ごま油が好きだ。愛していると言ってもいい。あの香ばしい風味が心底たまらない。辛い時も苦しい時もごま油を摂取すれば気分が落ち着く。おそらく何かしらの事情で無人島に行くことになった時もごま油を持っていくだろう。そして毎日数滴ずつ大切に、あたかもそれが甘い蜜であるかのように舐めることだろう。
そんな無類のごま油狂いの筆者だが、最近になって衝撃的な商品と出くわした。2021年1月11日に新発売されたカルビーのポテトチップス「のりしおとごま油味」である。これを逃しては途方もない後悔を抱えるに違いないと思い、がむしゃらになって入手したのでご紹介したい。
全国のコンビニ限定、かつ2月下旬までの期間限定で売られているこのポテト。実は2019年に一度発売されており、今回はバージョンアップしての再登場。なぜ初登場時に筆者が食べていなかったかと言えば、単純に知らなかったからである。己の愚鈍さが呪わしくて仕方ない。
ともあれ、ごま油の神が愚劣な筆者を憐れんで再び与えたもうたチャンスと捉えることにしてレビューしていきたい。何と言ってもこのポテトで注目すべきは、かどやの「純正ごま油」とのコラボ商品である点だ。
かどやのごま油と言えば多くの方がご存知であろう定番中の定番だし、個人的にも無人島に持っていきたいごま油として注目していたため期待度は高い。いそいそとパッケージを開けてみると、たちまち香ばしい匂いがふわりと広がった。
もうこの時点で多幸感がすさまじい。ごま油の香りがすでに激しく美味しい。「食べなくても美味しいので満足」と書いてしまいたくなるが、そんなグルメレポがこの世にあってはならないので差し控えつつ、中身のポテトを1枚口に放り込む。
そうして噛み締めた瞬間、うっとりする味わいが味覚を満たした。恍惚として自然と目を閉じる。脳の底を揺さぶるような危ういまでの香ばしさと、それによって果てしないほど増幅されたのり塩の絶妙な旨味が、こちらの意識をどこまでも高く舞い上がらせる。
美味しい。いや、いくらなんでも美味しすぎる。これはいけない。「美味しすぎて昇天した」なんていう文言をたまに見かけては「人間が食べ物で昇天などするものか」と思っていた筆者が流れるように昇天してしまった。
大げさに聞こえるかもしれないが、これでも抑えている方である。抑えなかったら「美味しすぎて外交上のキーカードになる」とか「美味しすぎて銀河系に名を馳せる」とか好き放題に書いている。それくらいに、ライターとしてのバランス感覚を喪失しうるくらいに破壊力がえげつない。
ごま油が苦手な方は「美味しくても味がしつこいのでは」と思われるかもしれないが、それがそうでもないというか、食べ始めたら加速度的に手が止まらなくなるのだ。筆者がごま油狂いということを差し引いても、飽きが来ないどころか無限に食べられる仕上がりだと言える。
しかし一方で、この幸福が無限ではないことも悟っている。何故なら期間限定の商品だからだ。美味しいものに限って限定品なのはどうしてか。このまま永遠に時が止まってしまえばいいのにと、ロマンス小説のヒロインが恋人の胸の中で思うことをポテトに対して抱いてしまう。
限りある幸福を手にした筆者にできることは1つだ。残された日々を惜しみながら、じっくりとこのポテトを味わおう。1枚ずつ大切に、甘い夢に浸るように。
参照元:カルビー公式HP
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.