がどことなく海くさくなった。これが本格的な人工海水か……! 食塩と全然違うな。


・24時間後

標準とされる24時間を過ぎると、1匹、2匹と幼生がみられるようになった! しかし卵は数百個はあるはずだから、孵化率はかなり低い。卵の劣化や、梅雨寒も影響しているかもしれない。さらに1晩待った。

よしよし、数十匹は幼生が泳いでいる! 給餌目的の場合、水が茶色くなるくらい(幼生の体色は赤っぽい)大量に孵化させるようだけれど、飼育目的の筆者にはこれで十分。

通常水中には幼生、卵のカラ、孵化に失敗した卵が混在する。しかし説明書に従って水流を操作すると、それらが分離されるという仕組み。まさに孵化について考え抜かれた、孵化のためだけのマシン! だれが作ったんだ!!

一般的な用途では、ここで幼生の塩分を洗浄して、ほかの魚のエサに……というところだが、筆者は飼育用の容器に移す。

容器が深いと酸欠になりやすく、ゴミの回収もしにくいという昨年の反省から、浅く広い容器を用意した。「さんそを出す石」なんてものも用意してみたぞ。これで酸欠にはなるまい!

それでは引っ越しを開始する。


幼生の大きさは1mmもない。水中にフワフワと漂う幼生だけをスポイトで吸い取り、別の容器にキャッチ&リリースするという、気の遠くなるような作業が始まった。

あまり強くスポイトでかき回してしまうと、せっかくゴミを分離した意味がなくなる。そーっと、そーっと。

しかも厄介なのが、幼生のサイズが均一ではないこと。大きな個体は天使のように羽根をパタパタさせているのが肉眼でもわかる。一方で「卵のカラかな?」と思うようなケシ粒でも、よくみると「自律運動している!」ということがある。

先に生まれた個体が大きくなるのか、あるいは哺乳類のように、生まれつき強い個体、弱い個体があるのだろうか。


────気がついたら40分が経過。


「あらかた採れたな」と思っても、見直すとまだ動いているのがいる! 「あと1吸いしたらやめよう」と決めるものの、生きていると思えば見捨てられないのが人情。「こいつら採ったそばから孵化してるんじゃ?」と思うようなイタチごっこである。


────1時間経過。


ようやく99%は引っ越しできたと思う。後から孵化する「遅れてきたヒーロー」みたいなヤツもいそうだから、しばらく孵化器はそのままにして、気づいたら移していくことにする。

画像ではまったくわからないと思うが、元気に泳ぎ回っている! 走光性(光に集まる習性)があるそうで、窓側にうようよと大集合して可愛らしい。画像でいうと、白い粒は気泡、茶色くみえる三角形の物体がアルテミアである。

これが布団にわいたダニだったりすれば絶叫モノなのに、自分で育てていると思うと途端に愛らしくなる。現金なものだ。


・1カ月後にこうご期待

さて、最後にエサ問題だ。

昨年のキットに付属していたエサがまだ十分に残っているため、「なにをあげればいいんだろう?」という疑問はない。しかしエサのやりすぎは水質悪化を招き、寿命を縮める最大要因だったと考える。

幼生は生後どれくらいでエサを食べられるようになるのだろう? 生まれたばかりの頃は、親からもらった栄養素で生きられるんじゃないだろうか?

Wikipediaによると「約12時間で卵黄を消費し尽くし、最初の脱皮を行う」とあるので、最初に生まれた個体はもう脱皮の時期。ほんの数粒だけエサを入れておいた。

それでは、これより飼育・観察を始める。繁殖とまではいかなくとも、昨年の3mmを超えるサイズに育てること、1カ月を超えて飼育することを目標とする! 1カ月後にこうご期待。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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