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リニューアルした「JPリゾート 伊豆高原」(旧かんぽの宿 伊豆高原)のリゾートホテル化がガチ! 一足先に泊まってきたぞ!!

2021年3月31日

若い世代や、そうでなくとも人によってはあまり馴染みが無いかもしれない「かんぽの宿」。日本郵政が運営する日本各地のホテル・旅館のことで、2007年の郵政民営化の前までは簡易保険加入者が優先的に安く利用できるものだった。「かんぽ」とは、簡易保険のことだ。

民営化後は誰でも利用できるようになったのだが、経営は上手くいかず、閉鎖が相次ぐ事態に。状況を打開するため、日本郵政は2018年から経営を継続する各地の かんぽの宿の改修に着手した。

中でも「伊豆高原」と「鴨川」は、改修工事に約1年もかけるという力の入れよう。特に伊豆高原の方は、名称まで「JPリゾート 伊豆高原」に変えて、2021年4月1日にグランドオープンするという。はたしてどのような姿になったのか、メディア向けに開催された宿泊取材に参加し、一足先に体験してきたぞ!

・かつてのイメージ

実は小学生の頃に、家族旅行で日本各地にある「かんぽの宿」のうち、島原(休館中)と、鴨川(3月6日にリニューアルオープン済み)に泊まったことがある筆者。90年代の話なので、民営化前のことだ。

どちらも立地はガチに最強レベルで、オーシャンビューで温泉も出る。しかも周辺のホテルと比べれば断然安い(簡易保険加入者なら)。親は高コスパで嬉しそうだったが、金勘定など解さぬ子供だった筆者の印象は、あまりパっとしないものだった。


ダサくてボロい


子供の頃の話なので、記憶はそこまで鮮明ではない。しかし、島原にしろ鴨川にしろ、どこかお役所じみた建築のセンスと、一世代前の老朽化した設備が醸し出す「イケてない」印象は頭に残っている。大手ホテルのキラキラ感や、老舗旅館の雰囲気ある感じと比べると、明らかに見劣りするものだった。

筆者が子供の頃ですらそんな感じだったのだから、昨今ではもっとだったのだろう。各種口コミサイトや個人ブログを見ると、リニューアル前に投稿されたものは、立地やサービス、コスパの良さこそ褒めつつも、設備の老朽化に対してのツッコミがほぼ確実にある。

中~高年層には「簡易保険利用者向け」のイメージが残り、若い世代的にボロいのは致命的。ボロくちゃSNSでも映えないしな。経営悪化も当然の流れと言えよう。

・リゾートホテル化

それがリニューアルを経てどう変わったのか? まずは入り口を入ってすぐのロビーから。以前のは良くも悪くも昭和を感じる。特に塗装がツルツルで白くテカってる柱などに。地元の市役所もこんな柱だった気がする。


それが、壁、柱、照明、床など全てが高級感あるデザインに。そしてパーフェクトにオーシャンビュー。いや、以前もポジション次第ではオーシャンビューなはずだとは思うが、かつては植物で視界が遮られていた。リニューアル後は、まるで窓の向こうがすぐに海になっているかのようなデザインへ。


テラスに設けられた大きな水盤によって、そのまま海とつながっているように見えるという仕組み。宿泊者は、ここで海など眺めながらくつろぐことができる。晴れていれば伊豆大島をはじめとする伊豆諸島の島々も見ることができるだろう。


・大浴場も

水盤を利用して視覚的にラグジュアリー感を演出するテクニックは、大浴場の露天風呂にも取り入れられている。以前はガラスや植物で視界が防がれていたが……


今はこの通り、湯船に入りながら海を見ることができるぞ!


屋内の露天風呂も内装に変更が施されている。かつてはややオープンすぎた洗い場が……


リニューアルによって謎の像が撤去され、洗い場と湯舟の間に仕切りができている。落ち着いて体を洗えるようになったというわけだ。


個人的にこれは評価ポイントが高い。隣で体を洗うおっさんの石鹸の泡とかシャワーのお湯が飛んでこないしな。


・超高コスパ

もちろん宿泊客用の部屋も様変わりした。かつては全59室(和室42、洋室10、和洋室7)だったのが、リニューアル後は55室(プレミアム22室、スタンダードルーム33室)となっている。

スタンダードルームは全4種で、プレミアムルームは全5種となっており、プレミアムルームの方は全て半露天な温泉のお風呂が各部屋についている。部屋でゆっくり温泉を楽しむことが可能だ。

一番お値段が高いのはプレミアムラグジュアリースイート。ベッドルームの隣にリビングルームがあり、もちろんオーシャンビュー。



そしてベランダには温泉の出るお風呂。洗い場はお洒落かつ大胆なガラス張りだ。真下はロビー前のテラスだが、下からはちゃんと見えないようになっているぞ!


