ロケットニュース24

【検証】保育園が見つからないから「子連れ出社」したらこうなった / 待機児童問題の現実はこうなってるって話

2017年2月14日

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「待機児童」という言葉が世に知られて久しい。おそらく年頃のお子さんがいない方は「あー、保育園が足りないヤツね。大変だね」くらいの感想しかお持ちでないだろう。かくいう私(P.K.サンジュン)も、半年前まではそうだった。だが今では……スーパー切実な問題である

というのも、5カ月になる娘を保育園に預けようとしたところ……ない、マジでない。認可・認証・認可外、いずれの保育園も定員オーバーで、預けようにも保育園が見つからないのだ。こ、これが待機児童問題か……! 預けられないならば残る選択肢はただ一つ、子連れ出社しかあるまい……。

・0歳児が預けにくい理由

まずはここ数カ月の経験を元に、待機児童問題をわかりやすく説明しよう。先述の通り娘は生後5カ月。一般的には「保育園は早いんじゃ?」と言われる年齢かもしれない。実際、0歳児を預かってくれる保育園は多くなく、それだけでハードルはグッと上がる。

「1歳になったら預ければ?」という意見もあることだろう。しかし、社会復帰を望むママさんたちは「1歳から預けたい」と希望するケースが圧倒的に多い。子供が生まれて1年の節目、さらには以前と同様に職場で活躍するなら「ブランクは1年くらいが限界」と考える人が多いのも頷けるハズだ。

そのため、1歳の時点で確実に保育園を確保しておくため「0歳から保育園に入れよう」と考える人が多いのである。乳児の域を出ない子供を預けるのは親として苦悩があるだろうが、それでも社会復帰の確率を上げるならば、致し方ない選択肢といえるだろう。

もともと我が家は妻が早期復帰を目指していたので予定通りの「0歳児保育園探し」であったが、上述した理由もあり なかなか保育園が見つからなかった。

・「認可・認証・認可外」保育園の違い

ちなみに、「認可・認証・認可外」それぞれの保育園の違いについても説明しておきたい。ざっくり言うと「認可」は国が認めた保育園、「認証」は都道府県が認めた保育園、「認可外」はその両方に認められていない保育園のことを指す。

私の住む区では「認可」「認証」どちらかの保育園に通う場合、月3万円の手当が出る。どの保育園も1カ月にかかる費用はおおよそ5~6万円だから、半分は補助してもらえる計算だ。しかし当然ながら「認可」「認証」も倍率が非常に高く、なかなか保育園は見つからない。

金銭的にはきつくなるが、認可外に入れるしかないか……と思いきや、それも甘かった。一切の補助金が出ない認可外保育園ですら定員オーバーなのが現実だ。事実「出来れば近所、最悪でも通勤途中に預けられるエリアで……」と思い何十件の保育園を探したが、該当する保育園は1つも見つからなかった。

・認可外ですら見つからない

現在、我が家では通勤とは逆方向の駅、つまり下り電車で15分ほどかかる駅にある認可外保育園に子供を預けている。6万円+月1万5000円ほどの定期代、さらには送り迎え合わせ毎日1時間以上のタイムロスを受け入れて、何とか保育園を見つけたのだ。以上がここ数カ月で経験した待機児童問題である。

前置きがかなり長くなってしまったが、ここまで金銭も時間も大きくロスして、子供を預ける意味はあるのだろうか? それなら、可愛い娘と出来る限り一緒にいた方がいいのでは……? そこで思い付いたのが「子連れ出社」だ。

お金もかからず、しかも毎日娘と一緒に過ごせるなんてメリットしかないではないか……! というわけで次ページにて、1日子連れ出社してみた感想をご報告したい。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

【検証】保育園が見つからないから「子連れ出社」したらこうなった / 待機児童問題の現実はこうなってるって話(2ページ目)

今回、1日だけ子連れ出社を体験してみて、いくつかのハードルがあると感じた。ポイントごとに分けて解説したい。

・ハードルその1:「通勤」

言うまでもなく電車通勤の人は、ラッシュの時間帯に子連れ出社するのは厳しい……というか無理である。抱っこヒモはもちろん、ベビーカーなんて言語道断。「この時間にベビーカーで乗って来るなよ」という顔をされるし、こちらも「申し訳ないですぅぅぅううう」といたたまれない気持ちになる。

