みなさんは「テレクラ」をご存じだろうか? テレフォンクラブ、略して「テレクラ」である。ざっくり言えば、男女の出会いを仲介する “出会い系ショップ” で、今から20年ほど前は繁華街などを中心に多くのテレクラが存在した。
だがしかし、出会い系もインターネットが全盛期のこのご時世。「今でもテレクラってあるのかな?」と思い調べてみると……あった。わずかだが2017年も、新宿歌舞伎町にテレクラが存在した。というわけで今回は、約20年ぶりにテレクラを利用してみたのでご報告したい。
・テレクラとは
まずはテレクラのシステムを簡単に説明しよう。男性は電話付きの個室でひたすら待つ。ただただ待つ。電話が鳴ったら女性とお話しし、気が合えばデートの約束も取り付けられる……といった感じである。なお、今回利用したテレクラは1時間1900円であった。
さっそく受付で名前と年齢を39歳と記入し、料金を支払う。「力士は確実に通れないな」というくらい狭い通路沿いに、私(P.K.サンジュン)の個室は用意されていた。12号室、この12号室から果たして出会いは生まれるのだろうか?
さあ、漫画でも読みながら待つか……と思いきや、入室10秒後には初コール! スゴイなテレクラ!! 電話の相手は27歳女性で慣れた口調でこう切り出してきた。
「こんにちは~。27歳なんですけど大丈夫ですかぁ? いま近くにいるんでぇ、ワリキリでよければ会いたいんですけどぉ?」
ウッヒョーイ! 今まで遭遇したこと無かったけど、本当にワリキリってあるんですね!! これが大都会TOKYOの闇ですか! ……が、残念ながらワリキリのお相手が出来るほど私は裕福ではないし、勇気もない。というわけで、1件目の電話は丁重にお断りした。
さあ、マジで漫画でも読みながら待とう……と思いきや、早くも2本目のコールが鳴り響く! 入れ食いかよ!! ワクワクしつつ「もしもし~」と電話に出ると、なぜか相手は無言である……。年齢とお住まいを聞くと、彼女は手短にこう答えた。
「40代……(沈黙)……埼玉」
そのテンションはあまりにも低く、全くもって “出会いたいオーラ” が伝わって来ない。もしかしたら、埼玉1の恥ずかしがり屋さんなのかもしれないが、私に与えられた時間は残り50分ほど。こちらの女性も丁重にお断りし、電話を切った。
一服しつつ、待つこと5分ほど。3本目のコールが発生! そして私はこの後30分近くも話し続けることになる、サチコさん(仮)と出会ってしまったのだ。「恋がしたいですね」が口癖のサチコさんと繰り広げた “謎の30分トーク” は次ページへGOだ!
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
【20年振り】テレクラに行ったらこうなった(2ページ目)
まずは、サチコさんのプロフィールをご紹介しよう。福祉系のお仕事に就くサチコさんは、横浜市在住の40代女性。その最大の特徴は、とにかく声が小さいこと。普通に “ヒソヒソ声” である。30分の間で「もう1回いいですか?」と聞き返したことも1度や2度ではなかった。
か細い声のサチコさんは、きっと可憐な女性なのだろう。もしくは、横浜でも断トツに電波が弱いところから電話してきているのかもしれない。
サンジュン:「サチコさんはテレクラとかよく利用されるんですか?」
サチコさん:「いえ……初めてです……(極小)」
サンジュン:「奇遇ですね。僕も20年振りくらいにテレクラに来たんですよ。サチコさんはどんな目的でテレクラを利用したんですか?」
サチコさん:「恋が……したいですね……」
どうやら、サチコさんは恋するきっかけにテレクラを選んだようだ。ぶっちゃけ話が盛り上がりそうにもないタイプだったので、早めに電話を切ろうとしたのだが、ギリギリ聞き取れるくらいのボリュームで、サチコさんは色々と質問をしてきた。
サチコさん:「趣味は……なんですか……」
サンジュン:「そうですね、プロ野球観戦ですかね? あと読書も趣味ですかね」
サチコさん:「あ……私も読書します……文庫本とか……」
サンジュン:「そうなんですね。どんなジャンルを読まれるんですか?」
サチコさん:「探偵ものとかですかね……文庫本の……」
ハード本でも文庫本でも構わないが、サチコさんはどうやら文庫本がお好きらしい。推理小説を「探偵もの」と表現するユニークなサチコさんだが、こちらの質問に対してはチンプンカンプンな返答が相次いだ。
サンジュン:「サチコさんは花が好きなんですよね? お花見とかはされますか?」
サチコさん:「はい……します……」
サンジュン:「横浜だと、どこら辺が桜の名所なんですか?」
サチコさん:「(沈黙)……千鳥ヶ淵とか……? スカイツリーとか……?」
サンジュン:「えっと……千鳥ヶ淵って東京ですよね?」
サチコさん:「癒されますか……?」
サンジュン:「あ、はい。癒されます……」
この「癒されますか?」もサチコさんの必殺ワードで、「恋がしたいですね」と同じくらいの頻度で登場した。この時点で、サチコさんは “ド天然” か “大馬鹿野郎” の2択に絞られたが、正直、サチコさんにはもう興味が湧かなかった。
しかし電話を切らせてくれないサチコさん。彼女は驚くべき一手で、引き止めにかかってきたのだ。
サンジュン:「じゃあ、また縁があればお話ししましょう。ありがとうございました」
サチコさん:「あ……ここから続けていきませんか……?」
サンジュン:「続けるって電話ですか? うーん……」
サチコさん:「電話番号……教えてもらっていいですか?」
サンジュン:「え? 携帯ですか? 別に構いませんが……、○○○-△△△△-□□□□です」
サチコさん:「携帯は電源入ってますか……? 何を使ってますか……?」
サンジュン:「iPhoneですね」
サチコさん:「iPhone……。スマホですか……?」
サンジュン:「iPhoneご存じないですか?」
サチコさん:「癒されますか……?」
サチコさん……全ッ然 癒されないよ! 私も人間なので、会ったことがない人とはいえ、自分勝手に電話を切りたくない。その後も「どこでもドアで昔に戻りたい」からの「癒されますか?」コンボや、プログラミングされてるレベルの「恋がしたいですね……」をウンザリするほど聞かされ、何の実りもない謎の30分は終了した。
──その直後から、iPhoneを震わせ続ける非通知設定。1度も出ていないから、サチコさんだとは限らないが、3時間で5回ほどの着信があったことは記述しておこう。まるでiPhoneが「恋がしたいですね……」とささやいているようである。
なお、その後のコールも含め、今回は1時間で5人の女性とお話をした。サチコさんで半分は消費したから、5分に1本ペースくらいの体感だ。
言うまでもなく、援助交際目的やサクラも多いだろう。ただ、「奇跡が起きるかも……」と思わせる不思議な魔力があったことも事実だ。約20年ぶりのテレクラは、実にイリュージョナルな空間であった。サチコさんに幸多かれ。
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼とても不思議な60分だった。
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