このクオリティで、お値段は1人1泊44200円から(通常のホテル同様、その日によって変動)となっている。この広さと仕様でこの値段はコスパが凄いと思う。その辺のホテルなどで同じような部屋に泊まろうとしたら、1泊10万超えもあるだろう。

お値段的には少し安いが、広さ的には一番だというプレミアムデラックススイートも見せてもらった。こちらはベッドルームが2つに


和室と洋室が1室ずつ。その先にはベランダと露天風呂がついている。どうなってんだよこの広さ。ロケットニュースの事務所より広いんじゃないか? ちなみにプレミアムラグジュアリースイートよりもお風呂が少し小さいもよう。お値段は1人1泊39800円から。コスパがマジでスゴい



筆者は今回、これらとは別のプレミアムテラスツインという部屋(1人1泊33200円から)に宿泊させていただいたが、部屋の防音も各種アメニティもベッドの寝心地も、全て家より遥かに快適だった。

先のハイグレードな2種のプレミアムルームと比較すると、部屋のサイズや露天風呂の解放感が、最も大きな体感できる違いだろうか。カップルや友人同士でのちょっといい旅行とかには、コスパ的にも広さ的にも、手ごろでいい気がする。


公式HPではイラストでの間取り図も掲載されているので、そちらも合わせて参考にしていただきたい。

スタンダードルームは22200円からだが、個人的には1万円出して部屋に風呂がついたプレミアムルームがいいと思う。なお、プレミアムルームの中で一番安いプレミアムツインは29900円から。


・夕食は

基本的にかんぽの宿では、部屋ではなく夕食のグレードに応じて値段が変化するシステムだが、「JPリゾート 伊豆高原」では夕食は1種類のみなもよう。約1ヵ月単位で内容を変え、その時々で仕入れたものを利用した創作料理を提供していくそうだ。

なお、連泊する宿泊客に対しては、適宜料理を変えて対処するそう。今回はグランドオープン後の4月1日からの約1ヵ月間で提供される予定のコースを味わわせて頂いた。次のページでは、めちゃくちゃハイクオリティなコース料理をお見せしていくぞ!

参考リンク:JPリゾート伊豆高原郵政民営化委員会(PDF)
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.


・ディナーはコース

夕食は前菜、お造り、煮物、口直し、洋皿、お食事、そして水菓子の順で提供された。順番に写真でお見せしていこう。まずは前菜だ。上段真ん中の「真鯛のムース」と、下段左の「油鰈の味噌焼き」が、個人的には特に美味かった。


そしてお造り。刺身は外せない。アジが2品あるのは、食感の違いを楽しんで欲しいからとのこと。山葵(わさび)は自分ですり下ろすスタイル。


煮物は「金目鯛の煮つけ」。味が染みていて美味いことは、きっと見た目から伝わるだろう。


調理の様子は見ることができる。


そして出てきた洋皿の「牛ロースステーキ」。


ここにきて「お食事です」と、ご飯と止め椀、漬物などが。


最後はデザートでフィニッシュ。一品ずつは見ての通り少な目だが、最終的には程よく満腹になる。お茶が「ぐり茶」なる静岡県産のものらしく、独特の風味で美味かった。なお、仕入れの都合で内容が変わることがあるそうだ。


・朝食はバイキング

翌朝の朝食もお見せしよう。バイキング形式となっており、和食も洋食も幅広く揃っている。


フレンチトーストとおにぎりを主食にしつつ


イカの刺身を食べたりすることも可能だ。選択肢はかなり広い。


バイキング形式というと、感染症予防の観点から心配になる方もいるかもしれないが、その点は徹底されていた。料理を取りに席を立つ際にはマスクの装着がマストとなり、料理を取る際は手袋をはめる。そして料理を取る順路は一方通行。手袋は、手で触れずにはめられる装置が設置されているぞ!


ちなみに窓際の席は眺めが良い。


・コンセプト

施設と食事はおおむねこんな感じだが、もう一つ触れておくべきことがある。それは、「JPリゾート 伊豆高原」に宿泊した際に、近隣で得られる観光体験についてだ。今回のリニューアルについて「きっと、その土地が好きになる」というコンセプトを日本郵政は掲げている。

つまり自社の宿泊施設の売り上げアップだけでなく、周辺の観光も共に盛り上げていこうというスタンスなのだ。具体的には、ジオガイドや近隣の観光施設のスタッフを招き、宿泊者に対して自由参加な「ロビートーク」という形式で、やや積極的な観光案内を行う予定らしい。

