アインシュタインは言った。「無限なものは2つある。宇宙と人間の愚かさだ。宇宙については断言できませんが」と。この言葉はいわゆる皮肉のようなものだが、日本には実はもう1つ上限がないものが存在する。富士そばの『肉骨茶(バクテー)そば』だ。
富士そばの店員さんいわく「いくらでも肉増しができる」というこのそば。以前の記事で肉10倍増しにチャレンジしたが、実際出てきたそばを見て私は思った。「まだイケんじゃね?」と。それなら超えてやろうじゃないか! 限界を!! 肉20倍増しだァァァアアア!!!!
・悪い男
とは言え、前回の10倍増しであれだけ厨房をザワつかせてしまったので、肉20倍増しをアポなし突撃はさすがに店に迷惑をかけそうだ。そこで、富士そばの広報である工藤さんに聞いてみたところ……
工藤さん「イイっすよ!」
──と軽い返事。というわけで、工藤さんと予定を合わせて富士そば高円寺店にやって来た。ちなみに、店長には何をやるか伝えていないのだとか。見かけ通りのワルである。
・注文してみた
さっそく入店したところ、工藤さんが突然やって来たことに驚く店長のたかはしさん。そこからかい!
ともかく、先に注文を済ませてしまおう。バクテーそばお願いします!
たかはし店長「バクテーそばですね! バクテーそば一丁!!」
私「あっ、肉20倍増しで!」
たかはし店長「え? 何倍ですか?」
私「20倍増しです!」
たかはし店長「20倍ですねー」
たかはし店長「……
ええッ!?」
──リアルにマスオさんみたいなリアクションをされてしまったが、それもそのはず、たかはし店長いわく「20倍は初めて」とのこと。とは言え、対応できる分の肉のストックはあるそうだ。むしろ、問題は器に乗るかどうか。どうせなら肉の山を拝みたいところである。
・ザワつく厨房
まずは、20倍増しの肉を鍋に開けると、肉だけで鍋2つがいっぱいになった。「これ大盛の器でも乗りきるか……?」その光景に厨房がザワつく。
完成したバクテーを丁寧に大盛用の器に盛りつけていくたかはし店長。しかし、1つの鍋を使い切った時点で、大盛用の器は満杯に。たかはし店長の顔に焦りの色が浮かぶ。
・たかはし店長の闘い
ここから先は丼ぶりという枠のない領域。言わば肉を積み上げるチキンレースだ。と、その時、たかはし店長が叫ぶ。「カレー皿取ってくれ!」と。そして、そばの器の下にカレー皿を敷く。つゆの一滴さえ無駄にしないというたかはし店長の心意気が伝わってくるようだ。
限界はどこにあるのか? それは誰にも分からない。ある瞬間、ジェンガのように崩れてしまうかもしれない。そんな恐怖との戦いの中、慎重に肉を積み上げていくたかはし店長。ただひたすらに天を目指して。
少しずつ減っていく鍋の肉……
そして、ついに最後の肉が……
丼に乗った!
──その瞬間、誰もその場から動けなかった。動いたら崩れる……! ゆらゆら揺れる肉の塔には、そんな緊張感が漂っていたから。気づけば、店と客という垣根を越えて全員が挑戦者となっていた。やがて、落ち着く肉の塔。war is over……我々はやり遂げたのである!!
こんな『プロジェクトX』みたいな感じになるとは思ってもみなかったが、かくしてバクテーそば20倍増しは建設された。その姿は肉のバベル。まさに神をも恐れぬ所業と言えるかもしれない。食べてないのに達成感がヤバイ。
・食べてみよう
食べてみると、20倍増しでもニンニクとコショウがバッチリきいておりパンチ力は抜群。超ウメェェェエエエ!
ちなみに、肉の量は1.2キロ。価格は「バクテーそば(税込590円)+肉増し19倍(税込3040円)」で税込3630円だった。
トッピングの上限はないが、胃袋には上限がある。というわけで、限界まで食べてから、タッパで持ち帰り編集部で食べました。私のチャレンジは動画にまとめたので気になる方はそちらをご覧ください。
遥かなるバクテーそば。そんなバクテーそばと宇宙には上限がない以外にもう1つ共通点がある。それはロマン。食べても食べてもなくならない肉の塔には男のロマンがあった。そんなロマンを叶えてくれた富士そばに改めて感謝と敬意を。ご協力いただきありがとうございました!
・今回紹介した店舗の情報
店名 名代 富士そば 高円寺店
住所 東京都杉並区高円寺北3-22-18
営業時間 24時間営業
定休日 無休
Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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