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【ネタバレなし】話題すぎる映画『すみっコぐらし』を観に行った正直な感想 → できれば二度と観たくない

2019年11月25日

先日、日本のあるアニメ映画がネットで大きな話題になった。『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』だ。その人気はとどまることを知らず、興行通信社による2019年11月16、17日の映画観客動員ランキングでは『ターミネーター』の新作に次いで、なんと2位を記録している。

ヴィジュアルからも分かる通り、基本的には子供向けの内容となっている本作。しかしネットでは、大人たちからの大袈裟とも思える絶賛が相次いでいるのだ。個人的に『すみっコぐらし』のキャラクターはカワイイから好きだけど……そこまでか? ってくらいの熱狂ぶりである。

一体、この映画の何が彼らに刺さったのか? 気になったので、実際に観に行ってみることにした。

・大盛況

映画が公開されている新宿の劇場に入ると、平日の真っ昼間とは思えないくらい大勢の人が詰めかけていて驚く。子連れ客もいるにはいるが、そのほとんどが大人のようだ。若いカップル、夫婦、ソロの女性など客層は多様で、中には一人で来ている初老の男性の姿も。

・ネタバレなし

さて、前置きはこれくらいにして本編の話に移ろう。ここから先、ネタバレ等はないので安心していただきたい。


隅っこが好きな愛くるしいキャラが多数登場する映画『すみっコぐらし』。旬のタレントや芸人が声優に挑戦して喋りまくる……なんてことは当然なく、ストーリーはナレーションとちょっとした文字のセリフのみで進行していく。主役はあくまで すみっコたちの可愛らしい仕草だ。

・可愛すぎ問題

映画の冒頭で すみっコたち一人一人がしっかり紹介されるため、初見の方でも前情報は特に必要ないだろう。あとは彼らの一挙一動に顔をほころばせるだけである。事実、この映画に可愛くない瞬間など1秒たりとも存在しないのだから。

作品の大まかなストーリーはこんな感じ。


「ある日、すみっコたちは喫茶店の地下室で1冊のとびだす絵本を見つける。眺めていると突然、絵本の中に吸い込まれてしまった。そこで出会ったのは、自分が何者かも分からない一人ぼっちの “ひよこ”。すみっコたちは “ひよこ” の家を探そうと奮闘する」


桃太郎や人魚姫、赤ずきんなど絵本の世界を旅する すみっコたちの可愛さは尋常ではなく、「このままだとこちらの身が持たない!」と危機感を覚えるほど。だが、同時にこんな考えも頭をもたげ始めていた。この映画、たしかに可愛くてほっこりするけど……そこまでか?

・疑問

先に書いたように すみっコたちの可愛さは悶絶ものだし、“ひよこ” のキャラクターに現代社会が抱える問題を重ね合わせることも可能だろう。しかし、ネットで絶賛の嵐が巻き起こるほどの熱量を作品から感じるか? と聞かれると、正直言ってそれはなかった。

この記事を書くことを念頭に本作を見ていた私は、序盤から中盤にかけて何度も「あんまり書くことないなぁ」「どうすっかなぁ」と頭を悩ませたものだ。なんなら途中、ちょっと眠くなったりして……。いや、カワイイのは間違いないんだけどさぁ……。


ところがである。


・異変

映画の後半、話が結末に向かって収束し始めた時。遅ればせながらようやく私にも分かってきたのだ。あ、こういうことか……と。いい意味で嫌な予感というか、間もなくこの劇場を襲うだろう感情の大洪水。嵐の前のような異様な空気をビシビシと感じ始めていた。

・決壊

そこから先は地獄である。なんせ涙が止まらない。ホロリとくるとかそんなレベルではなく、割とガチめの嗚咽が土石流のようにこみ上げてきたのだ。いや、ちょっと待って無理無理、無理だから! 当方、34歳の男だから! しかも一人で観に来てっから!!

そんなことはお構いなしで、怒涛のように展開していくストーリー。先述の通り、この映画のキャラクターたちは一切言葉を発しない。話すのはナレーターだけであり、しかもクライマックスはそれすら入る余地はなかった。音楽と効果音、演出のみで構成されているのに、どうしてこうも感動的なんだろう。

まるで背中にある涙腺を高速ドリルでギュルギュルされているかのような気分だ。通路を挟んで隣に座る女性が、先ほどから しきりに涙を拭っているのが横目に映る。無理もない。こんなん泣くに決まっている。しかし私はというと、手で顔の付近を触るのも少々ためらわれた。だって当方、34歳の男だから(2回目)。

・迫る結末

ちょっとでも気を抜くと、山王戦の湘北の1年メガネみたく「ぐひっ……ぐひん~~っ」となりそうなので必死にガマン。たまにスクリーンから視線を外すなどして目頭のセルフ応急処置に励んだ。頼む、早く終わってくれ! いや、終わらないでくれェェェェエエエエ!!

やっとの思いで辿り着いたエンドロール。原田知世さんによる主題歌『冬のこもりうた』が流れ始めるが、それでも席を立つ人間は誰もいない。よかった、この間に気持ちを落ち着けよう……と思った次の瞬間! 音楽と共に映し出されるイラストの数々に再び涙腺が崩壊。まだブチ込んでくるのかよ!!

終演後、いまだ席に座ったままの私は、出口に向かってゆっくり歩き出す観客たちの姿をぼんやり眺めていた。普段あまり感動系の映画を観に行くことはないのだが、鼻をすする音があんなに聞こえたのは初めてかもしれない。軽く目を乾かしてから、劇場を後にした。

・傷跡

ネットを大きく騒がせた映画『すみっコぐらし』。最初はかなり懐疑的な目で見ていた私も、今ならハッキリ分かる。あれは危険だ。劇薬だ。リーサルウェポンだ。ある種トラウマのような感慨と喪失感、そして過剰なエモーションによる深い傷を、私はこの映画に刻み付けられてしまった。

それは決して楽しいことではない。感動したし可愛かった、癒されもした。が、同時にごっそり生気を奪われるような極限体験でもあったのだ。果たして私は、この映画をもう一度直視することができるのだろうか? すべてを知った上で、再びどんな感情で向き合えばいいのだろうか?

・強すぎるが故に

そういう意味で、私は映画『すみっコぐらし』を二度と観たくないと思った。もちろん刻まれた傷はしっかり引き受けよう。しかし、これ以上はもういらない。『ラピュタ』のポムじいさんじゃないが、この映画は私には強すぎる。今後は彼ら同様、どこかの隅っこにひっそり丸まりながら、本作の破格の快進撃を見守るつもりだ。

参照元:映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ興行通信社
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

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