今回は城ヶ崎海岸近くにある「ニューヨークランプ&ティファニーミュージアム」から、ティファニーランプの歴史や魅力、簡単な製法についてのトークと


伊豆半島ジオパーク」の伊東ビジターセンターからは、大室山や城ヶ崎海岸など近隣のジオサイトについての地質学的な、また生物学的な見どころについてのトークを拝聴させて頂いた。これらは一例にすぎず、グランドオープン後は多彩な分野の「ロビートーク」を考えているそうだ。


当初はぶっちゃけどちらもそこまで興味は無かった……というか、前者についてはそもそもティファニーランプというモノを知らなかったため、興味を抱く以前の問題で、後者についてはちょっとサイエンスなテンションではなかった。が、いざ聞いてみると結構興味深い

ランプについては普通にサンプルの写真を見ていても綺麗だし、めちゃくちゃ映えそうなので写真を撮りに行きたくなる。また、ステンドグラスの作り方も、素直に「こうやって作るのか」と驚きがあった

ジオ関連については、中々ガイドブックではフィーチャーされていない見どころもあることがわかり、ガイドツアーに参加してみようと思わせるものがあった。個人的には、アニメで見た『ゆるキャン△』や、漫画で読んだ『あまんちゅ』に登場したジオスポットが多数あったのも、興味を惹かれた要因かも。

是非とも体験して本当に「その土地が好きになる」か試してみたいと思っていたら、トーク後に「ニューヨークランプ&ティファニーミュージアム」の方からご招待頂いたので、これ幸いと翌日に行ってみることに。


・実際に観光してみた

ということで、「JPリゾート 伊豆高原」はここまで。ここからは実際に体験できる、周辺観光の一端を皆さんにお伝えしよう。はたして筆者はこの土地を好きになることができるのだろうか?

目的の「ニューヨークランプ&ティファニーミュージアム」までは、徒歩の場合「JPリゾート 伊豆高原」から15分~20分ほどかかる。距離そのものはたいしたこともなく、行きはほぼ下り坂なため楽だ。しかし、帰りはその分上り坂が続いてハードだったので、車かタクシーが楽だと思う。

メジャーな観光スポットである城ヶ崎海岸や門脇吊橋なども同じ方向だ。というかミュージアムの敷地の横に、それらのジオスポットに続く道が通っている。全て一緒に見て回ることができるぞ。

ミュージアムの入園料は大人1200円。敷地内にはまずフラワーパークが広がっており、普通に景色がいい。


そして建物の中にはメチャクチャ綺麗なランプの世界が


中には過去にオークションにて3億とか4億とか、その辺りの凄まじい値段で落札されたモノもあるという。しかも写真撮影は自由だというから驚きだ。普通この手の施設では、だいたい撮影NGだったりすると思う。


世界一ガラスをドラマチックに見られる場所の一つな可能性もワンチャン。インスタグラムやTwitterなどで人気の、エモい系な写真をアップしてる人が撮ったら、死ぬほどバズるネタではなかろうか。


これはガチに見応えがある施設だ。来る前はどこかで「ちょっと興味湧いたけど、でもガラスでしょ? 宝石じゃなく」みたいなことも思っていたが、それはあまりに愚かだった。ティファニーランプには実に奥深い魅力があり、ステンドグラスの本気を見せられた気がした。


ロビートークにて作成方法を聞いていただけに、目の前にある綺麗なランプがいかに手の込んだモノかもなんとなくわかる。単に見るよりも、一歩踏み込んだ理解につながっているのは確かだ。そして、踏み込んだ理解があるからこそ、より面白い

ここから城ヶ崎海岸や吊橋までそう遠くないが、残念ながら予定があったため筆者は撤収。ここまで来てジオスポットを全く見ずに帰らねばならないのはあまりに無念すぎる。次は仕事ではなく、余裕がある時にゆっくりと数日かけて見に来たくなった。

なるほど、「JPリゾート 伊豆高原」のコンセプトと施策は有効と言えそうだ。ぶっちゃけ、「そうだ、伊豆に行こう」的な感じで予備知識も当ても皆無なままフラフラと訪れたとしても、全てホテル任せで宿泊だけでなく周辺の観光も楽しめるとすら言える。

伊豆高原というのは全体的に宿泊施設の単価がそこそこ高いものだが、リニューアルしたばかりの「JPリゾート 伊豆高原」は、値段的にもクオリティ的にもかなり狙い目だと思う。伊豆への旅行の際には、宿泊先として検討してみてはいかがだろう。

参考リンク:JPリゾート伊豆高原ニューヨークランプ&ティファニーミュージアム伊豆半島ジオパーク
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼ロビー前テラスからの伊豆の日の出はガチ。提供写真とかじゃなくマジにこれ。

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