ロケットニュース24

センター試験で前の人の答案が丸見えだったけど、それどころじゃなかった話 / あるいは「問題を解けない快感」について

2019年1月19日

ガッツリと見えていた。右前に座っている人の答案が。決してこちらが見ようとしているわけじゃない。ただ座っているだけなのに、顔を上げると視界に入ってくる。

え!? センター試験ってこんなにユルいの? ──と思ったのは今から20年近く前のこと。正確には2000年の1月で、私が高校3年生の頃である。

お察しの通り、私はセンター試験を受けており、その時に前の人の解答用紙が丸見えだったのだ。そしてこれは私だけが感じていたわけではない。同じ会場で受験していた友達と休み時間に話すと、「丸見えやんけ」という人が何人もいた。

だからこそ、センター試験会場の “ユルさ” に驚いたのだが、なにぶん20年ほど前の話なので、今は “ちゃんとする方向” で調整されているかもしれない。

・丸見えだった原因

では一体なぜ丸見えだったのかというと、理由は簡単。私は大学の大講堂みたいなところでセンター試験を受けたのだが、構造的に教室の後ろの方が高くなっていたから。

つまり、私が座っていた席と前の席では、階段1段分くらい高さが違っていた。そのような高さの利点(?)があり、なおかつ隣の人との間隔がそれほど広くなかったので、私にとって通路を挟んで右前に座っている人の解答が丸見えだったのである。


しかし!


私はそれを見ようとは思わなかった。良心的な理由から見なかったわけでもなければ、問題の解答が分かるから見る必要がなかったというわけでもない。むしろ、私の心情的にはメチャクチャ見たかった。お金を払ってでもいいから、答えを聞きたかった。

だが見なかった。正確には、それどころじゃなかったのだ。


なぜか?


理由をひと言で言うなら、「問題を解けない快感を存分に味わうため」なのだが……そう言ったところで、「意味が分かりません!」と思う人も多いだろう。

無理もない。私は『問題を解けない快感』を今まで散々ネタにし、「この快感、分かる?」と周囲に質問しまくってきたが、「超分かる」と答えた人は1割程度。なお、「さっぱり分からん」が6割程度、「何となく分かる」が3割程度である。

・『問題を解けない快感』とは?

よって、6割ほどの人には全く理解してもらえないような気がするのだが、それでもあえて『問題を解けない快感』について説明するならば……


肛門から指を入れられ、その指で下腹部の内側を絶妙な力加減で擦(さす)られているような感じ


──である。その快感はテストで焦れば焦るほど強くなり、快感の度合いが増すとやがて…… “昇天” に達する


「はっ? なに言ってんの?」って感じかもしれないが、私は今まで何度か体験してきたのだから『問題を解けない快感』が存在することは事実だ。

ちなみに、私がその快感の存在を確信したのは、中島らもさんのエッセイを読んでから。エッセイには、らもさんが体験された『問題を解けない快感』についての記載があり、当時中学生だった私は「俺だけじゃないんや」と妙に安心したのを今でも覚えている。

ずいぶん前のことなので本のタイトルは忘れてしまったのだが、気になる人は中島らもさんのエッセイを片っ端から読んでみてくれ。


・『問題を解けない快感』の気づき

話を戻そう。私が初めて『問題を解けない快感』に気づいたのは中学生のとき。自分で言うのも何だが、当時 真面目に勉強していた私は、テストで問題が解けない時にはよく焦った。

しかし焦れば焦るほど、解けない。一体どうすれば……!!


あっ!


あっつ!!


あぁぁぁぁぁああっつーーーー!!!!


……


……



パオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン



──こうして、新しい世界を知ったのである。


・暗黒の高校時代

だが高校生になると、私は『問題を解けない快感』を感じることが無くなった。

なぜなら、私は高校に入るとたちまち落ち込ぼれたため、途中からテストの結果なんて気にしていられなくなったから。気にしてないから、テスト中の焦りもない。「点数なんてどうでもいい」というと言い訳がましく聞こえるかもしれないが、実際に心の底からそう思っていた……というか、そう思うしかなかった。

なので、期末テストでも模試でも『問題を解けない快感』を感じることはなかったのだ。しかしそんな私でも、「高校を卒業したら、親元を離れて一人暮らしをしたい」という願望だけは、人一倍強く持っていた。

そしてそのためには、どこか地方の大学に行くのが手っ取り早い。そのためには、センター試験と二次試験を何とかパスして……

──なんてことを考えているうちに、迎えたセンター試験当日


もうお分かりだろう。問題を解けなくて焦る状況が、私にとっては高校時代でほぼ初めてやってきたのだ。それはつまり……



パオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン



パオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン



パオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン



パオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン



パオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!


──ということである。

詳しい描写は控えるが、「大学に落ちて浪人した」とだけ記載しておきたい。


私がセンター試験について覚えているのはこんなところだ。受験生のみなさん、参考になっただろうか?

執筆・イラスト:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

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