映画、音楽、本、ゲーム……定額料金でサービスを好きなだけ利用できるサブスクリプションが全盛期だが、「見たい(聞きたい)ものがなくなる」というのが悩みではないだろうか。
○○万本配信、などと作品数をうたっていても限界はくる。興味のない作品がいくらあってもゼロと同じだからだ。
解決策はひとつ。自分好みのジャンルにドンピシャで合致したサービスを見つけること。このたび、ルポ・ノンフィクションに特化したサブスクリプション「SlowNews」がサービスを開始した。
・「SlowNews」月額1650円(税込)
月額料金は税込1650円と、「なんとなく加入」するには安くない。利用価値があるかどうか、しっかり内容をみてみよう。
まずは書籍。サービス開始時点では、岩波書店、KADOKAWA、講談社、光文社、東洋経済新報社、文藝春秋の6社100冊以上のノンフィクション作品が読めるという。
「ネットと愛国」(講談社ノンフィクション賞受賞)、「軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い」(本田靖春ノンフィクション賞受賞)などの受賞作がラインナップ。これだけでも結構な読み応えではないだろうか。
サービスはブラウザで利用するので、専用アプリのダウンロードは不要。刊行時にはタテ書きの本であっても、スマホなどで読みやすいようにヨコ書き表示にできる。UIはシンプルながら、背景色や文字サイズの変更など、基本的な機能は備えている。
そして定期的に配信されるオリジナル記事や翻訳記事。「The New York Times」や「The Guardian」など海外メディアの調査報道の翻訳記事を収録。
中でも米国「ProPublica」は、オンラインメディアとして初めてピューリッツァー賞を受賞したメディアなのだそう。日本国内では初配信。
国内メディアからは「AERA」(朝日新聞出版)の人物ノンフィクション「現代の肖像」を配信。
コンテンツは「作品一覧」「著者一覧」から検索できるが、書籍には発行年が記載され、連載記事のような未完の作品は「連載中」と表示された。
・筆者の気になった1冊
30日間の無料お試し期間があるので、さっそく登録してみた。SNSアカウントやGoogleアカウントとの連携で、登録作業は一瞬で完了。
月額購読に移行するかどうかを問わず、支払い情報の登録を求められる。終了7日前にメールでお知らせしてくれるというので安心だ。
筆者が「おおっ」と思ったのがこちら。「仕事道楽 新版 スタジオジブリの現場」だ。いわずと知れたスタジオジブリのプロデューサー 鈴木敏夫氏の2014年の著作。
コンテンツは事件・事故・経済・環境問題など社会派のテーマが多いが、スポーツやエンタメもあるぞ。
・新規コンテンツに期待
ノンフィクション作品は数年、数十年という気の遠くなるような調査・取材によって支えられている。時間と手間と労力を注ぎ込み、成果が出るのはずっと先という地道な活動だ。
サービスの収益の一部は「調査報道支援プログラム」に使用され、「ジャーナリズムの最も重要な役割を担う調査報道が継続的に生み出される環境づくりに取り組みます」とのこと。
今後の展開は、新規コンテンツの充実度によると思う。書籍サブスクリプションはどうしても、興味のあるものを読み尽くしたら解約……という心情になる。
「書籍をはじめ配信作品は随時、追加、更新をしていきます」とのことなので大いに期待。前述のとおり無料お試し期間があるので、手ざわりを確認したい人はぜひサイトをのぞいてみて欲しい。
サブスクサービスが出揃った感のある現代、これからは「広く浅く」ではなく、特化型の時代だと思うぞ。「ホラー小説サブスク」とか「幕末ものサブスク」なんて出ないかなぁ?
参考リンク:SlowNews
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES
ScreenShot:SlowNews