その昔……といっても数年前の話だが、お化けを探知できる「ばけたん」というオモチャがあった。チロルチョコ程度の大きさで、かたちは勾玉(まがたま)、ヒモを付けたら可愛らしいストラップにもなる。でも、うたい文句は「お化け探知機」だ。
見た目も価格も、完全にオモチャ。いわゆる “おもしろグッズ” 的な扱いなのだが、私(羽鳥)は今から8年ほど前、このばけたんを用いて、背筋がゾッとするような体験をした。そして「これはオモチャではない……ガチだ!!」と強く確信したのだ。
・超小型の真性乱数の発生装置
まず、ばけたんの仕組みについて、販売元「ソリッドアライアンス」のホームページから言葉を借りて説明すると……
「ばけたんは、ピエゾ素子と、基板上に組み込まれた特別な回路をアンテナとして使用し、空間の温度、時間、振動、音圧、電磁波、その他未知のエネルギーの影響を受けることで真性乱数の発生を可能にした超小型の真性乱数の発生装置である」
──と、正直なんだかよくわからないが、とにかく画期的なおばけ探知機なのだ。
・某大手出版社のデカいビル
話の舞台は、都内某所にある、某大手出版社のデカいビルだった。ガチすぎるので名前は出せない。当時連載していた雑誌のコラムのネタとして、「このばけたんを使って、このビルの中におばけがいるのか確かめてみよう!」ということになったのだ。
何階だかは忘れたが、15階だか16階だかにある編集部のフロアから探索開始。オカルト事情に詳しい人から「霊が溜まりやすい場所」と教わった、フロアの隅っこあたりを探索するも、ばけたんのランプは平常時を意味する「緑」のままだった。
ちなみに、「おばけ」が近づくと赤く光り、「精霊」が近くづと青く光る。モーレツなパワーを感じたら、「ビービー!」としたブザー音も鳴るとのことである。
しばらく反応を伺ったが、どうやらこのフロアには何もいない。と、ここで先述のオカルト博士が「地下とか良いかもしれません」とのアドバイス。連載コラムの担当さんと私の2人は、エレベーターで地下の駐車場に向かうことにした。
「↓ボタン」を押して、しばし待つ。このビルは、まさしく “摩天楼” の名にふさわしいほど巨大かつ立派なので、エレベーターも4つか5つくらい同時に稼働していた。そのうちの1つが、上の階から降りてきた。エレベーター内には、すでに何人かが乗り込んでおり、ややギュウギュウではあったが、気にせず我々も乗り込んだ。
1階1階、スムーズに降りていくエレベーター。14F、13F、12F……
と、その時!!
「ビィーッ! ビィーッ! ビィーッ!!」
突如として、私のポッケに入れていた「ばけたん」が、狂ったように鳴り始めた。ポッケから出すと、赤いランプが、まさに狂ったようにギラギラと光りまくっている。
当然ながら、慌てる我々。この時の慌てっぷりを今風に例えるとしたら「スマホのブラウザを起動したら、いきなり大音量でエロ動画が再生された」に匹敵するレベル。
エレベーター内にいる人たちも「え? なに? なんの音!?」と、ざわめき始めた。我々は「すみません、ちょっと調査中でして……」と赤面しながら、ごまかした。しかし、ばけたんの異常反応は、下の階に近づくにつれ弱まっていった。ところが!
地下駐車場に着いたとたん、今度は逆方向の「青」に光り始めたのだ。狂ったような感じではなく、静かに、穏やかに……ゆっくりと点滅している。呼吸するが如く。なんだなんだ? どうなってるんだ? おばけがいるとの話だった地下には精霊がいるのか!?
ともかくこれにて調査は終了。どのように話のオチをつけようか悩んだが、担当編集さんと「とりあえず反応はしたから、なんとかなるっしょ」と話し合い、その日は家に帰宅した。だがしかし……その後、謎の「赤ランプ反応」をガチと裏付けざるを得ない衝撃的な事実が次々と明らかになるのであった。続きは次ページ(その2)へ。
参照元:ソリッドアライアンス「ばけたん」
Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.
翌日、私はバイトに出かけた。仕事内容は「アダルトビデオのモザイク入れ」であり、なんと勤務地は先述の出版社が入っている「摩天楼ビル」から徒歩1分以内に位置する雑居ビルの狭い一室だった。バイト先と摩天楼ビルが近いのは単なる偶然だ。
世間話が大好きなバイト先の上司は、昨日の私の「早退してからの行動」を聞いてきたので、「すぐそこにある摩天楼ビルでおばけを探しました。赤ランプが異常反応して……」と、事細かく身振り手振り付きで説明した。すると上司は急に真顔になり、
上司「GOくん、それヤバイよ……。ガチかもよ……」
と言い出した。私は「またまたァ〜(笑)」と返したが、なおも彼は真顔で話を続けた。
上司「オレさ、昔からここに住んでるじゃん。だから摩天楼ビルが作られている最中のことも知ってるんだ。なにせ毎日、通勤中に横を通るからね。こりゃデカいビルが建つぞ〜って、さら地の時代からよく見てたよ。
あそこは工事も速かった。どんどんデカいビルになっていった。ところがある日、大変なことが起きた。工事現場に救急車やら消防車やら集まって、大変な騒ぎになっていたんだ。あ、これは何か事故が起きたな……ってすぐにわかった。
で、その事故ってのはエレベーターの工事中に起きた事故だった。かわいそうに、1人の作業員が亡くなったらしい。ウソじゃないよ。ニュースにもなってた。その赤ランプ反応は、この作業員さんが何かを訴えているのでは……」
──とのこと。疑い深い私は「マジすか……」と言いつつも正直ウソだと思っていたが、調べてみると本当にニュースにもなっていた。さらにそこには、“エレベーター設置中、落下したわけではなく、上階で挟まれて死亡” 的なことが書いてあったのだ。
・さらに衝撃的事実が発覚
ひどく動揺した私は、すぐさまコラムの担当編集さんに連絡した。彼もまた「エーーーーッ! そんなの知らなかった!!」と驚いており、「社内に何か知ってる人がいるかもしれないから、それとなく聞き込みしておきますね……」ということに。
数日後、社内リサーチが完了したのか、担当さんからメールが届いた。そしてそこには、以下のようなことが書いてあったのだ。
・事故が起きたのは事実
・数台あるうちの、どのエレベーターで事故が起きたのかは不明。
・何が理由なのかは不明だが、事故後、当初入れる予定だったエレベーターのメーカーから、違うメーカーに変更された。
・ちょうどばけたんが赤反応したあたりの階は、社内でも「おばけが出る階」として有名だった。
・あまりにも謎の現象が発生しまくるので、そのフロアから別の階に移る部署が続出し、ついには誰も使わない無人の階になってしまった。
──情報を簡潔にまとめると、こうだ。「かつてエレベーターの設置工事中、とある階の位置で挟まれて事故死した作業員がいる。その事故が起きたあたりの階は、怪奇現象が起きていた。そして、ばけたんもドンピシャで異常な反応した」……である。
私と担当さんは「さすがにこれをそのまま書くのはマズい……」と青ざめ、連載コラムは “いろいろ反応したよ〜” 的な、無難な内容に留めておくことにした。そして、「もしや事故が起きたのは、まさに我々が乗ったエレベーターだったのでは……」と、心の中で手を合わせながら、天に召された作業員に思いを馳せるのであった。──合掌。
参照元:ソリッドアライアンス「ばけたん」
Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.
▼ちなみに私が使っていたのは「ばけたん2ストラップ」というモデルだ。