わが社はフレックス制のため、10時以降の出社でもOKだから良かったが、8時9時出社の人は通勤だけで子連れ出社を諦めなければならないだろう。また、基本的にエスカレーターはベビーカー禁止なのでエレベーターを利用せねばならず、通常30分の通勤時間が45分ほどかかった。

・ハードルその2:「通常業務」

うちの礼衣ちゃん(娘)は非常に大人しく、この日も1度ぐずっただけ。そのため通常通りの業務はこなせたが、ちょっと礼衣ちゃんが声を出したり動いたりするだけで、こちらが気になってしまうことが多々あった。つまり、集中しづらい環境ということだ。

この日は1度だけ30分ほど寝てくれたが、勝負はそこのみ。致し方ないことだが、子連れ出社すると生産性にマイナスの影響があることは否めないだろう。ただし今回が初体験だったので、回数をこなせばある程度 “いつも通り” にもって行けるかもしれない。

・ハードルその3:「ミーティング」

この日は2週に1度の社内MTGがあった日。普段なら1時間ほどで終わるMTGが、この日は最短記録の30分強で終了した。理由は “そこはかとなく” 皆が礼衣ちゃんを気にしていたからで、正直、ナイスアイディアも出にくい環境であった。

社内MTGだから良かったものの、もしこれが取引先とのMTGだったらどうだったのだろう? 奇跡的に有意義な時間を持てるかもしれないが、子供の話題でフワッとMTGが終了する可能性が高かったように思う。

・ハードルその4:「会社の理解」

おそらくわが社は日本屈指の「柔軟な会社」だ。いつも誰かが脱いでいるし、子連れ出社の件を上司に伝えても「いいよ~」の2つ返事であった。理解という意味ではかなり環境に恵まれているが、残念ながらそういった会社の方が少ないのが現実だろう。

ちなみに「今日は1人で面倒を見る!」と意気込むよりも、わずかでも同僚に預けられる瞬間があるならば、預けた方がイイ。この日は正直メチャメチャ疲れた。ドッと疲れた。わずかでも子供を見てもらえる瞬間は、それがたった3分でも貴重だ。

・ハードルその5:「己との葛藤」

1日出社体験後、社内で「気を使いましたか?」と尋ねたところ、多くのメンバーは「別に使ってない」と答えてくれた。この日の礼衣ちゃんは「マジで大人しいね」と言われるほど大人しくしていたが、私自身が「みんなに気を使わせてるんじゃないか?」と気を使った。

実際に、デスクではなく会議室にこもって仕事もしたし、泣く気配が見えたら猛スピードで対応していたのでドッと疲れたのだろう。子供が動き回る年頃だったりした場合、子連れ出社のハードルがさらに高くなるのは言うまでもない。

・結論

最期に1日出社してみた結論を述べよう。色々とハードルはある、ハードルはあるが「やってやれないことはない」というのが率直な感想だ。ただし、毎日は無理である。体力的にも精神的にも、娘を負荷と感じては意味がない。せいぜい月1くらいが限界だろう。

だが、月1回ならば、むしろ今後も子連れ出社したいと思った。夜8時には寝てしまう礼衣ちゃんと私が触れ合えるのは、毎日朝の1時間くらいだ。この日はたっぷり過ごせたから、父としての欲はかなり満たされた。

さらに言うならば、私と礼衣ちゃんの絆も深まったように思う。誕生以来、おそらく初めての母親がいない私と礼衣ちゃんだけの時間。妻の大変さもよくわかった。そういう意味でも子連れ出社は一度試す価値があるに違いない。

これまで散々述べてきたが、ハードルは高いし多い。だが、子供の声がする会社なんて最高ではないか。環境が許すならば、ぜひ1度子連れ出社をオススメしたい。私自身、今後も月に1度程度は子連れ出社するつもりだ。……と同時に、いい保育園……そろそろ見つかってくれ。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼今後も月に1度くらいのペースで子連れ出社したい。

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