その味はあまりにも平安貴族的だった。良く言えば “上品” という意味で、悪く言えば “派手に変わるわけではない” という意味で。したがって、中には「手間と効果が釣り合わない」と感じる人もいるだろう。
だがしかし、貴族的な感性の持ち主が食べれば「口の中にほんのりと広がる梅しその香り、いとおかし」と呟いた後に、和歌でも詠みたくなるほど幸せな気持ちになるのではないだろうか。──前置きはこれくらいにして、その卵かけご飯(TKG)の作り方を紹介しよう。
……と言っても、作り方というほどのものは無い。細かく刻んだ しば漬けを炊飯器に入れてお米と一緒に炊き上げ、出来上がった「しば漬けご飯」でTKGを作るだけだから。
ただし、その説明ではあまりにも庶民的というか、貴族的ではないので、材料および作り方を解説したい。
【材料】
・米(いとおかしな量)
・しば漬け(いとわろしな量)
・塩(いとおかしな量)
ここでポイントは、しば漬けの分量。1〜2切れしか使わなかったら、炊き上げた時に風味がほとんど感じられないのだ。炊飯器に入れて炊いたら酸味が飛ぶことを計算し、多めに入れよう。ちなみに私は、ご飯1合で10切れ前後のしば漬けを切り刻んだ。好みによっては、もっと多くてもいいだろう。
おそらく、貴族的精神の持ち主の中には「大量に切り刻むなんて、いとわろし」と感じる人もいるだろうが、TKG的には “多め” という意識でちょうどいいはずだ。
あと、通常TKGは醤油をちょろっと垂らすのが一般的ではあるものの、このTKGで醤油を使うと、醤油の風味が しば漬けの梅しそ風味とかち合ってしまう。なので今回は、醤油の代わりに塩で味を整えた。
続いて作り方は以下の通り。
【作り方】
1. しば漬けを切り刻み、お米・適量のお水と一緒に炊飯器に入れる。
2. 炊く
3. 炊きあがりを確認したら……
4. ご飯をお茶碗によそい、卵をかける
5. 塩で味を整える
──以上である。
ご覧の通り、手軽さが魅力のTKGの割に結構手間がかかる。なので、しば漬けで炊き込む「しば漬けご飯」を作ったついでに味わうのがちょうどいいかと思う。言い忘れていたが、しば漬けご飯だけでも中々いけるぞ。
・炊き込むことで変わる
それはさておき、先述の通り、上のTKGは劇的に味が変わるものではない。味を簡単に変えたければ、普通に作ったTKGの上に、しば漬けをそのまま散らして食べる方が何倍も簡単……なのだが!
面倒くさがらずに上のしば漬けTKG作り、それを頬張ったら、ご飯のひと粒ひと粒に閉じ込められた梅しそ風味が、平安貴族のように「ホホホホホ」と奥ゆかしく笑いながら顔を出してくるのだ。この「ホホホホホ」感は、しば漬けをそのまま乗せただけのTKGでは味わえないもの。
まあとにかく、いつもとは違うTKGを味わいたくなったら、味変のバリエーションの1つとして試してみるのがいいかもしれない。卵かけご飯を愛するすべての人にオススメかと言うと……ホホホホホ。
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼貴族的すぎるTKGの食事風景