ロケットニュース24

引っ越しの初期費用を払った後に「入居拒否」された話 / キレまくるマンション自治会長 VS 俺のスルー技術

2018年9月3日

裏目……裏目っ! たま〜に心の中に芽生える「ちゃんとせなアカン」という気持ちが、まさかここまで裏目に出るとはっ! ほんと、止めときゃよかった……。引っ越し前の挨拶なんて、するんじゃなかった……!!

──そんな気持ちでいっぱいになったのは、私が引っ越しをする前日。新居であるマンションの管理人に、挨拶をしに行ったときのことだ。「明日、こちらに引っ越してくる和才と申します。よろしくお願いします」と挨拶したところ……管理人(推定60代)にこう言われたのである。


「あなたはうちのマンションに入居出来ません。引っ越しを中止してください。今の状態では、マンションの自治会長が許さないと思います」


……はっ!?


……え!?


……どういうこと?


・数年前に体験した引っ越しトラブル

本記事で紹介するのは、私が数年前に体験したトラブル。引っ越しをする前日、これから住む予定のマンションの管理人に挨拶をしに行ったら、上述の通り「引っ越しを中止して」と告げられたことから始まった出来事である。

結論を最初に言えば「管理人の主張を無視して引っ越ししたら何とかなった」のだが、「中止して」と言われたときは思考が停止してしまった。なにせ、その時の私はすでに部屋を借りる契約を済ませ、必要な初期費用も支払い、引っ越しの業者も決まり、まさに翌日が引っ越し予定日だったのだから。

そのタイミングで、「引っ越しを中止しろ」なんてことをヌカすヤツ、どーかしてるぜ! と思わずにはいられなかったのだが、管理人の話をよくよく聞けば、上のような発言をしたのにはこんな理由があったようだ。

・管理人が「引っ越しを中止して」と言った理由

そのマンションに引っ越してくる場合、引っ越しの前に「◯◯日に引っ越しを行うのでよろしくお願いします」的な申請書をマンションの自治会に提出する必要があるが、その申請書がまだ提出されていないから

──である。ちなみに、そんな申請書が必要だなんてこと、私はマンションを紹介してくれた不動産仲介業者から全く聞かされておらず、管理人から言われて初めて知った……。とにかく、私は仲介業者に即電話

「管理人さんに挨拶しに行ったら、申請書がないと引っ越しは出来ないって言われまして。この段階で、まさかの入居拒否をくらいました(笑)」と伝えたところ……

仲介業者は「ご心配おかけして申し訳ありません」とお詫びの言葉を発した後に、状況を説明してくれた。面倒な事態になった原因を一言でいえば「情報が共有されてなかった」的な感じになるのだが、仲介業者の説明内容を箇条書きでまとめると、以下の通りである。


・不動産仲介業者の言い分

■引っ越し前に、引っ越しする旨の申請書をマンションの自治会に提出する必要があることは、仲介業者側も把握していた

■その申請書には、部屋のオーナーの印鑑なども必要なのだが、オーナーが遠方に住んでいるため、また賃貸契約の締結から引っ越し日までに間がなかったために、まだオーナーの印鑑をもらえていない。つまり、申請書は提出できる状態ではない

■なので、仲介業者側はマンションの自治会長に「すんませ〜ん。まだ申請書は出来てないんですけど、◯月◯日に☓☓号室で引っ越しがありますんでよろしくです。申請書の方は、オーナーの印鑑をもらえ次第すぐに提出しますんで」的な連絡を口頭で伝えていた

■それに対して自治会長は、書類の提出が引っ越し日より遅れることに不満を漏らしたものの、しぶしぶ了承した

■申請書は、仲介業者の方でマンションの自治会長会に提出する予定だったため、私には最初から伝えられていなかった

■申請書はまだ自治会に提出できてないものの、自治会長にはその旨を伝えているので、私の引っ越しは予定通り行ってOK


──とのことで、早い話が仲介業者側は仲介業者側で手を打ってあるから大丈夫だという。ここで、管理人側の言い分をもう一度整理してみたい。


・マンション管理人の言い分

■引っ越しの申請書を事前にマンションの自治会に提出していない場合、このマンションで引っ越しを行うことは絶対にできない

■なぜなら、マンションの自治会長が認めないから


──であり、それぞれの言い分を照らし合わせると、私が管理人から「引っ越しするな」と言われた根本的な原因は、仲介業者が自治会長に口頭で伝えたという「引っ越しの申請書の方は、オーナーの印鑑をもらえ次第すぐに提出しますんで」的な連絡を、管理人が聞かされていないからでは? と思われた。

なので、私は管理人の主張を「まあ、そうっすね」と適当に聞き流し、予定通り引っ越しを行うことにした。なにせ、こちらは必要なお金を払い、契約も済ませている。マンションの管理人が何を言おうが、自治会長が不満をタラタラ漏らしていようが、知らんがな。そんなもん、全部無視すんで。


──という経緯があり、迎えた引っ越し当日。引っ越し業者のトラックが私の新しいマンションに横付けされ、荷物の搬入作業が始まった。玄関のドアを開けっ放しにし、荷物が次から次へと運び込まれると……! ドアから、自治会長が顔を出したのだ。

そこからクレームの嵐が巻き起こるのだが、それは次のページへGO!

Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

・自治会長登場

その自治会長の姿は、私にとって意外だった。70代くらいであろう おばあちゃんだったのだ

「このマンションの自治会長をしております。Aです」と、私に告げるおばあちゃん。もちろん、私も挨拶を返す。「はじめまして。この部屋に今日から越してきました和才と申します。どうぞよろしくお願いいたします」と言おうとしたのだが……。

結果的に、「和才と申します」の「ま」くらいまでしか言えなかった。なぜなら、私の挨拶が終わるのを待たずに、自治会長がこう言ったからだ。


「引っ越し業者の方に、帰るように言っていただけますか」


──はい、来た。やっぱりだ。自治会長がそう言っている理由は、聞かなくても察しがつく。申請書だ。マンションの自治会に提出せなアカンかった申請書を仲介業者が出してないから、会長は激おこなんだろう。そこで私は、まずは通常のジャブで相手の出方を見ることにした。

「すみません、申請書ですよね? 今、仲介業者さんの方に用意してもらってますんで。少々お待ちいただいていいですか」

──と言ったものの、そんな普通のジャブでは会長の勢いを全く止られなかった。自治会長は、「申請書のない引っ越しは認められない。今すぐ中止しろ」の一点張り。その言いっぷりには、「どんな理屈も通じない感」がにじみ出ていたので、私は即座に作戦を変更。


「あと、5分で終わりますんで」


──と自治会長に適当に言いつつ、とりあえず作業を終わらせることにした。始めたばかりの搬入作業が5分で終わるワケないのだが、そんなことはどうだっていい。私が「もうすぐなんで! もうすぐっす!」と言いまくっているうちに、終わらしてやれ! と思ったら……

この後、自治会長は、ものすごい剣幕でキレ始めた。理由は、引っ越し業者の養生テープの貼り方がマズかったから。


「ちょっと! こんなテープの貼り方じゃあマンションの中が傷つくだろうが! 全部貼り直せ!!


──引っ越し業者のスタッフを捕まえて怒りをぶつける自治会長。そうかと思ったら、自治会長は「トラックを停めている位置が悪いから少し動かせ」とか「共用部分の扉の開け方が雑」だとか何かと理由を見つけてキレまくり……


そっか。新しいマンションの自治会長、クレーマーだったのか。だから、管理人はあんなに頑なに拒んだのか。と、その時に気づいたのだが、気づいたところでどうしようもない。

自治会長は、水圧がすごすぎて暴れまわるホースみたいになっていた。誰も自治会長を制御できない。ただ水を浴びているだけだ。きっと、このマンションの管理人は今まで散々水を浴びて心までビショビショになってしまったのだろう。

私も自治会長と出会って10分くらいで結構ビショビショになったのだが、自治会長の “放水” が何の罪もない引っ越し業者に及ぶと気の毒な上に作業の進行にも影響しかねないので、私が自治会長の相手をせざるを得ない。むしろ、この引っ越しを無事に終わらせられるかどうかは、私が自治会長の “水圧” に耐えられるかどうかにかっている!

──と覚悟を決めて、暴走する自治会長に挑んだのだ。こんな風に……


会長:「養生テープを全部張り替えろ!」

:「色々と細かいルールがあるんだな……。いや〜知らなかった! ところで、会長はこのマンションに住まれて長いんですか?」


会長:「トラックを停めている位置が悪いから少し動かせ!」

:「会長はアレですか、トラックの運転とかもされるんですか?」


会長:「ドアの開け方が雑だろ!」

:「まあアレですよね、昔の方はそういう所作みたいなのがキレイですよね。歩く姿はユリの花みたいな」



──ご覧の通り、全く会話は噛み合ってないのだが、“返し” なんて何でも良かったのだ。なぜなら、一番大事なのは相手の話を聞くことなのだから。その証拠に、私が話を聞いているうちに自治会長は次第に落ち着き、「このマンションが建った当時、回りには学生運動をしている人がいて」的な話を始めた。

それから自治会長は脈絡のない話を散々したら気が済んだらしく、自分の部屋に帰っていったのだ。嵐は去った。同時に、私の引っ越し作業自体は完了。管理人に「中止しろ」と言われたけれど、引っ越し自体は何とかなったで。ホッ……


と思ったら!


自治会長が帰っていく先を見て、私は愕然とした。膝から崩れ落ちそうになったと言っていい。なぜなら……なんと! なんと……!! 自治会長の部屋は私の隣だったのだ。



詰んだ。


──このようにして、隣人がクレーマーだと引っ越し初日に知ったことから始まった私の新生活。それがどんなものだったのかはまた追ってお伝えしたい。

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

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